2012年12月2日日曜日

笑傲江湖 1990 -- 金庸映画観賞講座


笑傲江湖》 2001
日本人にとっては、《笑傲江湖》 と言えば、2001年の李亚鹏版ということになるでしょう。日本でも、テレビ放映されたりDVDが発売されているみたいだからです。ぼくも好きです。

エンディングタイトルを振り返ってみましょうか。

笑傲江湖 ED片尾


あるいは、こんなのも見てみますか。

红军版笑傲江湖

※この紅軍は、とても多くの演奏をしています。あれこれ楽しんでください

笑傲江湖》 2012 あらら
《笑傲江湖》 2001 は、今でも人気があることがわかります。放映当時、金庸自身ファンからさんざん文句を言われたそうですが、このドラマが面白かったから、みんなが何かを言いたくなったように思います。


いろいろな《笑傲江湖》があるわけですが、ここでは

笑傲江湖》 1990(香港)

を見てみたいと思います。登場メンバーは、こんな具合になっています。

令狐冲(许冠杰
陆大有(张明敏):冲のお友達
风清扬(韩英杰
岳不群(刘兆铭
岳灵珊(叶童
左冷禅(元华):五岳派盟主
刘正风(午马
曲洋(林正英
任盈盈(张敏):日月神教坛主
蓝凤凰(袁洁莹):云南五毒教教主
林震南(金山)
厂公(刘洵):东厂主管太监
欧阳全(张学友

欠けている人たちのことは別にして、おなじみなメンバーばかりです。でも、知らない人もいます。厂公と欧阳全です。

厂公というのは、东厂という明朝政府の諜報機関の長である宦官(太监)です。だから、厂公の部下である欧阳全(張学友)は、彼を厂公と呼びます。欧阳全は、欧阳峰みたいな名前からして、性格が悪いことがわかります。

注目すべきは盈盈と凤凰(五毒教教主)のコンビでしょう。盈盈は日月神教坛主で、坛主を補佐するのが、五毒教教主の凤凰です。

香港のお笑い映画では、この二人のようなお笑い女性コンビがよく登場します。この映画の张敏の扱いには不満もあるのですが、けっこう笑わせてくれます。

刘正风(午马)と曲洋(林正英)
《笑傲江湖》 1990 は、(なんと!)禁宫(皇宮)から盗まれた“葵花宝典”にまつわる物語です。なのですが、林震南がいるのに、なぜ林平之がいないのでしょうか? 見てのお楽しみです。

この映画では“葵花宝典”の正体については、明らかにされません。ぼくが見たバージョンでは、オープニングで、きれいに刺繍された布に血が飛び散りますが、オリジナルではそうではなかったかもしれません。

令狐冲と灵珊は、たまたま船のなかで曲洋(林正英)と出会います。曲洋は、正派から追われています。そんなことは知らない令狐冲は、曲洋に言います。

你放心。我们不是日月神教的人。
(おじさん。心配しなくてもいいよ。ぼくたちは日月神教じゃないから)

林正英の曲洋は言います。

我是。(わしは、そう[日月神教]だ)

こうして、刘正风(午马)+曲洋+令狐冲のコラボレーションが展開します。

            *

《笑傲江湖》 1990 は、《スウォーズマン/剣士列伝》というタイトルで検索すれば、あれこれ情報を得られるようです。

ならばここでは、金庸もの映画を、ぼくたちはどのように楽しむべきかを、ちょっと考えてみたいと思います。

まずは、金庸ドラマとはお笑いであることを忘れてはいけません。金庸は、人を笑わすために小説を書いていたはずです。

間違っても、武功シーンの出来がどうのなどということを、金庸もの映画において語ってはいけません。

映像的にどれだけすばらしい武功シーンがあったとしても、それは笑うためのものであって、映画を評価したり、泣いたり感動したり人生について考えるためのシーンではありません。

このことを勘違いしているのが、当のツイ・ハークです。これについてはツイ・ハークの《青蛇》を見るとよくわかります。あるいは、同じように勘違いしているのが、程小东であると言ってもいいし、木村威夫であると言ってもいいでしょう。

ただし、武功の名前については注意しておきたいと思います。この映画には登場しませんが、盈盈のパパ任我行が開発した“吸星大法”などは、金庸ものではない映画でも、あちこちでお目にかかることになるからです。

蜜蜂を呼び集める鳳凰
また、長編小説を90分くらいにまとめるわけなので、当然、原作は改編されます。このとき、改編に異議を唱えるのではなく、どのように改編されたのかを楽しむべきでしょう。

この映画では“葵花宝典”盗難事件に(なんと!)太监が乗り出すわけですが、それだけで笑えるわけです。

もうひとつ必ず登場するのが、ほかの金庸ドラマからの流用シーンです。これは、うれしいお楽しみです。この映画ではたとえば、林家を襲撃するのは(なんと!)左冷禅なのですが、盈盈と凤凰は左冷禅を蜜蜂作戦でやっつけます。

いま、昔の金庸もの香港映画を見るとき、ぼくたちは、このようなとてもぜいたくな喜びを味わえるわけです。当時の日本人(特に香港映画をもてはやしていた連中)に、いったい何がわかっていたのでしょう。

しかし、香港の人たちにとって、こんなことは常識というかあたりまえのことなわけです。金庸ものあるいはほかの武侠もの映画を見て、大笑いして映画館を出てきたことでしょう。

そういう意味では 《碧血剑》 1993 は、展開が無茶苦茶すぎですが、経典のひとつに数えるべきだと思います。

Swordsman Trailer(2012)HD English&Chinese

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