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娄烨（ロウ・イエ）が、毕飞宇Bi Feiyuという作家が書いた同名小説を映画化したのが
推拿 2014
です。どんな物語かというと、盲人マッサージ師たちの青春群像とでも言っておけばいいでしょう。 “推拿tuīná” がマッサージするという意味で、推拿師tuīnáshīがマッサージ師という意味です。
娄烨（ロウ・イエ）がどうのとか、映画とか芸術とか、あるいは愛とか人生とか人間とか社会とか政治とか …… そういうつまらないことは考えずに、思い切り楽しんで、大笑いすればいい映画だと思います。場合によっては、大泣きしたっていいでしょう。
中国の映画監督で、すべての作品が日本で上映されているのは王家卫（ウォン・カーウァイ）と娄烨だけのように思います（あ。興味はありませんが、周星驰（チャウ・シンチー）もそう言えるのかもしれません）。やがて 《推拿》 も日本で公開されるのでしょう。”超おばかな青春映画” とか、そんな路線で宣伝してほしいと思います。
ぼくは、この映画が好きだと言っている中国人を何人も知っています。一方、この “映画面白いから見ろ～” と知り合いに推薦してもなんの反応もありません。普通の中国人は 、《推拿》 というタイトルだけで引いてしまっているように思います。
この記事では、この映画の登場人物と役者について紹介してみます。
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昨年（2014年）2月11日、ベルリン国際映画祭で娄烨の 《推拿》 が上映され、この映画は大陸では同年11月28日に公開されました。そんなわけで今年（2015年）の2月から3月にかけて、娄烨の、見たことのある映画、まだ見ていなかった映画、全部を見てみました。
周末情人（デッド・エンド 最後の恋人） 1993｜《苏州河》 马达（贾宏声）のその後
危情少女（危情少女 嵐嵐） 1994｜娄烨の “おさげ少女シリーズ” スタート！
苏州河（ふたりの人魚） 2000｜聡明な蓉儿を演じられたのは周迅だけである
紫蝴蝶（パープル・バタフライ） 2003｜《苏州河》 から 《推拿》 までの距離、あるいはテロの時代
颐和园（天安門、恋人たち） 2006｜娄烨は肩を並べて顔を寄せ合う男と女のカットが好きである
春风沉醉的夜晚（スプリング・フィーバー） 2009｜娄烨が封印したトキメキ感が復活する予感
花（パリ、ただよう花） 2011｜できごとはどしゃ降りの雨の中で起こる
浮城谜事（二重生活） 2012｜”おさげ少女” の半分復活、あるいは新生 娄烨のすてきなカット
推拿 2014｜目をつむって娄烨の “見えない映画” を見る
推拿 2014｜新浪娱乐インタビュー ： “娄烨 《推拿》 について語る”
推拿 2014｜娄烨（ロウ・イエ）が描く “もえもえの盲人マッサージ師たち”
娄烨电影 《推拿》 2014｜萌萌哒盲人推拿师们（ロウ・イエが描く “もえもえの盲人マッサージ師たち” ［中国語版］）
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张宗琪Zhāng Zōngqí（王志华Wáng Zhìhuá）
沙复明Shā Fùmíng（秦昊Qín Hào）
王大夫Wángdaìfu（郭晓冬Guō Xiǎodōng）
小孔Xiǎokǒng（张磊Zhāng Lěi）
都红Dōu Hóng（梅婷Méi Tíng）
徐泰和Xú tàihé（黄军军Huáng Jūnjūn）
金嫣Jīn Yān（姜丹Jiāng Dān）
张一光Zhāng Yīguāng（穆怀鹏Mù Huáipéng）
小马Xiǎomǎ（黄轩Huáng Xuān）
小蛮Xiǎomán（黄璐Huáng Lù）
娄烨は 《颐和园（天安門、恋人たち）》 2006 で5年間の禁止をくらいますが、李杨は 《盲井》 2003 で3年間の禁止を言い渡されます。《盲井》 については、このブログでも見ています。
沙宗琪Shā Zōngqíマッサージセンターは、この张宗琪と沙复明Shā Fùmíngの二人が経営しています。だから、沙复明の沙＋张宗琪の宗琪で沙宗琪です。张宗琪は仕事熱心で、くだらないことは一切言わず、多くのお得意さんをかかえています。
张宗琪を演じている王志华は、実際の盲人です。全盲なのか、ちょっとは見えるのか、詳しいことはわかりません。
この人は “盲人歌手” をやっています。残念ながら、映画では歌うシーンはありません。
この人は “盲人歌手” をやっています。残念ながら、映画では歌うシーンはありません。
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沙宗琪マッサージセンターのもう一人の老板（社長）が、秦昊の演じる沙复明です。张宗琪が仕事熱心なのに対して、沙复明の興味はむしろダンスや詩の吟诵や研究といったエンターテインメント系です。また、記念写真を撮るのも好きです。
沙复明は、普段は明るくて行動的なのですが、悩みもあります。
お客のみんなが都红Dōu Hóngがきれいだというのですが、沙宗琪は先天性の全盲のため、“美しい” という概念を理解できません。
お客のみんなが都红Dōu Hóngがきれいだというのですが、沙宗琪は先天性の全盲のため、“美しい” という概念を理解できません。
秦昊は 《春风沉醉的夜晚（スプリング・フィーバー）》 2009、《浮城谜事（二重生活）》 2012 に出演し、これが3つ目の娄烨映画です。冒頭でのお見合いに失敗するシーン、二度あるダンスシーンなど、見所はたくさんあります。
《浮城谜事》 では演技をしてはいけない（演技）という足かせがありましたが、この映画ではたっぷり演技を楽しんでいます（もっとも娄烨からは、この映画では秦昊の演技が一番ひどいと宣告されてはいますが……笑）。
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郭晓冬が演じる王大夫は、沙复明の同級生です。小孔Xiǎokǒngという恋人がいて、深圳から駆け落ちのようにして、沙复明を頼って、小孔とともに南京に戻ってきます（この辺の事情はちょっと間違っているかもしれません）。
弟が借金を作ってしまったため、ヤクザから、弟の借金を肩代わりしろと迫られ、苦境に立たされます。
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王大夫の恋人です。沙宗琪マッサージセンターのみんなにとって、王大夫は沙复明の古い友達なので、大哥dàgē（兄貴）といった存在です。そういうわけで、沙宗琪マッサージセンターのみんなにとっての小孔は、嫂子sǎozi（兄の嫁）ということになります。
小孔を演じているのは、実際に目の障害がある张磊です。
彼女はかすかには見えるので、大の映画好きです。撮影時には盲学校の学生だったのですが、その後はほんとにマッサージ師（推拿师）になります。
彼女はかすかには見えるので、大の映画好きです。撮影時には盲学校の学生だったのですが、その後はほんとにマッサージ師（推拿师）になります。
彼女が、この 《推拿》 で最も注目された役者です。第51回金马奖（台湾アカデミー賞）では、最優秀新人演技賞を獲得します。新人演技賞発表の瞬間、娄烨と並んで座っている娄烨の奥さん（马英力Mǎ Yīnglì：この映画のシナリオ担当）は、ほとんど泣き顔になっていました。
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沙宗琪マッサージセンターきっての美女が都红で、梅婷という人が演じています。沙宗琪マッサージセンターでは新人なのですが、けっこう年はくっているので、大姐dàjiěみたいなポジションにつきます。でも、決してでしゃばることはありません。
梅婷はこの映画がきっかけで、撮影担当である曾剑Céng Jiànと結婚しました。梅婷は1975年生まれなので、もう40歳です。
2001年に鄢颇Yān Pōという監督と結婚して、2006年に離婚しています。鄢颇というのは主にテレビドラマの監督なのですが、女ぐせが悪いので有名だそうです。
2001年に鄢颇Yān Pōという監督と結婚して、2006年に離婚しています。鄢颇というのは主にテレビドラマの監督なのですが、女ぐせが悪いので有名だそうです。
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沙宗琪マッサージセンターは、活発で行動的なメンバーが多く、お仕事以外の時間はわいわいきゃーきゃーにぎやかにしています。ただし、徐泰和は人見知りタイプです。
金嫣Jīn Yānという女の子が泰和が好きで、お付き合いしましょうと言うのですが “配不上你（ぼくは君にはふさわしくない）” と断ってしまいます。
詳しいことは書きませんが、娄烨が大好きで、しかしこれまで封印していた（もうひとつの）“男と女が肩を寄せ合い、顔を並べる” シーンが、泰和と金嫣によって再生します。
金嫣が “わたしって、きれいなのよ” と言うシーンもチャーミングでした。金嫣は、自分の顔を泰和にさわらせます。ついには、泰和は名言を吐きます。ここでは内緒ですが、映画を見て笑ってください。
徐泰和を演じているのは黄军军という人で、実際の盲人だと思います。
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泰和に交際を申し込んだのに “配不上你” と言われてしまった金嫣は、道路にしゃがみこんで大泣きします。演じているのは姜丹という人です。この人も障害のある人のように思いますが、きれいだと思います。
金嫣がらみのシーンで一番好きなのは、小孔とじゃれあうシーンです。金嫣は小孔から悩みを聞かされ、やがて抱き合ってはしゃぎます。このときお互いに “瞎说xiāshuō” と言い合います。
“瞎说” は “ばかなこと言う” みたいな意味です。“瞎” は“目が見えなくなる” という意味で、“瞎说” を直訳すれば “お前には何も見えていない” みたいな感じでしょう。ここも、大笑いできるシーンのひとつです。
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张一光は芸達者です。この映画で、彼が披露する芸が快板kuàibǎnです。快板というのは語り芸のひとつで、何枚かの竹の板を指の間に挾んで、カスタネットみたいに打ちながら語ります。
一光を演じている穆怀鹏という人は、盲人相声mángrén xiàngsheng（盲人漫才）をやっている人で、週末には天津で相声をやっているそうです。
本業はマッサージ店経営をしている人で、実際のマッサージ店がどんな作りであるのかを、娄烨にあれこれ教えたそうです。
本業はマッサージ店経営をしている人で、実際のマッサージ店がどんな作りであるのかを、娄烨にあれこれ教えたそうです。
冒頭のほうでナレーションは、“小马は沙宗琪マッサージセンターにやって来たおかげで、人生の転機が訪れる” と語ります。どんな転機なのかは書きませんが、张一光がその転機を誘導します。
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この映画は誰が主人公ということはないのですが、冒頭のナレーションが “まずは小马のことから語りはじめよう” と言うように、小马が主人公だと言ってもいいでしょう。
泰和がいわば単に引っ込み思案なのに対して、小马は閉じこもりがちな性格です。とはいえ、沙宗琪マッサージセンターでは、抜きん出たイケメンです。
沙宗琪マッサージセンターに王大夫と小孔がやって来るわけですが、たぶん匂いなのでしょう、小马は小孔にひかれます。
沙宗琪マッサージセンターに王大夫と小孔がやって来るわけですが、たぶん匂いなのでしょう、小马は小孔にひかれます。
小马を演じている黄轩は、たとえば昨年（2014年）久々に周迅がテレビドラマに出演して話題になった 《红高粱（紅いコーリャン）》 に出演しています。百度百科の男性スターランキングでは45位（2015年3月13日）なので、今をときめくスターの一人なのでしょう（44位は邓超Dèng Chāo）。
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| 《盲山》 黄璐 |
小蛮については、ここでは何も語らないでおきましょう。映画を見て楽しんでください。小蛮を演じる黄璐は、《盲山mángshān》 2007 という映画で注目されます。
《盲山》 は李杨という監督の、若い女性の人身売買をテーマにした映画です。日本で上映されたのかどうかは知りませんが、日本のニュースにもなっているので、覚えている人もいるかもしれません。
盲山
そういうわけで、李杨は、娄烨の先輩にあたるわけです。李杨が解禁明けに作ったのが 《盲山》 です。《盲井》 の英語タイトルが “Blind Shaft”、《盲山》 が “Blind Mountain”、そして、《推拿》 は “Blind Massage” です。
李杨は、ラストをハッピーエンドにしてまで、《盲山》 の国内上映にこだわったそうです。
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ナレーター（？）
《推拿》 では、ナレーションが重要な役割を担っています。タイトルバック（？）さえ、スタッフとキャストがナレーションで紹介され、文字は流れません。
ナレーターのおねえさんが、どんな人なのかはわかりません。
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