2016年1月28日木曜日

捉妖记(モンスター・ハント) 2015|大陸国産映画の興行記録を大きく塗り替えた3Dファンタジー




昨年(2015年)大陸で最もヒットして、なおかつ国産映画の興行収入記録を大きく塗り替えたのが、この映画です。

洋画も含めると、トップが 《速度与激情7(ワイルド・スピード7》) の443億円、この映画が第2位で435億円稼いだそうです。第3位が、数字的にはかなり離されるのですが 《港囧》 の294億円です。

ただし、中国映画の興行成績については、あれこれ不正も指摘されているようで、数字がどこまで本当なのか、そんなことは知りません。

ぼくは、この映画のタイトルが 《抓妖记》 だとばかり思っていました。QQの知り合いに “抓妖记を見たか?” と聞いたら、“もちろん見たけど、タイトルは 《捉妖记》 だ” と
言われてしまいました。

捉妖记 2015

かつて人と妖はいっしょの世界に住んでいました。しかし、人は妖を追い出してしまい、妖たちは人の知らない世界でこっそりと暮らしています。しかし、妖の世界ではクーデターが起こり、新妖王が誕生してしまいます。

旧妖王は殺されてしまったのでしょうが、妊娠している旧妖后は、二人のお供と逃亡の旅を続けています。この三人はついには人の世界まで逃げてきて、田舎の若者と若い女の捉妖天师(妖怪ハンター)に出会います……。

そんな物語なのですが、なんで大ヒットしたのかというと、大陸で初めてまともな3D映画作りに成功したのがこの映画だからです。

今さら、大陸映画がどれだけ悲惨な3D映画を作ってきたのかを振り返ってみても、意味はないでしょう。

ただし、アメリカでの上映は大失敗で、新聞や雑誌に袋叩きにあったそうです。“3Dのレベルが低すぎ” というのが、大方の批判内容のようです。それはそうなのですが、それよりも “欧米人にはこの物語が理解できない” というのが、本当の事情のように思います。

物語は単純なファンタジーなのですが、妖怪ものや武侠もののドラマや映画を見慣れた中国人には、あまりにも親しみやすい物語です。ヨーロッパやアメリカは、永遠に中国映画--というかアジア文化を誤解していくのでしょう。

もうすぐ(現在2016年1月28日)、《卧虎藏龙(グリーン・ディスティニー)》 の続編というか2016年版の 《卧虎藏龙》 である 《卧虎藏龙:青冥宝剑》 が公開されます。欧米人はあの退屈な映画の、いったいどこが気に入ったのでしょうか? もちろん、ぼくは中国文化を理解している--などと言っているわけではありません。


この映画では、どんな連中が登場するのか、ざっと見ていきましょう。

霍小岚白百何
駆け出しの二钱天师が霍小岚(白百何)です。なんで二钱天师なのかというと、天师は身に付けている古銭の数でランクが決まるからです。人間界にときには妖が出てきてしまうので、天师たちは妖をつかまえて金を稼いでいます。

若者が旧妖后のお供の二人(二匹)と出会って、自分の家に招くのですが、そこにいきなり小岚がやってきて妖怪二匹との戦いを繰り広げます。

ヒロイン小岚を演じているのは、白百何という女の子です。84年生まれなので、もう30を超えていて子供もいますが……。

ぼくはこの映画ではじめて白百何を見たのですが、彼女は今や大陸のナンバーワン女優と呼ぶべきなのかもしれません。昨年(2015年)は、主演した4本の興行収入が全部で30億6400万元(約569億円)と、とんでもない額を稼ぎだしたそうです。

どう見ても美人には見えないのですが、男顔負けのきっぷの良さと少女っぽい可愛らしさが同居しているところがいいのかもしれません。

同じような観点で人気のある刘诗诗がいますが、刘诗诗はあくまでブスだし、演技なんてまるでできません。

白百何は张艺谋の 《幸福时光(至福のとき)》 2000 (極めつけのロリ映画でした) のオーディションは通らなかったものの、张艺谋の青岛ビール100周年記念広告(2003)でデビューしたそうです。そのうち、白百何が出ているほかの映画でも見てみようと思います。

宋天荫井柏然
妖の世界と人の世界の境目あたりの田舎で、村の保长をしているのが宋天荫(井柏然)です。保长と言っても脚が悪いため、縫い物ばかりさせられています。いきなり、妖と天师の戦いを目撃してしまい、あげく旧妖后の胎児を自分のお腹で養うことになってしまいます。

井柏然は事情があって宋天荫を演じることになったのですが、この人は、“十大当红小鲜肉” にも選出されています。

男には特に興味はないのですが、この映画ではけっこうがんばっていたと思います。天荫がどんなふうに妖の子を生むのかについては、見て楽しんでください。

《小时代4》 2015
《捉妖记》 が大ヒットして、最もくやしかったのが台湾のアイドル柯震东でしょう。柯震东が宋天荫を演じた 《捉妖记》 は撮り終わっていたのですが、房祖名(ジャッキー・チェンの息子)と柯震东の麻薬事件が起きたため、大金を投じて井柏然が宋天荫を演じる部分を撮り直したそうです。

《捉妖记》 は去年(2015年)7月に公開されたわけですが、去年の7月には、柯震东が主役のひとりである 《小时代4》 が予定をかなり遅らせて公開されると共に、房祖名が悪役のひとりに扮する陈凯歌のろくでもないごみ映画 《道士下山》 2015 が公開されています。

しかし、《捉妖记》 は子供向けファンタジーでもあるわけで、汚点の存在は許されないということで、井柏然の宋天荫を撮り直したのでしょう。

胡巴
天荫の腹を借りて生まれてきた小妖王が胡巴です。この映画は3Dと言っても、もっぱらアニメキャラの3D造形に力を入れていて、妖が人間に化けていないときはみんなアニメキャラです。そんなわけで胡巴は最初から最後までアニメキャラです。

胡巴という名前は、映画の最後のほうで天荫がそういう名前をつけるのですが、胡巴のしぐさや行動は、ものすごく良く中国の子供(というか习近平も含めた中国人を)代表しているように思います。これも、実際に見て楽しみましょう。


霍小岚と宋天荫と胡巴がこの映画の主人公です。他のメンバーもなかなか豪華キャストなのですが、いずれも客串(ゲスト出演)として、気軽に楽しく演技を楽しんでいます。

宋天荫奶奶金燕玲
宋天荫のおばあちゃんを演じているのが金燕玲です。日本人であっても、何度かはこの人の顔を見たことがあるのでしょう。1954年生まれとのことで、もう60をちょっと超えていますが、この映画で演じているおばあちゃんほど、おばあちゃんではないはずです。

クライマックスの格闘シーンでは金燕玲のおばあちゃんも活躍します。そして “6+5は11である” とかたくなに主張するのですが、なんでそういう計算が成り立つのかも見てのお楽しみです。

《推拿》 2014 郭晓冬
宋戴天郭晓冬
なんで宋天荫にはパパがいないのかというと、パパは偉大な十钱天师だったのですが、どうやら家から逃げてしまったようです。ということで 《捉妖记2》 では、宋戴天の存在がひとつの焦点になるのでしょう。

一瞬のワンカットだけの登場ですが、宋天荫のパパ宋戴天を演じているのは郭晓冬です。この人は、どちらかというとテレビドラマで活躍している演技派です。最近の映画では、アジアの映画賞を獲りまくった娄烨(ロウ・イエ)の 《推拿》 2014 で、王大夫を演じていました。

昔の話をすれば,やはり娄烨の 《颐和园(天安門、恋人たち)》 2006 で周伟を演じていたのが郭晓冬です。


竹高曾志伟
胖莹吴君如
旧妖后を、追手から必死に守ろうとしている妖が竹高と胖莹です。妖后が死んでしまってからは、妖后の子供を無事出産させなければなりません。胡巴が生まれてからは、胡巴を守らなければなりません。

竹高を演じている曾志伟は、金燕玲と同様に香港や中国の映画を見ている人なら、何度も見たことのある人でしょう。たとえば 《越光宝盒》 2010 では孔明(诸葛亮)を演じて、《赤壁(レッドクリフ)》 2008 の金城武のパロディで、しきりに “略懂,略懂” と言っていました。

おばさん妖の胖莹は、宋天荫に “あなた、おいしそうね” とか言って登場するのですが、はじめ誰なのかわかりませんでした。なんだ、吴君如ではありませんか。昔の香港映画を見たことにある人ならば、誰でも知っているでしょう。

もちろん美人ではありませんが、軽快でパワフルな演技は映画を盛り上げてくれます。吴君如が出ている最近の映画が日本で公開されているのかどうかは知りませんが、今でもたくさんの映画で活躍しています。

罗刚姜武
五钱天师が罗刚で、小岚が竹高と胖莹を捕らえかけたところを、横取りしてしまいます。なかなか腕は立つようですが、けっこうドジで、小岚と竹高とは最後までお付き合いすることになります。

ぼくは罗刚を演じている姜武という人は、はじめて見たと思っていたのですが 《白蛇伝説》 2011 に出ていました。あと 《洗澡(こころの湯)》 1999 という映画も見たことがありました。顔はとても姜文に似ています。名前からわかるように、姜文の弟が姜武です。ドラマや映画でけっこう活躍しているようです。


妖買い取り店のママ汤唯
小岚は生まれた胡巴を、妖買い取り店にあっさり売ってしまいます。この店のママが汤唯で、汤唯と言えば日本では 《色·戒(ラスト、コーション)》 で有名なのでしょう。大陸では美女としても有名なわけですが、ぼくには、この人のいったいどこが美女なのかよくわかりません。

ぼくが見たことのある汤唯の映画は 《北京遇上西雅图北京ロマンinシアトル)》 2013 です。大陸では、けっこうヒットしました。

ぼくには、やっぱりどこが美女なのか、どこが面白いのかわかりませんでした。もちろん、刘诗诗ほどブスで演技がへたくそだとは言いません。

妖料理の神シェフ姚晨
妖料理レストランの神シェフが姚晨です。胡巴を料理しようとするのですが、煮ても焼いても胡巴はピンピンしています。

胡巴を調理することをあきらめたを彼女は、ついに胡巴の料理方法を決めます……。神シェフを演じているのは、姚晨です。

この人は、最近はドラマには出ないで映画ばかりのようです。この人の映画はたいていは面白くないのですが、微博(ミニブログ)の女王として有名です。今、調べたらフォローしている人が7896万人いました。

《风暴》 2013
姚晨が出ている 《九层妖塔》 2015 という映画が去年公開されました。これには唐嫣も出ているので、そのうち見てみましょう。唐嫣は演技が特にうまいわけではありませんが、がんばっていると思います。

でも、ぼくは姚晨という人は、顔とか演技とか、いつもどうだかなーと思ってしまいます。刘德华(アンディ・ラウ)の映画はたいていは日本でも公開されるようなので、姚晨も出ていた 《风暴》  2013 も日本で公開されたのかもしれません。

とはいえもちろん、姚晨は刘诗诗ほどバカでもブスでもありません。

郑涛保剑锋
骆冰闫妮
妖料理レストランに特別料理(胡巴)をあじわいにやってきた御一行のなかにお金持ち夫婦がいます。奥さんを演じているのが闫yán妮で、姚晨が出ているのなら闫妮が登場しても当然です。姚晨と闫妮は 《武林外传》 2006 で有名になったからです。

《武林外传》 は、目立ったドラマがないときには、今でも百度のドラマ人気ランキングに顔を出します。

このドラマは、旅館のおかみ(闫妮)とその仲間たちの物語で、いわば人情喜劇なのですが、それほど臭みもないので、気軽に楽しめる経典です。

闫妮はブスなので大陸の吴君如みたいな位置づけあたりがふさわしいかとも思うのですが、わりと怖いおばさん役が多いようにも思います。《画壁》 2011 では、怖いおばさんでした。

葛千户钟汉良
葛千户は、天师たちを仕切る天师堂のボスで、胡巴に賞金をかけます。妖にとっては、最大の敵が葛千户であるわけですが……。

演じている钟汉良は百度のスター人気ランキングでは、本日(2016年1月28日)第3位です。ついでに書いておくと、第1位は 《新笑傲江湖》 2013 などの霍建华(ウォレス・フォ)、第2位は香港の陈伟霆(《古剑奇谭》  2014の大师兄)となっています。

钟汉良は、黄晓明版 《鹿鼎記》 2008 の康熙役とかで、日本でもそれなりにおなじみかもしれません。最近では、韩寒が監督を手がけた 《后会无期(いつか、また)》 2014 にちょこっと出ていました。あ。日本でも放映されたと思いますが、钟汉良が乔峰を演じた 《新天龙八部》 2013 がありました。この 《天龙八部》 は、後半へたってしまいました。

《捉妖记》2015 国际版预告片


钟汉良-电影《捉妖记》主题曲《奇书》MV



捉妖记 制作特辑 柯震东


5分钟无节操看完《捉妖记》

2016年1月13日水曜日

道士下山 2015|王宝强、2度と陈凯歌なんかとつきあうな!



王宝强徐峥の 《港囧》 につきあわないで、こんな映画に出ていたのか--と思ってなんとなく見始めてしまったのがこの映画です。

道士下山 2015

人は時tに、見る必要のないものを見てしまうこともあります。クレジットで監督が陈凯歌(チェン・カイコー)だと知ったとき、見るのを止めようとも思ったのですが、怖いものみたさで、つい見てしまいました。

霸王别姬》 1993 について、今さら何も言う必要はないでしょう。ただ、退屈なだけの映画でした。

ただし、ヨーロッパ人のアジアに対する誤解を、日本人も真に受けてしまったのでしょう。日本では、現在においても 《霸王别姬》 が名作であるかのように語られてしまうこともあるようです。

21世紀になる手前、日本では、陈凯歌とか张艺谋(チャン・イーモウ)とか、あるいは台湾の侯孝贤(ホウ・シャオシェン)とかが、中国を代表する監督であり、彼らの作った退屈な映画が中国映画のすべてであり、退屈であるからこそ芸術であるかのように語られてしまったのは、大きな不幸だったように思います。

2016年の現在においても、日本で公開される中国映画とは、たぶん、昔から日本でも有名なじいさんばあさんたちが主演している、退屈な映画ばかりなのでしょう。


《道士下山》 は、日本でもおなじみのキャストも揃えています。たとえば、郭富城(アーロン・クオック)とか林志玲(リン・チーリン)あるいは 《一代宗师》 の张震、はたまた昔の香港映画や現代の中国映画でおなじみの林雪(ラム・シュー)を知っている人もいるかもしれません。

でも主演は王宝强です。《一代宗師》 が大陸で公開されたとき、お笑いシーンではないのに小沈阳が登場するだけで観客が大笑いするという話が話題になりました。そういう意味で、スクリーンに登場するだけで、アクション映画とか殺人犯や泥棒の役であっても、観客が笑ってしまうのが王宝强です。

房祖名(ジェイシー・チャン)
……と、映画の中身はともかく王宝强の動向くらいは書いておこうかなと思ったのですが、あまりにくだらない映画について時間を無駄にするのも面倒です。

このブログでは、王宝强関連の映画は、こんなのを見ていますが、日本でもそこそこ王宝强の出ている映画はなんらかの形でお披露目されているようです。

盲井 Blind Shaft 2003

人在囧途 2010
人再囧途之泰囧 2012
港囧 2015(王宝强は出演していない)

冰封:重生之门(アイスマン) 2014
一个人的武林(カンフー・ジャングル) 2014


2009年から始まった中国ごみ映画大賞(金扫帚奖)というのがあって、张艺谋は毎年なんらかの賞を獲得する常連中の常連です。

中国でもなんとか映画賞みたいなのはあるのですが、どれもたいしたことはないというか、きちんと映画を評価しようというものではありません。

ある映画雑誌社が主宰する中国ごみ映画大賞と、その際、同時に発表される “10のいい映画で賞” みたいなのが、国際的な権威は何もあるわけではありませんが、大陸では最もまともな映画賞と言っていいでしょう。

残念なことに陈凯歌はまだこの賞を獲得していなかったように思います(きちんと確認したわけではありませんが……)。今年(2016年[2015年公開の映画が対象])は、この映画がめでたくなんらかの賞を獲得するように思います。

郭富城、張震主演【道士下山】最新預告(7/3週五 不虛此行)


张杰-娑婆世界 MV 《道士下山》宣传曲


Monk Comes Down The Mountain (道士下山) 2015 Martial Arts Film Trailer