2013年9月23日月曜日

侠客行 1989 -- 梁朝伟、 “鹿鼎记” を再現!



中国の芸能関連ニュースというのは東スポのようなもので、すぐさま信頼できるものではありません。

でも、誰かと誰かが結婚したとか、離婚したとかは事実でしょう。この(2013年)9月、聞こえてきたのが王菲と李亚鹏の離婚のお話です。

あと、章子怡が有名なミュージシャンと付き合っているようだというニュースもありました。こういうのはほんとうかどうかはわかりませんが、ほんとうかもしれません。ただ、章子怡の 《非常幸运》 が9月17日から公開されたので、その宣伝であるだけかもしれません。

一番笑わせてくれたニュースが、梁朝伟が小三を妊娠させたというお話でした。小三というのは、もちろん小学校三年生という意味ではありません、小三とは、第三者の現代的な表現で、第三者ならば日本の辞書にも乗っているかと思います。

こちらは9月28日から公開されるツイ・ハークの新作 《狄仁杰之神都龙王》 に特別出演している刘嘉玲がらみの話題作りかもしれません。ツイ・ハークの映画に多くは期待できないとは思いますが、angelababyが出ているので、見られるようになったら見てみたいと思います。


ぼくは、何度か“侠客行 2002”を見始めたのですが、いずれも失敗しました。そんなわけで、気分を入れ替えて梁朝伟主演、香港TVBの

侠客行 1989

を見てみました。わあ。これ、面白い! ただし、金庸の原作とはかなりかけ離れているように思います。どれだけかけ離れているかは、原作を知らないのでよくわかりません。

1980年代、梁朝伟が香港TVBで主演した武侠ドラマはどれも傑作だと思います。そんなあたりについては、こっちの記事を見てください。

侠客行 1989 -- トニー・レオンのお笑いドラマ(周星驰とは梁朝伟の下手な猿真似である)

どこかでも書きましたが、金庸は傑作ドラマ 《射雕英雄传》 《神雕侠侣》 を書いた後、大分裂します。それが 《倚天屠龙记》 であり 《天龙八部》 であり、そしてたぶんこの 《侠客行》で あるように思います。これらの作品では、ヒーロー像とアンチヒーロー像が入り乱れます。

《侠客行》 を書いた金庸は、《笑傲江湖》 と 《鹿鼎记》 を書いて、小説を書くのをやめます。それはとても素直なことのように思えます。《笑傲江湖》 がヒーロー像の集約であり、《鹿鼎记》 がアンチヒーロー像の集約であるからです。


侠客行 2002
 《侠客行》 2002 は、今年(2013年)日本でテレビ放映されたようです。これまで〝侠客行” は日本では紹介されたことがなかったので、それはそれでとても良いことだと思います。

でもなあ、丁珰があまりにブスすぎないか?

“侠客行” は、あまり映像化されていません。原作の〝侠客行”がどんなドラマであるのか、〝侠客行 2002”がどんな物語であるのかという問題は無視して、香港TVBの 《侠客行》 1989 を振り返ってみましょう。

《侠客行》 1989 では、狗杂种(のらいぬ)は登場しません。


石清と闵柔
このドラマの主人公は、石破天(梁朝伟)ではなく石中玉(梁朝伟)です。

もちろん、パパは石清でありママは闵柔です。石清と闵柔夫婦は江湖からほぼ引退状態であり、闵柔に甘やかされて育った中玉は毎日、遊びほうけていいます。

中玉は今日も博奕を楽しんでいるのですが、そこは飛び込んできたのが、玄铁令を手にした丁珰(邓萃雯)です。中玉は丁珰を助けて丁珰と仲良しになります。

丁珰
中玉は石清と闵柔に縁のある雪山派に預けられます。あるとき、雪山派の近くのばばあが率いる一派の倪冬儿(姚正菁)と出会います。

はたまた、中玉は雪山派の掌门・白自在の孫娘・阿绣(陈家碧)に色気を出して、口説こうとするのですが、阿绣は崖に落ちてしまいます。

こうして中玉は追われる身となりますが、これを助けるのが铁珊瑚(刘淑华)と慕容白(余家伦)です。おいおい、おいおい、铁珊瑚と慕容白って誰だ?

冬儿と铁珊瑚
铁珊瑚というのは、現代武侠小説の三大宗师のひとり、梁羽生の 《白发魔女传》 に出てくる美女のようです。五毒教の教主で、イメージは 《碧血剑》 の何铁手でしょう。慕容白というのは絶世のプレイボーイなのですが、出所は不明です。

じゃあ、石破天はどうしているのかというと、いきさつはわかりませんが长乐帮の帮主になります。このときあてがわれた侍女が侍剑(郑艳丽)です。

丁珰と破天と阿绣
丁珰は破天を中玉だと誤解するのですが、破天は丁珰に恋してしまいます。破天は谢烟客のもとで修業した後、史婆婆の弟子になります。実は死んでいなかった阿绣も史婆婆の弟子なのでした。

そう。このラブストーリーの一方の軸は、丁珰を忘れられない石破天と、それでも石破天を好きになってしまった阿绣の恋物語なのです。

侍剑
当然、もう一方の軸が石中玉のラブストーリーであるわけですが、こちらは一気に 《鹿鼎记》 化していきます。そう。中玉は、丁珰と冬儿と铁珊瑚と侍剑の四人をお嫁さんにします。

なんで侍剑までお嫁さんにしてしまうのかというと、破天と間違えられた中玉は长乐帮の帮主におさまってしまい、中玉と侍剑は长乐帮からいっしょに逃げることになるからです。


この他、もちろん、贝海石、丁不三、丁不四、张三、李四、冲虚道长といった面々も登場します。

冲虚道长と言えば《笑傲江湖》における武当派の掌门ですが、この物語でもやはり武当派の掌门です。というか、金庸はこの《侠客行》に引き続き、《笑傲江湖》でも冲虚道长を再登場させるわけです。

张三、李四というのは、日本でいえば太郎と次郎みたいな、極めて典型的な名前です。たとえば、ある中国語の教科書にはこんなお話が載っています。

贝海石
张三、李四、王五三个人一起在河边一边散步一边聊天儿。张三说:“我的一个朋友游泳游得特别好,他可以在水里呆三分钟。”李四说:“我的朋友游泳游得更好,他能在水里呆六分钟。”王五说:“我的朋友游泳游得最好了,他四年以前就从这儿下去了,到现在还没上来呢。”
(张三と李四、王五の三人は、川っぺりで散歩しながらおしゃべりしていました。张三が言いました。「ぼくの友達は泳ぐのがとてもうまいんだよ。そいつは水の中に3分間もぐっていられるんだ」李四が言いました。「ぼくの友達はもっとすごいよ。6分間だよ」王五が言いました。「俺の友達が一番すごいんだな。4年前にここから飛び込んで、まだ上がってきてないんだ」)

で、こんな問題が問われます。

问:谁的朋友游泳游的最好?
(誰の友達が、泳ぐのが一番うまいですか?)


以下、金庸ものを中心とした関連記事をまとめておきます。

笑傲江湖 1984 (周润发)
鹿鼎记 1984 (梁朝伟)
倚天屠龙记 1986 (梁朝伟)
绝代双骄 1988 (梁朝伟)
侠客行 1989 (梁朝伟)
笑傲江湖 1990 (许冠杰
九一神雕侠侣 1991 (刘德华)
九二神雕侠侣之痴心情长剑 1992 (刘德华)
鹿鼎记 1992 (周星驰)
鹿鼎记Ⅱ神龙教 1992 (周星驰)
東成西就 1993 (刘镇伟)
碧血剑 1993 (元彪
正牌韦小宝之奉旨沟女 1993  (梁朝伟)
东邪西毒 1994 (王家卫)
神雕侠侣 1995 (古天乐)
笑傲江湖 2001 (李亚鹏)
射雕英雄传 2003 (李亚鹏)
神雕侠侣 2006 (黄晓明・刘亦菲)
碧血剑 2007 黄圣依
射雕英雄传 2008 (胡歌)
新笑傲江湖 2013 (霍建华陈乔恩

侠客行 1989 -- トニー・レオンのお笑いドラマ(周星驰とは梁朝伟の下手な猿真似である)


鹿鼎记 1984
80年代はじめにデビューした梁朝伟(トニー・レオン)は、80年代は主にテレビドラマで活躍します。

たぶん 《侠客行》 1989 が最後のテレビドラマで、以降は世界の映画スターの道を歩みます。

梁朝伟の80年代香港TVBの主なテレビドラマはこんな感じです。()内は、百度百科に書かれている注釈とか評価です。

英雄出少年 1982 (デビュー作)
天降财神 1983 (出世作)
鹿鼎记 1984 (经典代表作)
新扎师兄 1984 (经典代表作)
倚天屠龙记 1986 (经典代表作)
绝代双骄 1988 (经典代表作)
侠客行 1989 (经典代表作)

倚天屠龙记 1986
このブログでは、百度百科が经典代表作と評価している古装戏である

鹿鼎记 1984 (金庸)
倚天屠龙记 1986 (金庸)
绝代双骄 1988 (古龙)
侠客行 1989 (金庸)

を見ています。もちろん、永遠の大傑作こそは 《鹿鼎记》 1984 なのですが、ほかの3つもとてもすてきなお笑いドラマです。

誰もが知る梁朝伟は二枚目ヒーローなわけですが、80年代テレビドラマにおける梁朝伟はお笑いスターでもあったわけです。

梁朝伟が王家卫と関わりつつも、二枚目ヒーローな映画スターとなった後、お笑いものをやっていないのかというとそういうわけでもありません。

绝代双骄 1988
このブログでは、梁朝伟のお笑い映画として

東成西就 1993
正牌韦小宝之奉旨沟女 1993
超时空要爱 1998

を見ていますが、他にもあることでしょう。

《東成西就》 が映画史上の大傑作であることは言うまでもないでしょう。《正牌韦小宝之奉旨沟女》 では、我らが韦小宝は当時のロシアの最新技術をもって、現代にタイムトリップしています。また 《超时空要爱》 では梁朝伟ご一行様は、三国時代にタイムスリップしたのでした。


侠客行 1989
梁朝伟が 《侠客行》 でお笑いスターを卒業するのとほぼ同時に、お笑いスターとして君臨するのが周星驰です。

梁朝伟と周星驰はもともとのお友達であり、周星驰が梁朝伟を誘って、いっしょに香港TVBに入ったのは有名なお話だと思います。

こうして80年代の梁朝伟のお笑いテレビドラマを見て、今さら周星驰の90年代のお笑い映画を見ると、周星驰のお笑い演技とは梁朝伟のお下品な猿まねであることがよくわかります。

ぼくたちは、愛にだまされてしまうことにくれぐれも注意しなければなりません。とりわけ 《少林足球》 こそは、周星驰の化けの皮がすべてはがれた最低の映画でした。

周星驰にだまされているのは日本人だけではなく、もちろん多くの中国人もそうです。今年の春节、周星驰ひさびさの新作 《西游・降魔篇》 が公開され大ヒットしました。

东成西就 1993
これって中国人全部が集団催眠術にかかっているようにしか思えません。だって、見た人はわかると思いますが、どこが面白いのか、ぼくにはまるでわかりませんでした。

特につまらない中国映画を配給するのがお得意な日本の映画配給会社さえ、これを日本で上映する勇気はないようです。

もちろん、すべての中国人が集団催眠術にかかっているわけではなく、冷静にこの映画がとんでもなくつまらないと思っている個人だってたくさんいます。



正牌韦小宝之奉旨沟女 1993
話を梁朝伟のお笑いテレビドラマに戻しましょう。

梁朝伟はぶっ飛ばされようが、発情しようが、怒鳴り散らそうが、はにかもうが、いつだってお上品です。

もっとも特徴的な動作のひとつが、実によくぶっ倒れることです。なんでぶっ倒れるのかというと、いずれのドラマにおいても武功に真剣に取り組もうとしないからです。

もうひとつの特徴的な動作が、怒鳴りまくりsyばりまくることです。これは危険から見を守るため、とにかく口八丁でなんとかその場をしのごうとするからです。しのげなかった場合にはぶっ飛ばされます。

食い方が汚いのも大きな特徴と言っていいでしょう。ごはんを撒き散らしながら、馒头を食いちぎりながら大騒ぎをします。

また、お行儀も大変よくありません。椅子に座ると、たいていは一方の脚も椅子の上に乗せて片膝を立てて、相手を見下したような態度を取ります。

超时空要爱 1998
行動は軽薄なのですが、悪巧みには長けています。困ったときの顔は、この人でなければできない顔でしょう。しかし、困った顔をしながらも次の手を考えていて、それが通用するときもあれば、通用しないこともあります。

趣味は博打と女の子で、とにかく女の子によくもてます。もてはするのですが、しっとりロマンチックな恋には発展せずに、じゃじゃ馬女たちをなんだかんだてなづけていきます。

これらのイメージは、もちろん 《鹿鼎记》 由来のものであり、《鹿鼎记》 が80年代の梁朝伟のお笑いドラマをすべて方向づけたというわけです。

周星驰だと、こういうわけにはいきません。周星驰だって韦小宝を演じたことはあるわけですが、虎の帽子をかぶるとか、身振りがやたらでかくなったりとか、極端なセリフとか、サングラスをかけるとか、そういうのが必要になってしまいます。

そういえば全部は見ていないのですが、 《鹿鼎记》  2008  の黄晓明もサングラスに頼っていたように思います。


もし、機会があれば80年代にトニー・レオンが展開したお笑い古装ドラマを、ぜひ見ていただきたいと思います。

周星驰の映画というのは何本かを除いてもはや鮮度を保っていないわけですが、梁朝伟のお笑いドラマは今でもとても新鮮なことがよくわかるはずです。

また、日本で紹介されてきた香港映画情報、あるいは大陸や台湾の映画情報がいかにねじ曲げられたものだったかということも、よくわかります。


以下、金庸ものを中心とした関連記事をまとめておきます。

笑傲江湖 1984 (周润发)
鹿鼎记 1984 (梁朝伟)
倚天屠龙记 1986 (梁朝伟)
绝代双骄 1988 (梁朝伟)
侠客行 1989 (梁朝伟)
笑傲江湖 1990许冠杰
九一神雕侠侣 1991 (刘德华)
九二神雕侠侣之痴心情长剑 1992 (刘德华)
鹿鼎记 1992 (周星驰)
鹿鼎记Ⅱ神龙教 1992 (周星驰)
東成西就 1993 (刘镇伟)
碧血剑 1993元彪
正牌韦小宝之奉旨沟女 1993  (梁朝伟)
东邪西毒 1994 (王家卫)
神雕侠侣 1995 (古天乐)
笑傲江湖 2001 (李亚鹏)
射雕英雄传 2003 (李亚鹏)
神雕侠侣 2006 (黄晓明・刘亦菲)
碧血剑 2007 黄圣依
射雕英雄传 2008 (胡歌)
新笑傲江湖 2013霍建华陈乔恩

2013年9月11日水曜日

绝代双骄 1988 -- 古龙+トニー・レオン



中国の新派武侠小说を興したのが梁羽生(广西)と金庸(香港)であり、それに続くのが古龙(香港、のちに台湾に移住)だそうです。この3人をあわせて中国武侠小说三大宗师と呼ぶそうです。

そう言われても何が新しいのか、ぼくにはさっぱりわかりません。古龙の同名小説を原作とする香港TVBのドラが

绝代双骄 1988

です。この小説も何度も映画やドラマになっているわけですが、1988版テレビドラマの主演は梁朝伟(トニー・レオン)です。

どれだけ原作とかけ離れているのかはわかりません。しかし、金庸ドラマって何てリアリズムなんだろうと思ってしまいたくなるほどの荒唐無稽さです。古龙の小説は、歴史や歴史上の人物とは無縁なのだそうです。

たとえば王家卫は、古龙についてこんなことを言っています。

因为他(古龙)是一个流氓,有才气的流氓。所以我拍的时候会想,要是古龙去写这场戏他会怎么去写啊?我喜欢反差嘛,就试着用古龙的口吻来讲金庸的故事。(古龙は無頼派であり、とりわけ才能のある無頼漢なんだ。俺は、古龙だったらこのシーンをどんなふうに書くだろうかと思いながら映画を撮っているんだ。俺はコントラストを強調するのが好きだろ。だから古龙の口っぷりで金庸の物語を語るんだ)


ざっと、物語を振り返ってみましょう。

移花宫の宫主・邀月(陈美琪)は命を救った江枫に恋してしまいます。しかし、江枫は花月奴と恋に落ち、二人は駆け落ちします。このとき、月奴は身ごもっています。

江枫と花月奴は追手を逃れ、隠れ家で日々を過ごしているのですが、ここも移花宫に知られてしています。江枫と花月奴は、再び逃亡しなければなりません。このとき、二人に手を貸すのが使用人の江琴(杨泽霖)です。

3人は小さな旅籠にたどりつき、そこで月奴は双子を産みます。ここに移花宫主・邀月と移花宫の大臣・魏无牙(黄允财)が乗り込んできます。しかし、江琴に毒を盛られた江枫と月奴は息絶えてしまいます。

邀月と魏无牙は、この双子を別々に育てて、ついには二人を殺し合わせようという悪巧みを思いつきます。一人は邀月が育て、もう一人は江枫の親友であり江湖きっての達人である燕南天に託します。

実は、この事態を喜んだのが魏无牙なのでした。彼は、ずっと邀月に恋していたからです。魏无牙は邀月に言い寄るのですが、邀月に殺されてしまいます。

魏无牙の策略で双子の一人・小鱼儿の面倒を見ることになった燕南天は、恶人谷にたどりつきます。ところが燕南天(岳华)は、ここの悪人である屠娇娇(吴丽珠)、李大嘴(谭一清)、哈哈儿(黄天铎)に騙されて廃人にされてしまいます。

恶人谷にはもう一人、万春流(孙季卿)という、偏屈というか、武侠ものではおなじみというか、中国の歴史や小説においておなじみというか、そんな医者がいます。こいつは、致命的な損傷を負いながらも息絶えない燕南天を復活させようとします。

屠娇娇、李大嘴、哈哈儿に、史上最大の悪人になるべく育てられた小鱼儿(梁朝伟)は、悪知恵のはたらく少年というか青年に成長します。

一方、邀月に育てられた一人は花无缺(吴岱融)と名付けられ、お行儀がよく、しかも武功に長けた青年に成長します。でも、邀月には絶対服従です。

たまたま恶人谷の連中は、燕南天の隠し財宝の在り処が書かれた地図を手に入れます。万春流は小鱼儿に彼の出生の秘密を教え、彼を燕南天の隠し財宝探しと両親の报仇の旅に出します。

同じ頃、移花宫の邀月も无缺を燕南天の隠し財宝探しの旅に出します。もちろん、恶人谷の連中に地図を手に入れさせたのも、邀月の陰謀です。

苗族のお祭りに紛れ込んでしまった小鱼儿は、苗族の風習など知るわけもないので、苗族の娘と結婚するはめになってしまいます。

小鱼儿は苗族ご一行様から苦れるため、美女が乗っている馬を奪って逃げます。この美女が铁心兰(黎美娴)で、铁心兰を追っている美女が车月国のプリンセス、张菁(刘美娟)です。

铁心兰がなんで江湖をさすらっているのかというと、パパである车月国の国防大臣・铁战(吴孟达)が無実の罪で捕えられ、パパを燕南天に助けてもらうために、燕南天を探しているのです。

小鱼儿と铁心兰は张菁ご一行様から逃げるのですが、とうとう捕まってしまいます。しかし、移花宫に属しもしないのに移花宫の武功を使う謎の女性に助けられます。これが苏樱(谢宁)です。

実は魏无牙は死んではいなかったのです。ただし、車椅子生活ではあります。魏无牙の養女が苏樱で、だから苏樱は移花宫の武功を使えるのでした。


以上で、主だった登場人物は出揃いました。このメンバー以外で物語に大きく関わるのは、江琴の息子・江玉郎(关礼杰)でしょうか。あと、割とあっさり目に殺されてしまうのですが若き吴君如も出ています。このおばさんは、若い頃からおばさんなのです。

さあ、小鱼儿と无缺はどんな決戦が待っているのか--というわけではありますが、梁朝伟は例によって武功に取り組むつもりはまったくありません。

そうなのですがモテモテなのは、例によってモテモテなのは梁朝伟であり、良い子の花无缺のほうは花公子という名前に反してあまりもてません。

そう。このドラマの見どころは例によって、梁朝伟と女どもの漫才みたいなかけあいです。特に梁朝伟に惚れてしまった苏樱が、あの手この手をつくして口説うとする姿は、涙なくしては笑えません。


梁朝伟は1980年代には、主に香港TVBのテレビドラマで活躍したように思います。この 《绝代双骄》 1988 の後、彼は金庸原作の 《侠客行》 に出て、たぶん、これが梁朝伟の最後のテレビドラマです。

梁朝伟はそれ以降、映画で二枚目ヒーローとして活躍します。これに呼応するかのように、お笑い映画のヒーローになるのが周星驰です。日本でも、梁朝伟と周星驰が幼なじみであることは有名だと思います。

梁朝伟のお笑いドラマについては、当時の日本における香港映画紹介において、ごっそりと抜け落ちているように思います。そのへんの事情は

《侠客行》 1989

で、まとめようと思います。

このブログで紹介した梁朝伟のお笑いテレビドラマ、あるいはお笑い映画はこんなところです。

鹿鼎记 1984 -- 永遠の傑作お笑いドラマ
倚天屠龙记 1986 梁朝伟版 -- 分裂と収束
绝代双骄 1988 -- 古龙+トニー・レオン
東成西就(大英雄) 1993 - つらい時に見てね!
正牌韦小宝之奉旨沟女 1993
超时空要爱 1998

どんな映画やドラマでも、たとえ言葉がわからんくても吹き替えじゃないのを見たいものですが、特に梁朝伟ものは吹き替え版だとお笑いが半減してしまいます。この人のしゃべりは素敵なのです。

たいして中国語のできないぼくたちは、吹き替え版だってたいして理解できないわけですが、それでも梁朝伟ものは粤语版を見るべきように思います。

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