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解禁明けの娄烨(ロウ・イエ)が撮った映画が
浮城谜事(二重生活) 2012
です。《浮城》 2006 という小説があるそうで、梁晓声という人が書いています。これは大地が割れて、ある地域が浮いた都市状態になってしまうお話だそうです。SFというわけではなく、文学のようです。
“浮城” という言葉はそこから生まれたのでしょう。《浮城大亨》 2012 という香港映画もあります。郭富城が主演(笑)している、実業家の人生を描く物語のようです。たまたま 《浮城谜事》 も2012年の映画です。《浮城大亨》 の大陸での上映が5月、《浮城谜事》 の公開が10月です。
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周末情人(デッド・エンド 最後の恋人) 1993|《苏州河》 马达(贾宏声)のその後
危情少女(危情少女 嵐嵐) 1994|娄烨の “おさげ少女シリーズ” スタート!
苏州河(ふたりの人魚) 2000|聡明な蓉儿を演じられたのは周迅だけである
紫蝴蝶(パープル・バタフライ) 2003|《苏州河》 から 《推拿》 までの距離、あるいはテロの時代
颐和园(天安門、恋人たち) 2006|娄烨は肩を並べて顔を寄せ合う男と女のカットが好きである
春风沉醉的夜晚(スプリング・フィーバー) 2009|娄烨が封印したトキメキ感が復活する予感
花(パリ、ただよう花) 2011|できごとはどしゃ降りの雨の中で起こる
浮城谜事(二重生活) 2012|”おさげ少女” の半分復活、あるいは新生 娄烨のすてきなカット
推拿 2014|目をつむって娄烨の “見えない映画” を見る
推拿 2014|新浪娱乐インタビュー : “娄烨 《推拿》 について語る”
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《浮城谜事》 は、どしゃ降りのなかでの衝撃的なシーンから始まります。それに続くタイトルバックでは、秦昊(チン・ハオ)が飛行機に乗っていて、そこから武汉の街が空撮で映しだされます。空撮なんて珍しいわけではありませんが、娄烨の映画でははじめての事態です。
《颐和园》 2006、《春风沉醉的夜晚》 2009、2011年 《花》 と、あれこれの試みを模索していた娄烨ですが、この空撮シーンを見ているだけで、いよいよ娄烨が映画館に帰ってきたのだと、うれしくなります。娄烨自身も、はじめての本格的な空撮を楽しみにしていたことでしょう。
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秦昊が自宅に帰りつくと、待っているのは妻の郝蕾(ハオ・レイ)と幼い子供(女の子)です。秦昊は、《春风沉醉的夜晚》 で好演したと思います。郝蕾は 《颐和园》 から、役者として格段に成長しています。《颐和园》 の水のないプールでのしぐさや日記の朗読は、娄烨が郝蕾の足りなさを補うために編み出されたシーンのようにも思います。
娄烨は、表情に何ごとかを語らせるのが大好きです。この映画の郝蕾は、《苏州河》 の周迅に負けないくらいの表情を作っています。特に喫茶店で、友だちのだんなの浮気相手が、自分のだんなであるとわかるシーンはすてきです。
娄烨はおさげ少女が大好きですが、《颐和园》 以来おさげ少女を封印してきました。この映画では、おさげ少女が半分復活しています。郝蕾は、三つ編みのおさげ二つをひとつに束ねているからです。
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この映画の郝蕾は、《颐和园》 の于红のその後の姿と考えていいのでしょうか。《颐和园》 は何年にもわたる映画なので、もちろんそうではありません。ただし、《颐和园》 の于红が一般的なというか、わりと優秀な運命をたどった姿なのでしょう。
それにしても娄烨は、どうして女視線で物語を語るのが大好きなのでしょうか。たぶん、女の表情を撮るというか、女に表情の演技をさせるのが好きなのでしょう。
《危情少女》 1995 の瞿颖がけばい化粧をしているのは、表情を閉じ込めるためだったのでしょう。《花》 では、表情を閉じ込める作戦は適用できずに、映画全体が失敗していました。ところで、この映画には瞿颖がちょこっと友情出演してます。
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《颐和园》 では、《紫蝴蝶》 2003 までに培ってきたテクニックをすべて捨て去った娄烨でしたが、それ以降の映画で、ふたたび自分のカットを再構築してきました。それがこの 《浮城谜事》 という映画の最大の収穫なのだ……と言っていいように思います。だから、
を “娄烨と曾剑(ツアン・ジエン)によるカット作り再構築三部作” と呼んでおきましょう。曾剑は 《颐和园》 で編集の仕事に参加して、《春风沉醉的夜晚》 と 《浮城谜事》 で撮影を担当します。次の 《推拿》 も撮影担当です(《推拿 2014|目をつむって娄烨(ロウ・イエ)の “見えない映画” を見る》 参照)。
かつて使っていた俯瞰ぎみの風景のカットを 《花》 では、そっとというか言い訳ぎみに使いました。しかし、この映画では正々堂々と自信をもって、かつてのカットを復活させています。
もうひとつうれしいシーンがあります。《苏州河》 で、物語とはなんの関係もなく、唐突にハネムーンに出発するカップルとか、お誕生日パーティが挿入されます。そして、ざらついた映像がふわっとめくれるように女の顔のアップをとらえ、女はいきなりカラオケを歌いだします。
“ざらついた映像がふわっとめくれるように女の顔のアップになる”--これが復活したのです。秦昊のデート相手の顔があきらかになる、そのシーンをぼくはわくわくしながら何度も見ました。ぼくは一瞬、《苏州河》 と同じ役者なのかと思ったのですが、たぶん違うのでしょう。でも、そっくりなんです。
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もちろん、他にも 《紫蝴蝶》 以前のカットの復活もあれば、《颐和园》 以降のカットの復活もあります。この映画で、特に特長的なのが、静止している人間ではなく動いている人間を撮り、しかもカメラも動くところでしょう。
こう書くと、そんなの娄烨映画ではあたりまえではないかと言われてしまうでしょう。でも、もっと高度なレベルのカットとして成り立っているということです。
ぼくたちは郝蕾のボリューム感を知っているわけですが、郝蕾の表情や動きにくらべると、秦昊の表情や動きはなんと情けないことでしょう。この映画では、秦昊をどこまでも突っ放して描いています。たぶん、それははじめから予定どおりだったのでしょう。
日本に秦昊ファンというのがいるのかどうかわかりませんが、心配しないでください。娄烨の最新作(2015年時点) 《推拿》 では、ぼくたちを思う存分わくわくさせてくれます。
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娄烨はこの映画でおさげ少女を半分復活させたわけですが、娄烨が、大好きなのにずっと封印している男と女が肩をならべ顔を寄せ合うシーンは、この映画ではもちろん登場しません。
娄烨は、特にいわゆる “愛の不毛” とかそういったことを主張したい監督ではありません。娄烨はこの映画だって、ハッピーエンドだと思っているようです。いずれ、“男と女が肩をならべ顔を寄せ合うシーン”がどんなふうに描かれるのか、これも楽しみにしておきたいと思います。
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最後に、幼稚園だかなんだかのいくつかのダンスとか運動会だとかのシーンに触れておきましょう。今から見れば 《春风沉醉的夜晚》 の街頭でのダンスシーンは、《颐和园》 の大学でのダンスシーンよりとてもすてきです。
そして、この映画での子供たちと親たちと先生たちの集団シーンは、映画を見るわくわく感とかときめき感にあふれています。
《浮城谜事》 預告片
《浮城谜事》追谜版预告
《浮城谜事》北京首映 娄烨吐槽电影审查制度
《浮城谜事》纪录片
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