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《疯狂的石头》 2006 が大ヒットした結果、“疯狂的”モノがあれこれ作られます。もちろん、“疯狂的”は宁浩が発明したわけではありません。“疯狂的”で検索すると、あれこれ出てきます。
疯狂的动物 1930
疯狂的果实 1956
疯狂的代价 1989
疯狂的兔子 1997
疯狂的背后 2007
疯狂的麦穗儿 2008
疯狂的玫瑰 2009
疯狂的精神病患者 2009
疯狂的骗局 2010
疯狂的GPS 2011
疯狂的疯狂 2012
疯狂的导演 2013
2007年以降の “疯狂的” モノは、《疯狂的石头》 にあやかったものと言っていいでしょう。
《疯狂的动物》 1930 とは、マルクスブラザースの 《Animal Crackers(けだもの組合)》 のことですが、《疯狂的果实》 1956 とは何でしょう? 石原慎太郎原作 ・ 脚本、石原裕次郎主演、中平康監督の 《狂った果実》 です。
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宁浩自身も、もう1つ “疯狂的” モノを作ります。
疯狂的赛车 2009
この映画は “終” という文字から始まります。いったい何が終わったというのでしょう。もちろん、映画としては自転車ロードレ
ースのゴール地点ではあるのですが、宁
浩はなぜ “終” にこだわったのでしょう。
たぶん、宁浩にとって何かが終わり、新たな何かがスタートしたのでしょう。何が終わったのかというと、宁浩にとっての映画の習作が終わったように思います。つまり、この 《疯狂的赛车》 から、本格的な宁浩映画がスタートしたのだ--というように思います。
《疯狂的石头》 のヒットにより、宁浩はすぐにでも新作を作れたことでしょう。ところが、《疯狂的石头》 とこの 《疯狂的赛车》 の間に、宁浩は30分の短編 《奇迹世界》 2007 を撮っています。この 《奇迹世界》 をもって、宁浩にとっては習作時代が終わったのだと思います。
これまで、宁浩は何を語り、何を描いてきたのでしょうか。
星期四,星期三 2001
香火 2003
绿草地 2005
疯狂的石头 2006
それはむき出しの出来事であり、むきだしの出来事こそが生み出すむき出しのお笑いでした。むき出しの出来事が起こってしまうとき、人は、出会うべくはずもない人々と出会ってしまったり、出会うべくはずもない人々とすれ違ったりします。
むき出しの出来事というのは、人が、価値観とか評価とか、そういうわずらわしいものを語ってしまう以前の、単なる出来事のことです。
単純に言ってしまえば、ソクラテスとプラトンに対するアンチテーゼです。ソクラテス、プラトンよ。お前ら、ギロチンで許されるとでも思っているのか?
出来事は同時に無数に生起しているため、それを映像にする際には、映像における時間のズレが生じ、それはスリルとミステリーとお笑いを生み出します。
そのうえで、宁浩はさらに、何にチャレンジしなければならなかったのでしょうか。これまでの宁浩の映画になかったもの--それはスピードです。
奇迹世界 2007
は、クリント・イーストウッドの 《ダーティハリー》 をお手本にした、人間と人間あるいは車と車の逃走劇 ・ 追走劇であり、この短編によって宁浩は、映画におけるスピードを習得しました。
こうして、宁浩が宁浩映画を作るための準備は整いました。それが 《疯狂的赛车》 の冒頭における “終” が意味するものだと思います。
《疯狂的石头》 を作ったとき、本当に面白いのかどうか、客に受けるのかどうか、絶対の自信はなかったことでしょう。この 《疯狂的赛车》 から、本当の宁浩映画がスター
トしました。
宁浩は、これまでもかなり乗り物にこだわってきました。たとえば 《香火》 では主役のひとりが自転車でした。
宁浩(ニン・ハオ)の軌跡 -- 主役は乗り物だ
宁浩が、スピードが大きなテーマであるこの映画において、主役のひとりとして自動車ではなく自転車を選んだのは当然のことでしょう。もちろん、自動車だって大活躍するのですが……。
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《疯狂的石头》 も、相当登場人物たちが入り乱れていましたが、 《疯狂的赛车》 ではさらに複雑になります。
黄渤は自転車ロードレースの選手で、耿浩という名前です。この耿浩という名前は覚えておきましょう。耿浩はレースにおいて0.01秒の差で優勝を逃します。耿浩にはお師匠さんがいるのですが……。
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まず、耿浩に絡むのがインチキ商売をやっている李法拉(九孔)という、名前からしてうさんくさいハゲおやじです。“法拉利” といえば、車のフェラーリのことです。
李法拉はあっさり引っ込んでいくようにも見えるのですが、最後の最後までドラマに絡みます。また、李法拉には巨体の奥さん(董丽范)がいます。
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この二人組はかなりデコボコなので、金を儲ける気はあるのですが、特に悪意があるわけではなく、事態を悪い方へ悪い方
へと複雑化していきます。
この二人は、まずは李法拉の奥さんを殺そうとするのですが、奥さんから自分の殺し代よりも高額で李法拉殺しを依頼され、引き受けてしまいます。
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タイで、麻薬の運び屋を殺して、自分一人で金をせしめようとするのが察猜です。察猜はChatchaiの音訳で、タイにはたくさんの察猜さんがいるのでしょう。
演じているのはWorapoj Thuantanonという人で、ムエタイのチャンピオンだった人だそうです。殺し屋コンビのおかげで大活躍をする羽目になるのですが……それは見
てのお楽しみです。
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察猜と取引するのが台湾のやくざです。ボスが东海(戎祥)で、阿杰(高捷)などを率いています。
こいつらのテーマミュージックが演歌の中国語版で、けっこう雰囲気を盛り上げてくれます。
こいつらも、けっこうデコボコです。最初に登場するときには、船の上で麻雀をしているのですが、きちんと取引しようとしていたと思われる相手をみんな殺してしまいます。
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あれこれの事情があって、耿浩を逮捕しようとする刑事二人組も絡んできます。黄渤は 《疯狂的石头》 のラストでは、まんまと逃げましたが(もっとも 《奇迹世界》 を見ると、映画が終わった後に逮捕されたようですが……)、今回はこの刑事から逃げ切れるのでしょうか?
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あと、書いておく必要があるのが徐峥の存在です。《疯狂的石头》 では黄渤も徐峥も脇役の一人でした。しかし、宁浩は以降、黄渤と徐铮との強力なトリオを形成し、この三人は中国映画を活性化する重要な役割を担うことになります。
この映画では黄渤が主役ですが、宁浩が次に作る 《无人区》 では徐峥が主役で、
黄渤は脇に回っています。
《疯狂的石头》 とこの 《疯狂的赛车》 があったからこそ、《人在囧途》 と 《泰囧》 が生まれたと言っていいでしょう。
徐峥が何を演じているのかというと、葬儀屋です。なんで葬儀屋が絡んでくるのかというと、実は耿浩のお師匠さんが死んでしまい、耿浩はお師匠さんのお墓を作ろうとするからです。
徐峥というと 《疯狂的石头》 や 《泰囧》 での頭ツルツルなイメージもありますが、ここでは割とインテリ風なメイクになっています。そして、このイメージは 《无人区》 に引き継がれることになります。
《疯狂的赛车》 とは関係ありませんが、今日(2014年4月29日)徐峥主演の映画が公開されました。タイトルは 《催眠大师》 です。このタイトルは、邓超と杨幂が主演する 《分手大师》 からパクったものでしょう。
《催眠大师》 で、徐峥のお相手をするのは莫文蔚です。このおばちゃまの存在は、中国文化圏では強力なのでしょう。そのうち、見てみましょう。
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この 《疯狂的赛车》 では以上のメンバーが、脚や自転車やバイクや車やトラックで駆けずり回ります。展開が早くて、話がどんどんぐちゃぐちゃになっていきます。
正直、語学力がないので、何度もこの映画を見て、やっと腹を抱えて笑えるようになりました。一度見て、笑えなかったからといって、あきらめないでください。必ずや、大笑いできます。
宁浩の得意技のひとつが、もろに方言な発音です。この映画では闽南话、陕西话、武汉话が語られるそうですが、ぼくには発音が変だなあくらいしかわかりません。
映画監督のなかには、自らの映画のパロディを何度も反復する人もいます。その代表が刘镇伟です。
宁浩は当然、刘镇伟の映画をたくさん見ていることでしょう。中国の(というか香港の)お笑い映画を語るとき、重要なのは周星驰とか、ましてや王晶とかではなく、刘镇伟だからです。
《疯狂的赛车》 でも、かつての宁浩映画の断片があちこちで登場します。自転車はもちろんですが、《香火》 のお経が流れたりとか、ホテルの受付嬢とか、警察署で捕まっている娼婦とか、あれこれ楽しんでください。
《香火》 がいかに傑作だっかた、よくわかると思います。
あと、火のついたままのジッポを放り投げるシーンは、今後のために覚えておくといいと思います。
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この映画は単純に言ってしまえば、宁浩が作った美女の登場しない 《パルプフィクション(中国語名:低俗小说)》 です。そのまま音楽だって流れます。
ただし、ぼくは宁浩を単純に中国のタランティーノと呼んでしまうのはどーだかなあと思います。そのへんは、またそのうち考えてみましょう。
疯狂的赛车-沉浮的兄弟歌曲
疯狂的赛车片花.part1
疯狂的赛车片花.part2
疯狂的赛车片花.part3
疯狂的赛车超爆笑片段,灰常的international~~~
宁浩の軌跡 -- 主役は乗り物だ
星期四,星期三 2001
香火 2003
绿草地 2004
疯狂的石头 2006
奇迹世界 2007
疯狂的赛车 2009
无人区 2013
黄金大劫案 2012
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