2016年1月28日木曜日

捉妖记(モンスター・ハント) 2015|大陸国産映画の興行記録を大きく塗り替えた3Dファンタジー




昨年(2015年)大陸で最もヒットして、なおかつ国産映画の興行収入記録を大きく塗り替えたのが、この映画です。

洋画も含めると、トップが 《速度与激情7(ワイルド・スピード7》) の443億円、この映画が第2位で435億円稼いだそうです。第3位が、数字的にはかなり離されるのですが 《港囧》 の294億円です。

ただし、中国映画の興行成績については、あれこれ不正も指摘されているようで、数字がどこまで本当なのか、そんなことは知りません。

ぼくは、この映画のタイトルが 《抓妖记》 だとばかり思っていました。QQの知り合いに “抓妖记を見たか?” と聞いたら、“もちろん見たけど、タイトルは 《捉妖记》 だ” と
言われてしまいました。

捉妖记 2015

かつて人と妖はいっしょの世界に住んでいました。しかし、人は妖を追い出してしまい、妖たちは人の知らない世界でこっそりと暮らしています。しかし、妖の世界ではクーデターが起こり、新妖王が誕生してしまいます。

旧妖王は殺されてしまったのでしょうが、妊娠している旧妖后は、二人のお供と逃亡の旅を続けています。この三人はついには人の世界まで逃げてきて、田舎の若者と若い女の捉妖天师(妖怪ハンター)に出会います……。

そんな物語なのですが、なんで大ヒットしたのかというと、大陸で初めてまともな3D映画作りに成功したのがこの映画だからです。

今さら、大陸映画がどれだけ悲惨な3D映画を作ってきたのかを振り返ってみても、意味はないでしょう。

ただし、アメリカでの上映は大失敗で、新聞や雑誌に袋叩きにあったそうです。“3Dのレベルが低すぎ” というのが、大方の批判内容のようです。それはそうなのですが、それよりも “欧米人にはこの物語が理解できない” というのが、本当の事情のように思います。

物語は単純なファンタジーなのですが、妖怪ものや武侠もののドラマや映画を見慣れた中国人には、あまりにも親しみやすい物語です。ヨーロッパやアメリカは、永遠に中国映画--というかアジア文化を誤解していくのでしょう。

もうすぐ(現在2016年1月28日)、《卧虎藏龙(グリーン・ディスティニー)》 の続編というか2016年版の 《卧虎藏龙》 である 《卧虎藏龙:青冥宝剑》 が公開されます。欧米人はあの退屈な映画の、いったいどこが気に入ったのでしょうか? もちろん、ぼくは中国文化を理解している--などと言っているわけではありません。


この映画では、どんな連中が登場するのか、ざっと見ていきましょう。

霍小岚白百何
駆け出しの二钱天师が霍小岚(白百何)です。なんで二钱天师なのかというと、天师は身に付けている古銭の数でランクが決まるからです。人間界にときには妖が出てきてしまうので、天师たちは妖をつかまえて金を稼いでいます。

若者が旧妖后のお供の二人(二匹)と出会って、自分の家に招くのですが、そこにいきなり小岚がやってきて妖怪二匹との戦いを繰り広げます。

ヒロイン小岚を演じているのは、白百何という女の子です。84年生まれなので、もう30を超えていて子供もいますが……。

ぼくはこの映画ではじめて白百何を見たのですが、彼女は今や大陸のナンバーワン女優と呼ぶべきなのかもしれません。昨年(2015年)は、主演した4本の興行収入が全部で30億6400万元(約569億円)と、とんでもない額を稼ぎだしたそうです。

どう見ても美人には見えないのですが、男顔負けのきっぷの良さと少女っぽい可愛らしさが同居しているところがいいのかもしれません。

同じような観点で人気のある刘诗诗がいますが、刘诗诗はあくまでブスだし、演技なんてまるでできません。

白百何は张艺谋の 《幸福时光(至福のとき)》 2000 (極めつけのロリ映画でした) のオーディションは通らなかったものの、张艺谋の青岛ビール100周年記念広告(2003)でデビューしたそうです。そのうち、白百何が出ているほかの映画でも見てみようと思います。

宋天荫井柏然
妖の世界と人の世界の境目あたりの田舎で、村の保长をしているのが宋天荫(井柏然)です。保长と言っても脚が悪いため、縫い物ばかりさせられています。いきなり、妖と天师の戦いを目撃してしまい、あげく旧妖后の胎児を自分のお腹で養うことになってしまいます。

井柏然は事情があって宋天荫を演じることになったのですが、この人は、“十大当红小鲜肉” にも選出されています。

男には特に興味はないのですが、この映画ではけっこうがんばっていたと思います。天荫がどんなふうに妖の子を生むのかについては、見て楽しんでください。

《小时代4》 2015
《捉妖记》 が大ヒットして、最もくやしかったのが台湾のアイドル柯震东でしょう。柯震东が宋天荫を演じた 《捉妖记》 は撮り終わっていたのですが、房祖名(ジャッキー・チェンの息子)と柯震东の麻薬事件が起きたため、大金を投じて井柏然が宋天荫を演じる部分を撮り直したそうです。

《捉妖记》 は去年(2015年)7月に公開されたわけですが、去年の7月には、柯震东が主役のひとりである 《小时代4》 が予定をかなり遅らせて公開されると共に、房祖名が悪役のひとりに扮する陈凯歌のろくでもないごみ映画 《道士下山》 2015 が公開されています。

しかし、《捉妖记》 は子供向けファンタジーでもあるわけで、汚点の存在は許されないということで、井柏然の宋天荫を撮り直したのでしょう。

胡巴
天荫の腹を借りて生まれてきた小妖王が胡巴です。この映画は3Dと言っても、もっぱらアニメキャラの3D造形に力を入れていて、妖が人間に化けていないときはみんなアニメキャラです。そんなわけで胡巴は最初から最後までアニメキャラです。

胡巴という名前は、映画の最後のほうで天荫がそういう名前をつけるのですが、胡巴のしぐさや行動は、ものすごく良く中国の子供(というか习近平も含めた中国人を)代表しているように思います。これも、実際に見て楽しみましょう。


霍小岚と宋天荫と胡巴がこの映画の主人公です。他のメンバーもなかなか豪華キャストなのですが、いずれも客串(ゲスト出演)として、気軽に楽しく演技を楽しんでいます。

宋天荫奶奶金燕玲
宋天荫のおばあちゃんを演じているのが金燕玲です。日本人であっても、何度かはこの人の顔を見たことがあるのでしょう。1954年生まれとのことで、もう60をちょっと超えていますが、この映画で演じているおばあちゃんほど、おばあちゃんではないはずです。

クライマックスの格闘シーンでは金燕玲のおばあちゃんも活躍します。そして “6+5は11である” とかたくなに主張するのですが、なんでそういう計算が成り立つのかも見てのお楽しみです。

《推拿》 2014 郭晓冬
宋戴天郭晓冬
なんで宋天荫にはパパがいないのかというと、パパは偉大な十钱天师だったのですが、どうやら家から逃げてしまったようです。ということで 《捉妖记2》 では、宋戴天の存在がひとつの焦点になるのでしょう。

一瞬のワンカットだけの登場ですが、宋天荫のパパ宋戴天を演じているのは郭晓冬です。この人は、どちらかというとテレビドラマで活躍している演技派です。最近の映画では、アジアの映画賞を獲りまくった娄烨(ロウ・イエ)の 《推拿》 2014 で、王大夫を演じていました。

昔の話をすれば,やはり娄烨の 《颐和园(天安門、恋人たち)》 2006 で周伟を演じていたのが郭晓冬です。


竹高曾志伟
胖莹吴君如
旧妖后を、追手から必死に守ろうとしている妖が竹高と胖莹です。妖后が死んでしまってからは、妖后の子供を無事出産させなければなりません。胡巴が生まれてからは、胡巴を守らなければなりません。

竹高を演じている曾志伟は、金燕玲と同様に香港や中国の映画を見ている人なら、何度も見たことのある人でしょう。たとえば 《越光宝盒》 2010 では孔明(诸葛亮)を演じて、《赤壁(レッドクリフ)》 2008 の金城武のパロディで、しきりに “略懂,略懂” と言っていました。

おばさん妖の胖莹は、宋天荫に “あなた、おいしそうね” とか言って登場するのですが、はじめ誰なのかわかりませんでした。なんだ、吴君如ではありませんか。昔の香港映画を見たことにある人ならば、誰でも知っているでしょう。

もちろん美人ではありませんが、軽快でパワフルな演技は映画を盛り上げてくれます。吴君如が出ている最近の映画が日本で公開されているのかどうかは知りませんが、今でもたくさんの映画で活躍しています。

罗刚姜武
五钱天师が罗刚で、小岚が竹高と胖莹を捕らえかけたところを、横取りしてしまいます。なかなか腕は立つようですが、けっこうドジで、小岚と竹高とは最後までお付き合いすることになります。

ぼくは罗刚を演じている姜武という人は、はじめて見たと思っていたのですが 《白蛇伝説》 2011 に出ていました。あと 《洗澡(こころの湯)》 1999 という映画も見たことがありました。顔はとても姜文に似ています。名前からわかるように、姜文の弟が姜武です。ドラマや映画でけっこう活躍しているようです。


妖買い取り店のママ汤唯
小岚は生まれた胡巴を、妖買い取り店にあっさり売ってしまいます。この店のママが汤唯で、汤唯と言えば日本では 《色·戒(ラスト、コーション)》 で有名なのでしょう。大陸では美女としても有名なわけですが、ぼくには、この人のいったいどこが美女なのかよくわかりません。

ぼくが見たことのある汤唯の映画は 《北京遇上西雅图北京ロマンinシアトル)》 2013 です。大陸では、けっこうヒットしました。

ぼくには、やっぱりどこが美女なのか、どこが面白いのかわかりませんでした。もちろん、刘诗诗ほどブスで演技がへたくそだとは言いません。

妖料理の神シェフ姚晨
妖料理レストランの神シェフが姚晨です。胡巴を料理しようとするのですが、煮ても焼いても胡巴はピンピンしています。

胡巴を調理することをあきらめたを彼女は、ついに胡巴の料理方法を決めます……。神シェフを演じているのは、姚晨です。

この人は、最近はドラマには出ないで映画ばかりのようです。この人の映画はたいていは面白くないのですが、微博(ミニブログ)の女王として有名です。今、調べたらフォローしている人が7896万人いました。

《风暴》 2013
姚晨が出ている 《九层妖塔》 2015 という映画が去年公開されました。これには唐嫣も出ているので、そのうち見てみましょう。唐嫣は演技が特にうまいわけではありませんが、がんばっていると思います。

でも、ぼくは姚晨という人は、顔とか演技とか、いつもどうだかなーと思ってしまいます。刘德华(アンディ・ラウ)の映画はたいていは日本でも公開されるようなので、姚晨も出ていた 《风暴》  2013 も日本で公開されたのかもしれません。

とはいえもちろん、姚晨は刘诗诗ほどバカでもブスでもありません。

郑涛保剑锋
骆冰闫妮
妖料理レストランに特別料理(胡巴)をあじわいにやってきた御一行のなかにお金持ち夫婦がいます。奥さんを演じているのが闫yán妮で、姚晨が出ているのなら闫妮が登場しても当然です。姚晨と闫妮は 《武林外传》 2006 で有名になったからです。

《武林外传》 は、目立ったドラマがないときには、今でも百度のドラマ人気ランキングに顔を出します。

このドラマは、旅館のおかみ(闫妮)とその仲間たちの物語で、いわば人情喜劇なのですが、それほど臭みもないので、気軽に楽しめる経典です。

闫妮はブスなので大陸の吴君如みたいな位置づけあたりがふさわしいかとも思うのですが、わりと怖いおばさん役が多いようにも思います。《画壁》 2011 では、怖いおばさんでした。

葛千户钟汉良
葛千户は、天师たちを仕切る天师堂のボスで、胡巴に賞金をかけます。妖にとっては、最大の敵が葛千户であるわけですが……。

演じている钟汉良は百度のスター人気ランキングでは、本日(2016年1月28日)第3位です。ついでに書いておくと、第1位は 《新笑傲江湖》 2013 などの霍建华(ウォレス・フォ)、第2位は香港の陈伟霆(《古剑奇谭》  2014の大师兄)となっています。

钟汉良は、黄晓明版 《鹿鼎記》 2008 の康熙役とかで、日本でもそれなりにおなじみかもしれません。最近では、韩寒が監督を手がけた 《后会无期(いつか、また)》 2014 にちょこっと出ていました。あ。日本でも放映されたと思いますが、钟汉良が乔峰を演じた 《新天龙八部》 2013 がありました。この 《天龙八部》 は、後半へたってしまいました。

《捉妖记》2015 国际版预告片


钟汉良-电影《捉妖记》主题曲《奇书》MV



捉妖记 制作特辑 柯震东


5分钟无节操看完《捉妖记》

2016年1月13日水曜日

道士下山 2015|王宝强、2度と陈凯歌なんかとつきあうな!



王宝强徐峥の 《港囧》 につきあわないで、こんな映画に出ていたのか--と思ってなんとなく見始めてしまったのがこの映画です。

道士下山 2015

人は時tに、見る必要のないものを見てしまうこともあります。クレジットで監督が陈凯歌(チェン・カイコー)だと知ったとき、見るのを止めようとも思ったのですが、怖いものみたさで、つい見てしまいました。

霸王别姬》 1993 について、今さら何も言う必要はないでしょう。ただ、退屈なだけの映画でした。

ただし、ヨーロッパ人のアジアに対する誤解を、日本人も真に受けてしまったのでしょう。日本では、現在においても 《霸王别姬》 が名作であるかのように語られてしまうこともあるようです。

21世紀になる手前、日本では、陈凯歌とか张艺谋(チャン・イーモウ)とか、あるいは台湾の侯孝贤(ホウ・シャオシェン)とかが、中国を代表する監督であり、彼らの作った退屈な映画が中国映画のすべてであり、退屈であるからこそ芸術であるかのように語られてしまったのは、大きな不幸だったように思います。

2016年の現在においても、日本で公開される中国映画とは、たぶん、昔から日本でも有名なじいさんばあさんたちが主演している、退屈な映画ばかりなのでしょう。


《道士下山》 は、日本でもおなじみのキャストも揃えています。たとえば、郭富城(アーロン・クオック)とか林志玲(リン・チーリン)あるいは 《一代宗师》 の张震、はたまた昔の香港映画や現代の中国映画でおなじみの林雪(ラム・シュー)を知っている人もいるかもしれません。

でも主演は王宝强です。《一代宗師》 が大陸で公開されたとき、お笑いシーンではないのに小沈阳が登場するだけで観客が大笑いするという話が話題になりました。そういう意味で、スクリーンに登場するだけで、アクション映画とか殺人犯や泥棒の役であっても、観客が笑ってしまうのが王宝强です。

房祖名(ジェイシー・チャン)
……と、映画の中身はともかく王宝强の動向くらいは書いておこうかなと思ったのですが、あまりにくだらない映画について時間を無駄にするのも面倒です。

このブログでは、王宝强関連の映画は、こんなのを見ていますが、日本でもそこそこ王宝强の出ている映画はなんらかの形でお披露目されているようです。

盲井 Blind Shaft 2003

人在囧途 2010
人再囧途之泰囧 2012
港囧 2015(王宝强は出演していない)

冰封:重生之门(アイスマン) 2014
一个人的武林(カンフー・ジャングル) 2014


2009年から始まった中国ごみ映画大賞(金扫帚奖)というのがあって、张艺谋は毎年なんらかの賞を獲得する常連中の常連です。

中国でもなんとか映画賞みたいなのはあるのですが、どれもたいしたことはないというか、きちんと映画を評価しようというものではありません。

ある映画雑誌社が主宰する中国ごみ映画大賞と、その際、同時に発表される “10のいい映画で賞” みたいなのが、国際的な権威は何もあるわけではありませんが、大陸では最もまともな映画賞と言っていいでしょう。

残念なことに陈凯歌はまだこの賞を獲得していなかったように思います(きちんと確認したわけではありませんが……)。今年(2016年[2015年公開の映画が対象])は、この映画がめでたくなんらかの賞を獲得するように思います。

郭富城、張震主演【道士下山】最新預告(7/3週五 不虛此行)


张杰-娑婆世界 MV 《道士下山》宣传曲


Monk Comes Down The Mountain (道士下山) 2015 Martial Arts Film Trailer

2015年12月28日月曜日

港囧(ロスト・イン香港) 2015|大陸の香港文化と日本の香港文化--あるいは、なんでゴッホから始まるのか



徐峥が主演・監督した 《港囧》 は今年(2015年)の秋に公開され、大ヒットしました。香港以外の人から見れば、香港が舞台の映画で王菲(フェイ・ウォン)が主題曲を歌うのは、とても当然のことでしょう。

王菲 -《清風徐來》電影《港囧》主題曲


この映画は、徐峥が20年前の初恋の相手と、香港で20年ぶりに出会おうとする物語です。そんなわけで、80年代から90年代の香港の楽曲がたくさん使われています。

この記事では、80~90年代の香港文化と、この映画あるいは大陸(内地)との関係についてちょっと考えながら、映画で流れる楽曲を聞いてみましょう。

 《港囧》 って何?  “囧シリーズ” って何?  徐峥って誰?  などについては、こっちの記事を見てください。

港囧 2015|“はじめてのキス” あるいは “落下” とか “墜落” とか


香港の80~90年代を代表するスターといえば、なんといっても张国荣(レスリー・チャン)でしょう。そういうことで、《港囧》 の冒頭でも张国荣の古い映画が流れます。あるいは、20年前に美大生だった徐来(徐峥)と杨伊(杜鹃)は 《阿飞正传(欲望の翼)》 の大きな看板を描いていたりします。

日本での香港(映画)ブームというのは80年代後半から90年前半だったような気がします。こういった話に、成龙(ジャッキー・チェン)の映画みたいなのを入れる必要はないでしょう。

周润发(チョウ・ユンファ)のギャングもの、チャイニーズ・ゴースト・ストーリーとかキョンシーもの、王家卫(ウォン・カーウァイ)の青春映画、周星驰(チャウ・シンチー)のお笑い映画、あるいは王菲の歌……などが代表でしょうか。


では、大陸では香港の映画や音楽がどのように入ってきたのでしょうか。ネットで、あれこれ調べていたら、こんな本がありました。

与我们青春有关的记忆

中国成立から2010年あたりまでのアイドルの歴史についての本なのですが、半分は中国人から見た香港映画史みたいな本になっています。

大陸の人々がはじめて香港の歌手たちを見て、彼らの歌を聞いたのは、1984年のCNN(央视)の春晚(春节联欢晚会)でのことだったそうです。

著者の吴晓赟は、香港の歌手、香港の歌が、とても都会的でおしゃれ(軽妙洒脱)に見えた……というようなことを言っています。

日本で言えば、戦後の若者たちがアメリカ文化に大きな衝撃を受けた……そんな感じでしょうか。

鄧小平の改革開放が始まるのが1978年ですが、1984年くらいになって大陸にも香港文化が入ってきたのでしょう。したがって、現在(2015年)から20年前の1995年には、かなり多くの香港文化が流入していたことでしょう。また、六四天安門事件は、1989年6月4日です。

1972年生まれの徐峥は今43歳なので、1995年には23歳でした。この映画で,徐峥演じる徐来の奥様、菠菜を演じている1976年生まれの赵薇(ヴィッキー・チャオ)は、20年前には19歳です。当時の10代、20代すなわち70后にとっての香港文化は、日本で言えば60年代、70年代の若者たちにとっての欧米ロック文化みたいなものでしょうか。

日本での香港ブームにおいてイデオローグを務めたのが、山田宏一とか宇田川幸洋とかだったように思います。日本では、いまだに香港映画について何か語るとき、この人たちの言い草をだらだらとひきずっているように思います。今となっては、この人たちの悪影響ばかり残っている……そんなようにも思います。

日本での香港ブームと大陸での香港文化受容には大きな違いがあるように思いますが、その大きなひとつが大陸では香港TVBのテレビドラマが放映されていたということです。《港囧》 では、香港TVBのテレビドラマの楽曲がいくつか流れます。

日本でも香港TVBのテレビドラマはいくつかDVDになってはいるようですが、日本の香港理解に決定的に欠けていたのが香港TVBのテレビドラマだと言っていいように思います。

また1993年には、中国・香港合作で张国荣主演の 《霸王别姬(さらば、わが愛)》 が香港と大陸で公開されています。香港映画とは関係ありませんが、日本で中国映画が語られる場合、今でも陈凯歌とか张艺谋とかが語られてしまうのも、大きな不幸のひとつでしょう。


では、 《港囧》  でどんな楽曲が流れるのかを見ていきましょう。

许冠杰 沧海一声笑


70后にとっての “あこがれの香港文化” を、徐峥はこの映画でノスタルジックに語るわけではありません。それはそれで、とっても立派な態度です。そんなことは、現代の中国人--特に80后、90后たちにとっては何の関係もないからです。

日本人にもなじみ深い曲もいくつか流れます。徐峥がSMクラブで、絵を入れる筒が寝ている黒人の足に引っかかってしまい、黒人を起こさずに丸筒を取ろうとするのですが、結局黒人との格闘になってしまうとき流れるのが、《笑傲江湖》 1990 の “沧海一声笑” です。

日本では、《笑傲江湖(スウォーズマン 剣士列伝)》 1990 はDVDで見られるようです。監督は、山田宏一とか宇田川幸洋とかが大好きな胡金铨(キンフー)で、特に大褒めする必要はないと思いますが、いい映画でした。

日本でも公開された 《笑傲江湖Ⅱ東方不敗(スウォーズマン 女神伝説の章)》 の主題歌でもあるので、覚えている人も少くないことでしょう。林青霞(ブリジット・リン)の东方不败が話題になったと思いますが、アクション監督から映画監督になった程小东という人が、いい映画を作るのは永遠に不可能であるように感じます。、


卢冠廷 - 一生所爱


徐来(徐峥)がいよいよ初恋の相手と出会おうかというシーンで流れるのが 《大话西游(チャイニーズ・オデッセイ)》 1994 の “一生所爱” です。日本人から見ると “なんだ、ノスタルジックやってるじゃないか” と思えてしまうかもしれません。

中国の映画ファンにとって、最も有名な映画というのは 《大话西游》 ではないでしょうか。総合文化サイト “豆瓣” での 《大话西游之月光宝盒(1)》 の評価は、現在(2015年12月)301227人が投票して10点満点の8.9、《大话西游之大圣娶亲(2)》 は347252人が投票して9.1です(この記事の下書きは2、3日前に書いたものだったので、今、数字を訂正しました。2、3日の間で1000票前後も増えていました)。

Part1よりPart2のほうが投票者も多く評価も高いのは、もちろんPart2のラストシーンが “一生所爱” が流れるあのシーンだからです。

日本ではヒットしなかったのであろう周星驰の 《西游・降魔篇》 だって2013年の公開です。そういうわけで、《大话西游》 と “一生所爱” は現代の中国において極めて現代的な映画であり楽曲であり、誰でも(映画ファンでなくとも)“一生所爱” は知っているわけです。


倩女幽魂


あれこれあれこれあって、徐来は初恋の扬伊に会うことをいったんは断念します。しかし、意を決して “2046” 号室にいる扬伊に会いに行くことにします。その道中のバスの中とかで流れるのが张国荣の 《倩女幽魂(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)》 1987 の主題曲です。

これも日本の香港映画ファンにとって、ノスタルジックと言えばノスタルジックなわけですが、これも中国の映画ファンにとってはノスタルジックなわけではないでしょう。2011年には刘亦菲と古天乐のあまりに駄作なリメイクも作られています。

徐峥が “決め” のシーンで “一生所爱” と “倩女幽魂” を選んだのは間違いではないように思います。


1980版" 上海滩" 主题曲原声版


A Better Tomorrow Main Theme (best quality)


英雄本色(A Better Tomorrow) 當年情-張國榮


1995年ころ、10代や20代だった大陸や日本の香港映画ファンの男の子にとって、周润发を語らないわけにはいかないでしょう。

周润发の少年時代からTVBに入るまでの苦労話は(たぶん)日本でも知られていることと思います。周润发の出世作であるTVBテレビドラマが 《上海滩》 1980 です。もちろん、黄晓明の 《新上海滩(新・上海グランド)》 2007 は、このリメイクです。

当時の香港では、まずTVBの役者になり、テレビドラマが大ヒットして、映画スターになるというのがひとつのパターンです。たとえば、刘德华(アンディ・ラウ)もこのパターンであり、周星驰が梁朝伟(トニー・レオン)を誘っていっしょにTVBの試験を受けたのも有名な話しでしょう。

このパターンの、最後のスターが古天乐(ルイス・クー)でしょう。香港返還直前に放映された古天乐の 《神雕侠侣》 1995 は、今でも 《神雕侠侣》 ものの最強の経典とされています。TVBからスターになった人たちは、誰もが金庸ドラマの主演をしているわけですが、周润发だって、あまりになんだかなーではありますが 《笑傲江湖》 1984 があります。

そんなわけで、大陸においては “周润发と刘德华には金庸ドラマの傑作はないよな” とか、“《鹿鼎记》 ならば梁朝伟と刘德华の1984版より、陈小春版 1989 だよな” とか、そういう議論ができるわけですが、そういう文化が日本には欠落しているわけです。

銀幕のスター周润发が確立する 《英雄本色(男たちの挽歌)》 1986 については、ここで今更あれこれ言う必要はないでしょう。


《港囧》 において、徐峥は映画について、2度語ります。1つは冒頭のほうで、徐峥と包贝尔がドキュメンタリー映画について語るシーンです。包贝尔が “ぼくのパパのロバート・フラハティが……” と言うと、徐峥が “おまえのパパがなんでフラハティなんだ” と突っ込みます。

拉拉(包贝尔)はドキュメンタリー映画を目指しているわけで、ドキュメンタリーの父=ロバート・フラハティが、拉拉のパパであるのは、それはそれで筋が通っているお笑いなわけです。したがって、拉拉のママはレニ・リーフェンシュタールということになります。

もうひとつは徐来(徐峥)と拉拉が、王晶(バリー・ウォン)の撮影現場に出くわすシーンです。80~90年台の香港映画を代表する監督が王晶であるというのは、王晶の映画の出来がどうのこうのというのは別にして、それはそれで間違いではないでしょう。王晶は自分で映画にでるのも好きですが、この人は絵になります。

また、おなじみの香港の役者たちも登場します。

たとえば、周星驰映画にけっこう出ている苑琼丹は、SMクラブの女子高生(小学生?)です。くわしいことは書きませんが、見て笑ってください。

林雪には、現代の香港映画や中国映画で、ちょくちょくその個性的な体格にお目にかかります。

たとえば 《毒战》、《101次求婚》、《热浪球爱战》、《越光宝盒》、《大话天仙》、《白蛇传说》 などなどです。この人も周星驰映画にけっこう出ています。

《港囧》 で林雪がどんなふうに登場するかというと、林雪が線香をあげているところに、包贝尔が飛び込んできて、骨壷が粉々になってしまいます。実は、このシーンこそ、徐峥が香港映画を語っているのかもしれません。

《港囧》  はゴッホの絵から始まります。ゴッホの絵なおかつ線香をあげるシーンを見れば、必ず思い出してしまう香港映画があるはずです。そう、林雪は刘镇伟(ジェフ・ラウ)の 《回魂夜(ゴーストバスター)》 1995 に出ています。80~90年代の香港映画における最大の傑作のひとつが 《回魂夜》 でしょう。

大学時代、徐来はゴッホについて語り、杨伊はアンディ・ウォーホルについて語り、徐来が20年ぶりに目にする杨伊はアンディ・ウォーホル仕掛けのゴッホの絵の中から、階段を降りてきます。


最後に、これまで触れていな 《港囧》 で流れる主な楽曲を、映画ラストのクレジットタイトルの順番で紹介しておきます。

陈百强MTV-偏偏喜欢你




張國榮 為你鍾情




古惑仔之爭鬥影片  陈小春- 乱世巨星





张国荣早期经典演出 "拒绝再玩"



万里长城永不倒 叶振棠(电视剧《大俠霍元甲》主題曲)

2015年12月22日火曜日

港囧(ロスト・イン香港) 2015|“はじめてのキス” あるいは “落下” とか “墜落” とか



今年(2015年)大陸で最もヒットした2D映画が9月25日に公開され、徐峥包贝尔が主演した

港囧 2015

です。2D映画という但し書きがつくのは、もちろんもっとヒットした3D映画 《捉妖记》(7月16日公開)があるからです。

《太囧》
2013年、大陸の国産映画のヒット記録を作ったのが春节に公開された周星驰の 《西游・降魔篇》 2013 です。しかし、同時期に公開されていた 《泰囧》 2012 がこの記録を破ります。そして、《港囧》 は 《泰囧》 に続く “囧” シリーズです。

“囧” シリーズの1つ目が 《人在囧途》 なのですが、これまでの“囧” シリーズについては、それぞれの記事を見てください。

人在囧途 2010|人は古き時代に生きている
人再囧途之泰囧 2012|異国情緒はタイにある!

徐峥は 《泰囧》 で初監督に挑み、この 《港囧》 も監督しています。また、徐峥の映画について語る場合、宁浩監督を忘れるわけにはいきません。宁浩のお笑い映画のほとんどに、徐峥は出演しているからです。宁浩の映画を見れば、徐峥が宁浩から多くを学んでいることがわかるでしょう。

宁浩(ニン・ハオ)の軌跡|主役は乗り物だ

《无人区》
徐峥と黄渤が主演した宁浩の 《无人区》 は2010年のお正月に公開予定だったのですが審査が通らなかったため、一時期お蔵入りしてしまいますが、なんだかんだ2013年秋に公開されました。

徐峥は “《无人区》 お蔵入り事件がなかったら、《泰囧》 を自ら監督することはなかった” と語っていました。

これは 《无人区》 で演技がなんたるかを自覚したため、自分の演技をスクリーンに一刻も早く登場させたかったということのようです。


《人在囧途》 と 《泰囧》 は、いわばロードムービーでした。さらには、昨年(2014年)公開され国産映画としては最もヒットした宁浩監督、徐峥と黄渤主演の 《心花路放》 はたっぷりロードムービーでした。

《心花路放》
そんなわけで 《港囧》 は、ロードムービーではありません。“走る映画” とでも言えばいいでしょうか。それよりも “落下する映画” とか “墜落する映画” と言ったほうがいいかもしれません。

金庸原作などの武侠ものでは、よく人が崖の底に落ちていきますが、そのお笑い版……というよりは、ブルース・ウィリスの 《ダイ・ハード》 シリーズのお笑い版と
言ったほうが正しいように思います。

徐峥と包贝尔が香港の街を歩いていると、鉄兜を被っている徐峥が道のくぼみに足をとられ、その足をとられたカットが何度か繰り返されます。これが合図です。徐峥と包贝尔は香港の街を走りに走り、落下し、墜落します。

この二人は、いったい何度落下し、何度墜落したことでしょうか。いったい、なんでそん
なことになってしまったのでしょうか。


この映画では、80~90年代の香港の音楽がたくさん使われています。どんな曲が使われているのかについては、こっちの記事を見てください。

港囧 2015|大陸の香港文化と日本の香港文化--あるいは、なんでゴッホから始まるのか


徐来(徐峥)は、妻といっしょにブラジャーの会社をやっています。会社はけっこう繁盛しているようで、一家そろって香港旅行にやってきます。《泰囧》 では范冰冰が范冰冰として登場したわけですが、この映画では赵薇が徐来の奥さん(蔡菠)として登場します。

しかし、徐来には香港に来た本当の理由があります。それは大学時代の初恋の相手、杨伊に会うことです。杨伊は、今では香港を拠点にして世界を飛び回るアーティストです。杨伊を演じているのは杜鹃という人です。

杜鹃はバレー(舞蹈)を目指していたのですが、背が高すぎる(179)ためバレーを断念して、主にモデルとして活躍しているようです。

2012年には、黄晓明邓超佟大为が揃った 《中国合伙人》 で、初めて映画に出演しています。

大学時代、徐来と杨伊の間に入って、徐来をだんなにしてしまったのが蔡菠です。ぼくは、赵薇のたぬき顔は好きじゃないし、演技も下手だと思います。赵薇が監督した 《致青春》 はあまりに悲惨でした。ただし、この映画で注目されたのが包贝尔でした。

この映画では、赵薇が “(だんなの徐峥に)あんた、こんなきれいな人(杜鹃)と……” と言います。

赵薇が “こんなセリフを!” と思って笑うべきなのでしょうが、ぼくはブスな奥さん(赵薇)の嫉妬として、素直に納得しました。たぶん、徐峥は確信犯だと思います。

今年(2015年)は、赵薇が久しぶりに主演したテレビドラマが放映されて、いっとき話題になりました。ちょっとは見てみたのですが、相変わらずのワンパターン演技です。

虎妈猫爸 2015

菠菜--徐来は蔡菠の発音をひっくり返して蔡菠を菠菜(ほうれんそう)と呼びます--の弟(拉拉)は、ドキュメンタリー映画で成功するのが夢で、その題材に徐来を選んでしまいます。

拉拉を演じているのは包贝尔です。

香港では、おかっぱ頭に縁太の大きなメガネをかけた(たぶん、おたく系な)少女たちをけっこう見かけます。《港囧》 の包贝尔のおかっぱとメガネがまさにそれで、それだけで映画が香港らしくなります。

《人在囧途》 と 《泰囧》 では王宝强が徐峥の相方を務めましたが、王宝强は超有名人のひとりになって忙しい日々を送っているのでしょう。あるいは、ロードムービーからの脱却のためにも、徐峥は新しい相方を選択したのかもしれません(この記事の一番下のほうに、徐峥がことの真相を語っているビデオを貼っておきました)。

包贝尔を知らない中国人は、ほとんどいないと思います。顔が三枚目なので、たいていは笑いを誘うタイプの脇役です。このブログでも、なんだかんだ包贝尔の出ている映画やドラマを見ています。

画壁 2011|スン・リー+ダン・チャオ
四大名捕2(ドラゴン・フォー2 秘密の特殊捜査官 / 陰謀) 2013
致青春(So Young~過ぎ去りし青春に捧ぐ~) 2013

宫2(宫锁珠帘) 2012|豚モツ唇なおねえさん
东方不败と令狐冲の恋だって!?|新笑傲江湖 2013
宫锁连城(宫3) 2014|于正、またパクったな!

ところが、徐峥が 《港囧》 で包贝尔を相方に選んだというだけで、包贝尔は一気にブレイクしてしまったのかもしれません。

今年(2015年)3月に 《奔跑吧兄弟 第二季》 から王宝强が抜けて、その代わりに参加したのが包贝尔です(2015年10月からの第三季には不参加)。また、今年の11月には主演している2本の映画が公開されました。

年少轻狂 2015
我的青春期 2015


拉拉は、徐来が女に会いに行こうとしていることに気づいてしまい、徐来を追跡します。徐来は拉拉を振り払おうとするのですが、拉拉はしつこく追いかけてきます。もちろん、拉拉はずっとカメラを回しています。

そんなこんなで二人は、映画の撮影現場に出くわします。監督は王晶です(ほんものの王晶です)。徐来が道のくぼみに足をとられたとき、彼は鉄兜を被っていますが、なんでそうなってしまったのかというと、この撮影現場でのドタバタが絡んでいます。

この鉄兜は最後まで映画に絡んでくるのですが、まだ落下と墜落は始まっていません。徐来と拉拉は、二人組の刑事にも絡まれます。なんで警察が絡まれてしまうのかはともかく、二人組の刑事というのは、いかにも香港らしいからでししょう。

後輩のほうの刑事を演じているのが、李璨琛という人です。この人は、日本で今でもレンタルできるのかもしれない 《齐天大圣孙悟空》 2002 で沙悟净を演じていました。李璨琛は、日本では永遠に放送されることはないであろう胡歌刘亦菲の 《仙剑奇侠传》 2005 にも出ていました。


徐来と拉拉が香港の街で、どのように走り、どのように落下し、どのように墜落するのかは、書かないでおきましょう。実際に見て笑ってください。話の発端がわかっていれば、中国語がわからなくても笑えるように思います。

あ。ちょっと書いてしまうと、香港に行くとこの分厚い鉄扉の向こうはどんな世界なんだろう? と、誰もが思うことと思います。二人の走りは、そんな鉄扉の向こう側の世界の一端を教えてくれます。


最後に “初めてのキス” について、書いておきます。映画の冒頭、徐来と杨伊がキスをしようとして、どうしてもキスができないいくつかのエピソードが語られます。

ぼくたち男はAVとかを見て、胸とか局部とか裸体とか、セックスシーンとかで興奮するわけですが、一般的に女の子とのセックスにたどり着くためには、はじめてのキスが
欠かせません。

そういう意味では、好きな女の子と最初にしたい肉体的接触は、まず手をつないで、それからキスということになります。ただし、徐来と菠菜のように、手をつなぐのは省略されることもあるでしょう。

徐铮拿到了避孕套
とにもかくにも女の子とのおつきあいにおいて、最初で最後の難関が “初めてのキス” です。

で、初めてのキスとか、初恋とかにこだわりたがるのが男です。そういうわけで、この映画はきわめて男の映画ということになります。

ぼくは中国の90后の女の子と、この映画の話をしたことがあります。彼女はこの映画がちっとも面白くなかったと言っていました。女性は、男がなんで初めてのキスとか、初恋とかにこだわるのか理解できないからです。

《港囧》首支正式预告片


清风徐来 - 王菲 - 电影《港囧》theme song


《金星时间》20150923期: 徐铮独家爆料港囧拍摄诡异传闻 揭秘《港囧》为何弃用王宝强【东方卫视官方高清版】


《港囧》发“飞机”番外篇

2015年11月19日木曜日

芈月传 2015|ドラマの時代背景と 《甄嬛传(宮廷の諍い女)》 後の孙俪(スン・リー)



甄嬛传(宮廷の諍い女)》 2011 の孙俪(スン・リー)が、やっとこさ宮廷ドラマに帰ってきました。いよいよ(2015年)11月30日から

芈月传 2015

の放映が始まりました。タイトルは、まさに二匹目の 《甄嬛传》 狙いです。瞬間、 “华月传” かと思ってしまいましたが、“华” ではなく “芈” です。“芈” なんて漢字、見たことありませんでした。発音は mǐ です。

この記事では、ドラマの概要や時代背景、《甄嬛传》 以後の孙俪の活動などについて書いておきます。

《芈月传》 は(たぶん)81集あるのですが、クランクインが2014年9月6日(内モンゴル)で、その後、河北涿州や北京园博园などあちこちでの撮影を経て、2015年1月29日に横店でクランクアップしたそうです。

主な登場人物たちのあれこれについては、こっちの記事にまとめておきました。

芈月传 2015|“宫斗” ではなく “朝斗” の登場人物たち


戦国時代半ばの物語です。詳しい歴史が明らかになっていない時代を選べば、大陸のテレビドラマに課せられた多くの禁制からも逃れられるという面もあるでしょう。

戦国時代の主だった国は斉・楚・秦・燕・韓・魏・趙ですが、楚の威王の娘のひとりが芈月です。

しかし、威王の奥様のおかげで、芈月と彼女の母はつらい生活を送ることになり、数奇な運命をたどる--そんな物語のようです。

監督も含めて多くのスタッフが甄嬛传組だそうですが、監督の郑晓龙は “《甄嬛传》 の続編のようなつもりで見ると失望することになる” と語っています。芈月は実在した人物であり、《甄嬛传》 は “宫斗(後宮の闘い)” でしたが、こちらは “朝斗(朝廷の闘い)” とのことです。


なぜ “宫斗” ではなく “朝斗” なのかというと(書いてしまいますが)芈月は秦において “太后”  になるからです(“宣太后” あるいは “芈八子” と呼ばれます)。太后とはもちろん皇帝の母親のことですが、芈月がはじめて太后という “位” を創設したそうです。

詳しいことは実際のドラマを見て楽しみたいと思いますが、もちろん太后という地位を利用して政治を牛耳るのでしょう。ただし、たとえば武则天武媚娘)には強烈な悪女イメージがあるわけですが、宣太后は始皇帝のひいおばあちゃんであり、始皇帝が統一国家を打ち立てる礎を築いたとのことです。


この朝斗物語はどうやって誕生したのかというと、やはり 《甄嬛传》 から生まれたと言っていいでしょう。ドラマのシナリオを担当しているのは蒋胜男王小平の二人です。王小平は監督・郑晓龙の奥様で、 《甄嬛传》 のシナリオも担当しています。蒋胜男は、大衆歴史小説の女流作家です。

(胜男は日本語で書けば “勝男(かつお)” です。いくら現代の日本のパパママが変な名前を子供につけるからといって、女の子に “勝男” という名前はつけないでしょう。ぼくは胜男という中国人の女の子に会ったことがあります。)

蒋胜男が小説 《芈月传》 を書き始めたのが2012年だそうです。大ヒットした 《甄嬛传》 に触発されて、この物語を思いついたのでしょう。シナリオの第一稿が出来上がったのが2014年3月で、小説が出版されたのが今年(2015年)9月だそうです。詳しいことはわかりませんが、小説とシナリオが同時進行していたのかもしれません。

なお、このドラマの宣伝活動が始まると、たぶん著作権がらみの問題で、蒋胜男は王小平に文句をつけ、二人の仲はこじれてしまったようです。

また、乔小主という人が書いた 《芈月传》 と同名の小説もあるらしいのですが、本当かどうかはわかりません。


孙俪は、《甄嬛传》 の後、何をしていたのでしょうか? 《甄嬛传》 までの孙俪については、こっちの記事を見てください。

后宫・甄嬛传 2011|孙俪传(スン・リー伝)

《甄嬛传》 が最初に放映されたのは2011年ですが、その2011年、孙俪は邓超と結婚して、娘を産みます。その後、子育てに専念して、何も活動していなかったわけではありません。2013年にはテレビドラマに主演しています。

辣妈正传 2013

辣妈正传
ただし、このドラマはたいして話題にはならなかったように思います。

そして、2014年5月には香港で2番目の娘を出産しています。なんで香港なのかというと、第2子を産んだ罰金を逃れるため--とかあれこれ話題になりました。

香港には、大陸の有名人を香港人にさせてあげるみたいな制度があって、孙俪夫婦は香港人になったようです。

2014年には、彼女が出演した2つの映画が公開されています。

大话天仙 2014
分手大师(失恋の達人~上手に愛を手放す方法) 2014

ただし、《大话天仙》 には、あれこれ事情があります。刘镇伟は、 《越光宝盒》 2010 に引き続き、孙俪主演で 《天仙奇缘》 という映画を撮り始めるのですが、資金がショートしてしまい完成しませんでした。

大话天仙
刘镇伟いわく “どこの誰だか知らないが”、《天仙奇缘》 の既存フィルムといくつかのシーンを新たに撮影して、映画にでっちあげてしまったのが 《大话天仙》 です。

刘镇伟自身は、《大话天仙》 は自分とはなんの関係もない映画だと、新浪で言っていました。

ただし、ぼくはこの映画はけっこう好きです。《越光宝盒》 の孙俪が明るい狂気であったとすれば、《大话天仙》 の孙俪は冷たい狂気であって、とことん冷たい孙俪がものすごくきれいだからです。

また、邓超と杨幂が主演して、邓超も共同監督を担った 《分手大师》 では、孙俪はほんのちょこっと客串(ゲスト出演)しているだけです。


孙俪は 《芈月传》 の出演依頼を受けたとき、誰もが 《甄嬛传》 を意識してこのドラマを見ることは明らかで、すごくプレッシャーな仕事になるはずだし、撮影が始まるのが2番目の子供が生まれてからあまり時間がないこともあり、決断するにはあれこれ悩んだそうです。でも、シナリオを読むや、一発で出演を決めたそうです。

彼女は 《甄嬛传》 のときも、セリフを覚えるのに相当苦労したと言っていましたが、今回はクラインクインの一ヶ月前からセリフを覚えはじめ、誰にも会わない、電話にも出ない状態でセリフを覚えていったようです。

常に辞書や成语词典を抱えていても、それでも知らない言葉が出てくるので、そのときはシナリオの王小平に電話してあれこれ教えてもらったそうです。だんなの邓超も協力してくれたようです。彼は少年皇帝を何度か演じたことがあるので、邓超にセリフをしゃべらせて、それを録音して自分のセリフを練習したそうです。


孙俪は、このドラマを撮ったあと、だんなの邓超と共演している映画を撮っています。邓超は、この映画では本格的に監督をしているようです。

恶棍天使
恶棍天使 2015

2015年6月~8月に撮影され、今年(2015年)の12月24日に公開されます。

《分手大师》 と同様、もともとは俞白眉という人が書いたお芝居なのですが、お芝居の 《恶棍天使》 は、邓超はプロデューサーも担当しています。

かなりシュールでロマンチックな喜劇のようなので、それなりに期待していようと思います。


最後に 《芈月传》 の時代背景である中国の戦国時代について、おおざっぱにまとめておきましょう。

実在したとされている最も古い中国の国家が殷(紀元前17世紀頃~紀元前1046年頃)です。だから、ドラマや映画で描かれる中国の最古の王朝も殷ということになります。どう描かれるのかというと

封神演义(封神榜)

黄轩
における、周(紀元前1046年頃~紀元前256年)が殷を倒す戦いです。神話世界のエンターティンメントとして、女媧、哪吒、姜子牙、申公豹、妲己といったヒーローや妖怪たちも大活躍します。

このブログでは、“封神榜” ものドラマを2つ見ています。

テレビドラマ 《封神榜》 2006 2009
封神英雄榜 2014 -- 妲己=张馨予!

こうして、周(西周)が新たな王朝を立てることになります。ただし、統一王朝ではなく、多くの都市国家が存在し、都市国家の諸侯は周王を君主とするわけです。やがて周が衰えていくと、都市国家どうしが覇を競うことになります。

蒋欣
これが春秋時代(前770年~前403年)です。なんで前770年から始まるのかというと、この年から東周が始まるからです。チベット系部族が周を脅かし、周は首都を鎬京から東の洛邑へと遷都するからです。こうして、前770年以降の周は東周(二周)と呼ばれます。


刘涛
とはいえ、春秋時代の諸侯にとっては、建前は周王が主君であるわけです。都市国家どうしは尊皇攘夷を旗印にして、主君である周王のために、外敵を倒すために戦うということになります。

春秋時代には、春秋の五覇という有力諸侯がて、一般的には斉の桓公、晋の文公、楚の荘王、呉王夫差、越王勾践を指すそうです。

やがて、晋において家臣が独立して韓・魏・趙という三国に分裂したのが契機となって、下克上の時代になります。こうして、周王朝は都市国家にとっての権威ではなくなり戦国時代(前403年~前221年)が始まります。

戦国時代においては、斉・楚・秦・燕・韓・魏・趙という都市国家が戦国の七雄と呼ばれるそうです。

周は消えてしまったのかというと、そうではなく秦が統一国家を打ち立てる直前まで、細々と続いています。もちろん、周を消滅させるのは秦です。

《芈月傳》官方片花 (預告)─鄭曉龍作品


《芈月传》首曝26分钟超长片花