2012年6月25日月曜日

关云长(三国志英傑伝) - ガマガエルな甄子丹




第三届金扫帚奖(第3回中国ごみ映画大賞--中国ラジー賞)で作品賞に輝いたのが、この《关云长》と《战国》、《杨门女将之军令如山》です。

ぼくたちは甄子丹ドニー・イェン)のガマガエル顔を見るほどひまではありません。たぶん、死ぬほど退屈なことでしょう。でも、孙俪スン・リー)が出ているので見ちゃいました。

关云长(関雲長)というのは关羽(関羽)のことで、おなじみ三国志のヒーローのひとりです。ぼくはいつも、刘备劉備)-关羽関羽)と刘邦劉邦)-项羽項羽)が、どっちがどっちだったか、誰が誰だったかわからなくなってしまいます。だって、なんとなく名前が似ているからです。

もちろん、关云长を演じるのが甄子丹です。关云长は一時、曹操曹操)の捕虜になるのですが、この映画はそのときのエピソードを描いています。曹操を演じるのが姜文チアン・ウェン)です。

曹操は关云长を自陣に取り込もうとあれこれ画策するのですが、关云长は承知しません。あきらめた曹操は、关云长に刘备の元へ帰ることを許します。关云长が帰るためには5つの関所を通過しなければならないのですが、曹操はすべての関所の通過を保証します。

ところが、関所を通ろうとするたびに、关云长は襲撃されてしまいます。これが“过五关斩六将(5つの関所を通り、6人の将軍を斬る)”というエピソードなんだそうです。

じゃあ、孙俪はどうしたのよ? --と言うと、孙俪が演じるのは绮兰という、刘备のお妾さんになる予定の少女です。彼女も关云长といっしょに捕虜になっていて、关云长は绮兰を連れて、5つの関所を通過しようとするたびに、绮兰を守りつつ、敵と戦うことになるわけです。

しかし、あらま。なんだか、孙俪がいたっていなくたって、関係ないじゃありませんか。

2012年6月22日金曜日

武状元苏乞儿 1992 --杨幂、デビュー!



科挙が学問での選抜試験ならば、武挙とは武術の選抜試験みたいなことのようです。科挙でのナンバーワンの称号が状元であり、武挙でのナンバーワンが武状元ということになるみたいです。

武状元苏乞儿》 1992

の物語の構図は、清朝末、皇帝に取り入っている天理教(の教主赵无极)と、これに対立する丐帮たちです。丐帮は天理教の教主を殺し、天理教は丐帮の帮主を殺し、帮主を失った丐帮は統制が乱れています。

丐帮とは、武術をたしなむ乞食の相互扶助組織みたいなものですが、特に金庸が発明したものではなく、武侠小説ではおなじみの組織のようです。

とはいえ、ぼくたちにとってとりわけなじみ深い丐帮とは、金庸(原作のテレビドラマ)の《射雕英雄伝》と《神雕侠侶》の丐帮でしょう。そんなわけで、この映画には“洪七公”とか“打狗棒法”とか“降龙十八掌”などの言葉がぽんぽん出てきます。

丐帮と天理教の対立に、周星驰(苏灿càn)と吴孟达(苏灿のパパ)が絡みます。大役人の息子苏灿は、娼館で、如霜(张敏)に一目ぼれするのですが、如霜ははまったく気乗りしないようで、武挙に合格したなら、連絡してねみたいなことを言います。

こうして苏灿は武挙にチャレンジして、見事一等になるのですが、文字が書けないことがばれて一家の財産を没収されてしまい、パパと息子はしかたなしに乞食暮らしをすることになります。

如霜とその妹は、(丐帮には4大長老がいるのですがそのなかの一人の)長老の娘で、赵无极を狙うために娼館に潜り込んでいたのでした--こうなれば、あとの展開はだいたい見えてきます。

苏灿は、後に苏乞儿と呼ばれるわけですが、実在したのかどうかよくわかりませんが、“酔拳”の創始者であり、“广东十虎”の一人だそうです(映画の中では“睡梦罗汉拳”が“酔拳”の一種に相当するようです)。

2010年赵文卓版《苏乞儿》
“广东十虎”の中には、《ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ》の主人公黄飞鸿のパパ黄麒英も含まれています。

清朝はアヘン戦争以降、先進国に蹂躙されるとはいえ、广东一帯は経済的には発展するわけで、そのぶん、武術の達人やら秘密結社やらが集まってきたのでしょう。

この映画の監督は、陈嘉上という人です。どっかで見かけたことのある人のような気がします。ああ。《画皮》 2008 と《画壁》 2011 の監督でした。

この人は、何か余分なものを映画のなかに取り入れてしまう人のように思います。《画壁》 2011 がそのいい例でしょう。軽いだけのお笑い映画にしていれば、《画壁》は傑作になったような気もします。

《武状元苏乞儿》は、基本的にはただのお笑い映画なわけですが、そこにちょこっと悲劇な色合いだとか、武侠的なおまけが加えられているため、中国人も日本人も、なんだかこの映画を誤解して、まじめに取り扱ってしまいがちなようです。

もうすぐ(2012年7月12日)、この監督が監督した《四大名捕》という映画が公開されます。刘亦菲が出ているのでいずれ見ようとは思いますが、刘亦菲が出ているので面白くなくてもしかたないでしょ。

そういうあれこれとは関係なく、なんでこの《武状元苏乞儿》が経典のひとつに数えられているのかというと、この映画で杨幂がデビューしているからです(正しく言うと違うのかもしれませんが、まあいいでしょ)。1986年生まれの杨幂は、この映画に登場したとき、もちろん5、6歳の子供です。

映画の最後で、ちょこっと映るだけなので見落とさないようにしてください。うろうろするだけなのですが、やっぱり杨幂は杨幂であることがわかります。

もうすぐ、杨幂の出ている映画が2本立てつづけに公開されます。

画皮Ⅱ 2012年6月28日公開
大武当之天地密码 2012年7月6日公開

《画皮Ⅱ》は、杨幂と冯绍峰コンビが、赵薇と周迅のおばんコンビにどんな挑戦をしているのか、ちょっと楽しみではあります。

《大武当之天地密码》は、民国はじめの頃を舞台にした、武当山に伝わる秘宝を奪い合うインディ・ジョーンズふうの物語だそうで、お話としてはこっちのほうが面白そうではあります。

しかし、主演の男優が赵文卓なので、必ずやしょうもない作品になっていることでしょう。この人の出ているドラマや映画で、面白いものがあったためしはありません。

それに杨幂が武功をやったって、似合うはずもありません。

あと、《长江七号(ミラクル7号)》に出ていた男の子(女の子)徐娇が出ているのですが、ずいぶんと成長したというかデブになっています。


楊冪小時於武狀元蘇乞衣中的演出


この映画は、日本では《こじきの王》とか《キング・オブ・カンフー》という名前でDVDが発売されていたようです。詳細については、興味はありません。

《武状元苏乞儿》主题曲:长路漫漫伴你闯


King of Beggars 1992 武状元苏乞儿


《大武当之天地密码》国际版预告片

2012年6月14日木曜日

《志明与春娇》 2010 --烟民の悲劇と喜劇



2007年1月1日、香港では飲食店や公共の場所での喫煙が禁止されました。ぼくは、2006年の年末、日本の新聞でそのことを知tって、その記事を切り抜いて、しばらく壁に貼っておきました。

タバコを吸う人を、中国語では“烟民”とか“抽烟族”と呼ぶようです。公共の場所での喫煙が禁止されてしまった香港の“烟民”は、どうなってしまったのでしょう?

志明与春娇》 2010

は、映画館でその旨の字幕が映されるところから始まります。路地裏では、いろいろな職場で働いている“烟民”たちが、休憩時間に灰皿の前に集まってきて、タバコを吸いながらあれこれおしゃべりしています。

そうなのです。2007年の香港では、飲食店や公園での喫煙は禁止になったとはいえ、ストリートには相変わらず灰皿兼ごみ箱が置かれていて、道端でタバコを吸うのはOKなのでした(今[2012年]もそうなのかどうかは知りません)。

そんなわけで、2007年前後の香港を知っているとか、その頃に香港に行ったことのある日本の“烟民”ならば、この映画は見ておいてもいいでしょう。

百度百科によると、“志明与春娇”とは、台湾のバンド五月天が1999年に発表した曲のタイトルだそうです。

以後、“志明与春娇”は、“梁山伯与祝英台梁山伯と祝英台)”とか“罗密欧与朱丽叶ロミオとジュリエット)”のようなカップルの代名詞になったとのことです。

“梁山伯与祝英台”と“罗密欧与朱丽叶”は悲劇な物語でもあるわけですが、“志明与春娇”はごく普通な男の子と女の子のことを指すようです。

というわけで 《志明与春娇》は、カップルである二人が“烟民”であるということを除けば、ごく一般的なラブストーリーです。

単純に笑えるところは、夜中の公園で、志明がタバコを吸っているところを警察に見つかってしまうシーンです。

志明は日本人のふりをして「ワタシニホンジン。I'm japanese」などと言って、香港事情を知らないふりをします。春娇は「アンニョンハセヨ~」とか言って韓国人のふりをします。

春娇を演じているのは、杨千嬅という女の子(おばさん)です。志明を演じているのは、余文乐という男の子です。杨千嬅が1974年生まれ、余文乐が1981年生まれです。実際には、杨千嬅が7つくらい年上なわけですが、映画では5歳年上という設定になっていたと思います。

志明と春娇は、こんなセリフを交わします。

春娇:我年纪比你大。
(わたし、あなたより年上よ)
志明:但我比你高。
(ぼくは君より背が高い)

志明與春嬌 - 五月天


春嬌與志明主題曲

《春娇与志明》 2012 --杨幂、志明を誘惑する


志明与春娇》 2010 の続編が、今年(2012年)の3月に公開された

春娇与志明(志明与春娇2)》 2012

です。

《志明与春娇》 2010 は、タバコにこだわった映画でした。でも、こっちでは特にタバコにこだわってはいません。

そんなわけで、ぼくが《春娇与志明(志明与春娇2)》 2012 について、特に何かを語る理由はありません。しかし、この映画には杨幂が出ています。

志明は北京に転勤になるのですが、北京行きの飛行機のスチュワーデスが杨幂です。志明の後ろに座っていた若い男の子が杨幂のお尻を痴漢した縁で、志明と杨幂はお友達になります。

杨幂が現代劇に出た場合、何が問題になるのかというと、その瞬間、杨幂はただの美人なおねえさんになってしまうということです。

ぼくの好きな杨幂は、

神雕侠侣》 2006
仙剑奇侠传三》 2010
宮鎖心玉》 2011

の襄儿とか雪见とか晴川です。

これらの杨幂は、物語をあらぬ方向へ誘導してしまうパワー、物語をねじ曲げてしまうパワー、物語を破壊するパワーというか、そんなパワーを見せつけてくれました。

ところが、杨幂が現代劇にでるやいなや、彼女はただの美人なおねえさんになってしまいます。このとき、、

我堂堂唐家的大小姐
哈哈哈
无聊

とか、そんなセリフが出てくる余地はありません。きれいなおねえさんはいくらでもいるわけで、それが特に杨幂である必要はないわけです。