2013年11月27日水曜日

武林外传 2006|必見の非武侠な経典ドラマ



中国のテレビドラマについて語るのであれば

武林外传 2006

は必見でしょう。中国人ならば誰だって葵花宝典を知っているわけですが、このドラマに登場する葵花点穴手も、たくさんの人が知っています。

面白いテレビドラマがないとき、ネットでは昔のテレビドラマが人気になります。この 《武林外传》 も、そんなとき人気上位に上がってきます。

百度百科では、このドラマは暴力を肯定する武侠ものではなく、むしろ暴力を否定して、人の気持ちを大切にするドラマであるというふうな話が書かれていたこともありました。

どんな物語かというと、龙门镖局の千金が衡山派の掌门に嫁いで来るのですが、なんとだんなになるべき人は一家皆殺しにされてしまっていたのです。生き残っていたのは、だんなになるべき人の一番下の妹だけでした。

彼女はほぼ倒産している小さな旅館(客栈)を買い取り、旅籠の女将になります。この旅籠を舞台に、いわゆる人情喜劇が展開します。

いわゆる人情喜劇というのは、上位の立場からの人間の肯定になってしまいます。それが最大の欠点といえば欠点なのですが、そういうことを言っていると中国ドラマは楽しめなくなってしまいます。

登場人物を、簡単に紹介しておきましょう。

佟湘玉:旅籠=同福客栈の掌柜(女将)です。演じているのは闫妮yánnīです。このドラマは配音(吹き替え)かどうかはわかりませんが、掌柜=闫妮の発音はいかにも南方ふうになっています。

カタカナで書いてしまうと、ウオシがウオスとなります。中国のテレビドラマとか映画は配音(吹き替え)でなまり(方言)をすべて解消してしまうのですが、このドラマでは方言を強調しています。

このおばさんは、どこかで会ったことがあります。ああ。そうそう。《画皮》 の正式な続編というべき 《画壁》 における、あの憎たらしい咕咕です。

白展堂(沙溢):江湖のチンピラ泥棒で、葵花点穴手を駆使します。佟湘玉の旦那のふりをしたのが縁で、江湖を引退して、同福客栈に居ついてお仕事をしています。

葵花点穴手は、もちろん金庸-笑傲江湖-葵花宝典由来のネーミングです。このドラマの登場人物たちは、とても金庸ドラマに詳しく、杨过と小龙女の物語だって知っています。

郭芙蓉(沙溢):この名前は、《神雕侠侣》 の黄蓉+郭芙と解釈しておくべきでしょう。パパは一代大侠なのですが、同福客栈が黑店であると認識して、同福客栈を襲撃します。しかし、同福客栈のみんなにいじめられて、同福客栈で働くことになります。

吕秀才(喻恩泰):科挙を目指す勉強ばかりしているため、家業の客栈には客がさっぱり来ません。佟湘玉に客栈を売り渡します。郭芙蓉に惚れてしまい、ちょっかいを出すのですが、とりあえずは郭芙蓉にはその気がありません。

李大嘴(姜超):同福客栈の板前さんです。何かの縁で同福客栈にやって来たわけではなく、小贝が一声「コックさん。来い!」と叫ぶや、やって来たのでした。

莫小贝(王莎莎):佟湘玉の結婚相手である衡山派掌门の莫小宝の妹です。つまり、小贝にとっては佟湘玉は嫂子ということになります。子供なので学校に通っていますが、学校では八大派们の盟主です。

邢育森(范明)と燕小六(肖剑):時代劇には欠かせない捕快(岡っ引き)コンビです。中国の岡っ引きなので、ほとんど仕事はせずに、同福客栈に入り浸っています。

祝无双(倪虹洁):ぼくは第20集くらいまでしか見ていないので、まだこの祝无双には出会っていません。葵花派きっての腕達者のようで、恋多き女なんだけど、いずれも成就しない役どころのようです。

《武林外传》 の映画版もあります。小贝以外は、みんなそれぞれの役で出ています。

武林外传(电影版) 2011

佟湘玉と白展堂、吕秀才と郭芙蓉はすでに幸せな夫婦になっているわけですが、この映画はろくでもありません。

テレビドラマの 《武林外传》 は同福客栈とそのちょこっと周辺だけのセットの中ですべてのドラマが展開します。しかし、映画版 《武林外传》 は、同福客栈の外部に出かけてしまったのが失敗の最大の理由でしょう。

《武林外传》成幸福魔咒 四位女演员离婚分手

2013年11月10日日曜日

狄仁杰之神都龙王 2013 -- ツイ・ハークのB級怪獣映画(angelababy!!)



今年(2013年)の9月末、ツイ・ハークの新作が公開されました。

狄仁杰之神都龙王 2013

この映画の公開の直前には、梁朝伟が小三を妊娠させたというニュースが流れました。小三というのは小学三年生のことではなく、中国語で言うと第三者です。日本語で言うと愛人でしょうか。

東スポふうのでたらめ記事なわけですが、なんでこんなニュースが流れたのかというと、この 《狄仁杰之神都龙王》 には、梁朝伟の奥様である刘嘉玲が武则天として客串しているからです。

ツイ・ハーク(徐克)の映画って

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ

の三部作以外は、どれも面白くありません。余分なことを語りすぎるからです。それとは関係はないかもしれませんが、李连杰の映画もこの映画以外に面白いのはありません。

そういうわけでなんの期待もなくだら~っとこの映画をちょっと見てみました。だって、angelababyが出ているからです。

ありゃま! これ、けっこう面白い。

ツイ・ハークの映画って、B級映画をあたかも大作のようであるかのように語ってしまうのが最大の欠点のように思います。ところが、おお! この映画ははじめから終わりまで、きちんとB級しているではありませんか!

しかも、モンスター映画というか、怪獣映画です。この人は、こういうのがけっこう好きなんです。


最近の四小花旦の一人はangelababyである--というような記事をどこかで読んだように思います。特に文句はありません。きれいな女の子がきれいであれば、それは素敵なことです。

あと、冯绍峰。この人は、これからどうなっていくんだろう? 杨幂が冯绍峰をからかっていたように、もしかしたら女の子にはもてないタイプなのかもしれない。

男から見れば、《王的女人》 の明道よりはるかにいいと思うんだけど、なんでこんな話になるのかというと、それは省略。

《狄仁杰之神都龙王》终极预告片

20130830 鲁豫有约 解密《狄仁杰》

2013年11月7日木曜日

重口味 2013 -- お気軽なギニーピッグ(ハードコア)あるいは香港映画の現在



今年(2013年)の夏 《重口味》 という香港映画が上映されました。重はzhòngじゃなくてchóngです。

重口味 2013

どんな味わいなのかというと、簡単に言うとハードコアというかエロ・グロ・ナンセンスというような意味です。だったらchóngじゃなくてzhòngのほうがいいような気もしますが、言葉なんだから仕方ありません。

中国人留学生の女の子とご飯を食べながらおしゃべりしていたら、冗談で重口味と言っていました。いつ頃から使われはじめた言葉なのかは知りませんが、現在では冗談であれば気軽に使ってもOKな言葉のようです。

この映画は、香港のわりと若手な監督三人によるオムニバスで、第37回香港国際映画祭で上映されたということです。

大して評判になったわけでもないんでしょうが、豆瓣で「毒菇求爱不错」なんて言っている人もいます。《毒菇求爱》 というのは3つのお話のうちの2つ目のタイトルです。うふふ。


最初のタイトルが 《惊哗春梦》 です。香港に旅行したことのある人は、住居用の建物にはどれも鉄格子みたいなドアがあることを知っているでしょう。旅行者は、鉄格子の向こうの世界には入れません。

《重口味》 という映画のテーマは“黄、毒、賭”で、まずは“黄”です。この物語は、红灯区(色街)のお話なんだけど、香港に红灯区なんてあるの? ぼくは知りません。

二人の学生が住むことになった建物は、風俗嬢ばかりが住んでいます--というか自分の部屋でお仕事をしています。ドアには店長推薦なんて書かれているので、お店でもあるのかもしれません。これが香港の風俗のしくみ? でも、あの鉄格子の中に客はどうやって入るんだろう。

どんなお話なのかというと、二人の男子学生が風俗嬢たちの中に闖入したことによって、ある種の共同体みたいなのが形成されていき……しかし……というわけで、ここからはドタバタのアクションふうの展開になっていきます。


第二話のタイトルが 《毒菇求爱》 で、今度は“毒”がテーマです。タイトルからもわかるようにラブストーリーです。

あはは! もちろん、独孤求败とは金庸ドラマのあちこちで登場する伝説の人物です。あまりに強くなりすぎて「誰か、俺を負かしてくれ」ということで、こう名乗っているわけです。

黄药师によって桃花岛に幽閉されている老顽童(周伯通)は、亀がお友達です。彼は、亀に独孤求败という名前をつけて、毎日、亀と遊んでいます。そういうわけで、《毒菇求爱》 の主人公である阿杰は、ふられた元彼女から亀をもらいます。

阿杰が乗っているのがピンクの車で、この車は三編ともに登場します。阿杰は麻薬の運び屋です。この車で、亀といっしょに毒菇という麻薬を客に配っています。

運び屋というのは、映画における永遠のテーマのひとつでしょう。たとえば《苏州河》。日本語のタイトルは「ふたりの人魚」だったと思います。人魚と言えば

下水道(的)美人鱼
ギニーピッグ マンホールの中の人魚

という日本のビデオがあります。日本では、熱心なホラーファンならば知らない人はいないのでしょう。こういうのが、それこそ重口味ということでしょう。

これは、中国でもけっこうカルトな映画として有名なようです。特にホラーというかその手が好きというわけではない90後たちは、けっこうこれを知っています。ただし、現在は視聴禁止だそうです。聞いた話なので、本当かどうかは知りません。

というわけで 《毒菇求爱》 は、ロードムービー的なラブストーリーです。阿杰は、ある女の子と出会います。阿杰はママのお誕生日に、彼女に恋人のふりをして、いっしょにママの誕生日を祝ってくれと頼みます。ママのお誕生日のシーンは、けっこういいと思います。

あと、女の子が亀をマイクというかスマホに見立ててしゃべるシーンも悪くありませんでした。



第三話が 《有杀有赔》 で、“黄、毒、賭”の“賭”に相当します。

大陸では制服の女子高生はいません。香港で制服の女子高生に会いたければ、湾仔のマクドナルドに行きましょう。ただし、九龙の人々からすると、香港島は差別すべき場所のようです。

平場の香港競馬というのはすべてハンデ戦で、1番枠がトップハンデで、大外が最軽量です。だから、1が来るとけっこういい配当になります。シャティンでもハッピバレーでもマカオ競馬場でも、これは同じです。

カジノ。これが、日本人には大きな壁になってしまいました。マカオのカジノは、お金持ちの中国人で賑わっていて、札束が乱れ飛んでいます。もはや、貧乏な日本人が小銭でちょっと遊ぼう--というような場所ではありません。

このお話も悪くはなかったように思いますが、どんな内容だったか忘れてしまいました。実際に見て、楽しんでください。


この《重口味》は香港映画です。「香港映画は死んだ」「いや香港映画は死んでいない」みたいなことを、ときどき目にします。昔、香港映画というのはあったわけだけど、今はもうない--そんなのは当たり前のことでしょう。

周星驰の 《西游·降魔篇》 だって、香港映画じゃなくて大陸映画です。甄子丹のろくでもない 《特殊身份》 だって中国映画です。つまり、日本でも知られているようなスターが出ている映画は、香港映画ではありません。

大陸、香港とジャンル分けにこだわるわけではありませんが、香港の大スターが大陸資本の映画に出るとき、ただそれだけで香港映画ではなくなってしまうように感じます。それだけで何かを売ってしまった--そんな感じ。

じゃあ、香港映画はどこにもないのでしょうか? 実はそうじゃないように思います。たとえば 《志明与春娇》。これは香港でしか語ることのできない烟民の物語でした。でも続編の 《春娇与志明》 は、香港映画とはなんの関係もありません。舞台だって北京でした。

ときたまポコンと、香港映画が登場するような気がします。《重口味》 もそんな香港映画のひとつのように思います。たとえば  《热浪球爱战》 2011 は大好きです。

映画ではなくてテレビドラマはどうでしょうか。去年の 《回到三国》 は、毎晩見るのがとても楽しみでした。ださいセット、スケール感のなさなど、お笑い香港テレビドラマの伝統を受け継いでいました。

ただし、香港のテレビドラマが今でもいきいきしているのかというとそういうわけではなく、こちらもときたまポコンと面白いのが出てくるといった感じでしょう。

電影《重口味》激情四射 三級國際版首發預告

2013年11月2日土曜日

特殊身份 2013 -- 突っ込みどころもないガマガエルな甄子丹



今年(2013年)の10月18日に甄子丹の《特殊身份》 が公開された。やっぱり甄子丹ものはどか~んと人気になります。

特殊身份 2013

甄子丹が警察の特殊捜査員として活躍するアクションもので、雰囲気は70年代くらいのはみ出し刑事ものっていう感じ。それって、あまりに時代錯誤ではありませんか?

がまんして半分くらいまで見たけど、だめでした。見るのやめました。

ぼくは甄子丹のがまがえる顔が苦手です。演技もとっても下手くそでしょ。でも、この人は人気があります。なんでなんでしょ。ぼくにはわかりません。

ただし、去年(2012年)のお正月映画《八星抱喜》での、甄子丹と吴君如が演じた売れない中年ロック歌手は好きです。

おまけにヒロインは景甜です。この子は《战国》で、ぼくたちをとことんがっかりさせてくれました。霍建华の《超时空救兵》だって、ヒロインが景甜じゃなかったら、もっと面白かったように思います。

中国で瞬間的にヒットしたからといって、中国の人がこの映画を見て喜んでいるわけではありません。豆瓣の意見をいくつか紹介してみましょう。

子丹不哭,站起来撸!
(子丹、泣くんじゃない。再び立ち上がってくれ!)

以前的甄子丹再也回不来了
(かつての甄子丹は永遠に戻って来ない)

有什么可吐槽的
(突っ込みどころさえない)

深圳观光
(シンセン観光)

烂就一个字
(腐ってる--この言葉につきる)

做人别太甄子丹,特殊身份别去看!
(人ならば甄子丹になるな。見にいくな!)

“特殊”看你妹啊
(“特殊”なくだらなさである)

この映画はあれこれ難産だったようで、はじめは赵文卓が共演するはずだったのですが、赵文卓が降りてしまったようです。ああ。赵文卓が出ていれば、ぼくはこんな映画見なかったのに。

それでも、ぼくは《大闹天宫》には、それなりに期待はしています。孙悟空(甄子丹)vs 玉帝(周润发)の図式って、やっぱり見たいでしょ。いったいいつになったら、このださださおやじたちのお笑いを見られるんだろ?

今年の夏か秋くらいには公開されるような話だったのが、百度百科によると来年(2014年)の1月31日公開予定となっています。

【HD】楊坤-我沒你想的那麼堅強MV


電影【特殊身份 Special ID】預告片