2012年7月11日水曜日

《轩辕剑》 2012 (1)- 胡歌、劉詩詩で失敗する





2012年7月6日、テレビドラマ《轩辕剑之天之痕》(全35集)の放映がはじまりました。ネットゲームが原作である《仙剑》系列のドラマで、もちろん胡歌が出ています。

宣伝でもあるのでしょうが、放送直前には“放送禁止か?”という噂も流れて、みんなやきもきさせられました。で、どうなったのかというと、当初は金曜と土曜の晩に3集づつ放映されるはずだったのが、2集づつになってしまったのでした。

放送が始まるや、すぐに、特撮というかCGというかアクションシーンの出来の悪さが指摘されていました。それは事実なのですが、テレビドラマにそういう問題を期待しなくてもいいようにも思います。

とはいえ、これまでの《仙剑》に比べて、躍動感とか爆発力とか、そういうのが欠如しているのは明らかで、ぼくは、ちょうど同じ時期に放映されてた穿越(タイムトリップ)ものドラマ《回到三国》を見るほうが楽しみになってしまいました。

仙剑》は刘亦菲がヒロイン、《仙剑3》は杨幂がヒロインで、とてもうれしかったわけです。しかし、刘亦菲も杨幂も女優として偉くなってしまったので、刘亦菲は映画ばかりで、杨幂も活躍の場が映画よりになってきたようです。

そんなわけで、中国のテレビドラマにおけるヒロインの代表は、今や刘诗诗になってしまったようです。このドラマのヒロインも刘诗诗です。2013年7月には、《步步惊心2》が放映されるという発表もありました。四阿哥、八阿哥などの面々が現代にやってくるようです。

ぼくは、刘诗诗がとても苦手です(《步步惊心 -- 刘诗诗はブスである》参照)。そんなわけで、このドラマを見るつもりはありませんでした。しかし、気付いてみると、このドラマには古力娜扎という女の子が出ているではありませんか。このドラマがデビュー作のようです。

美女艺考生—古力娜扎(一不小心爱上你)


古力娜扎は、1992年生まれのウルムチ出身のウィグル族とのことです。わあ! 刘亦菲や杨幂より美女かもしれません。ぼくは、古力娜扎を見るために、このドラマを見ることを決心しました。

なお、もうひとりのヒロインは《仙剑3》に引き続き唐嫣です。
ヒーローのほうはどうなっているのかというと、胡歌がちょっと情けないヒーローを演じるのではなく、古力娜扎同様、これがほぼデビュー作である蒋劲夫が、ちょっと情けないヒーローを演じています。胡歌は一転して、性格が暗めのドレッドヘアなヒーロー像みたいです。

※こいつらの歴史的な背景については、《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族 で、わかる範囲でまとめておきました。

お約束のお楽しみと言えば、本格的なストーリーが展開する前に、ゾンビ事件が発生し、まずはこれを解決しなければならないことです--というわけで、刘诗诗はこのドラマではじめて“お笑い”を演じたのかもしれません--よく知りませんが……。

このシリーズには、もうひとつお約束があります。女娲ジョカ)にまつわる物語です。古力娜扎が演じる于小雪という女の子が、女娲の生まれ変わりのようです。

ぼくたちは、《仙剑》で刘亦菲の下半身が蛇になってしまった姿を見て大笑いできたわけですが、古力娜扎がどんな女娲像を演じてくれるのか期待したいと思います。

--と、そんなつもりで途中までは難儀しながら見てきたのですが、これなあ……なんで、こんなに、はらはらどきどきのないドラマになってしまったのでしょうか。

もちろん、刘诗诗がヒロインだからです。

《轩辕剑之天之痕》主题曲官方MV



[《轩辕剑》についてのブログ]

《轩辕剑》 2012(1) - 胡歌、劉詩詩で失敗する
《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族
《轩辕剑》 2012(3) - 刘诗诗、“金鹰女神”獲得

参考:宮廷女官若曦(步步惊心)-劉詩詩はブスである
参考:仙剑奇侠传三(1) “哈哈哈” 杨幂+胡歌
参考:仙剑奇侠传三(2) キャラクタとストーリー

2012年7月9日月曜日

《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族


轩辕剑》は、漢滅亡後の400年にわたる中国分裂時代を、ようやく隋が統一した時代を背景にしています。そのへんの歴史を、おおざっぱに見てみます。

拓跋族とか宇文なんとかという人とか、あるいは独孤なんとかという人について、よりなじみやすくなるかもしれません。

間違いもあると思いますが、詳細は自分で調べてください。

中国の歴史区分を表す言葉のひとつに、“魏晋南北朝時代”があります。後漢末の混乱から、隋が中国を統一するまでの400年くらいの期間を指します。さらにその内訳が、三国時代五胡十六国時代南北朝時代ということになります。

魏・呉・蜀が中国を三分したのは三国志で有名なわけで、これが三国時代です。瞬間的に晋が中国を統一しますが、すぐに崩壊します。次の五胡十六国時代は華北における異民族の国家乱立の時代であり、漢民族は華南に東晋を立てます。

次の南北朝時代において、一貫して華北を制するのが鮮卑拓跋族です。拓跋族匈奴をさらなる北に追いやって、ついには華北を制圧して北魏を立てます。拓跋族が支配する華北の国家はあれこれ変遷するのですが、華南の漢民族国家もあれこれ変遷します--というわけで、この時代を南北朝と言います。

また、三国時代における華南の漢民族政権である呉と東晋、南北朝時代における華南の漢民族政権、宋・斉・梁・陳をもって、六朝(時代)とも呼びます。

鮮卑の拓跋族が立てた北魏は、やがて東魏西魏に分裂します。東魏が拓跋族の高氏の国家であり、西魏が拓跋族の宇文氏の国家です(つまり、《轩辕剑》において胡歌が演じる宇文拓は、姓が宇文、名が拓ということになります)。

西魏の実権を握っているのが、宇文泰という人です。宇文泰自身は匈奴系の人らしいのですが、鮮卑拓跋族と連合したようです。

西魏の宇文泰が作った軍事システムが、八柱十二国大将軍です。8人の大将軍と12の将軍のもとに、さらに24の将軍が構成されます。八柱十二国大将軍は、ほとんどは武川鎮出身者で構成されるため、武川鎮軍閥とか、関隴集団(関隴貴族集団)と呼ばれます。

やがて、政権は北周へと移っていくわけですが、いずれの創業者も、関隴集団出身者が担うことになります。

宇文泰が死んだ後、宇文一族は傀儡皇帝を立てるのではなく、一族のものを皇帝とする国家を立てます。これが北周で、まず宇文覚が帝位につきます。

しかし、実権は宇文泰の甥・宇文護が握っており、宇文氏同士の勢力争いが続きます。こうした中、宇文氏の外戚・楊堅が北周の実権を把握していきます。

楊堅は北周の権力を奪取して、隋朝を創業します。もちろん、この人も出自は武川鎮軍団です。北周時代から南朝攻略が進められていたわけですが、文帝(楊堅)は、次男の楊広と将軍・杨素に大軍を率いさせ、当時の南朝(最後の南朝)・を討伐させます。

さて、楊堅(文帝)の皇后が独孤伽羅独孤皇后)で、独孤皇后のパパが独孤信です。独孤信は匈奴系の人のようですが、宇文泰のもとで活躍した人です。

独孤信は派手な衣装を好んだ武将だそうですが、時代の流れを見る目は確かだったようで、娘を楊氏や李氏に嫁がせます。

そういうわけで、独孤伽羅は楊堅の奥さんになります。このとき、彼女は楊堅に、自分以外の女の子を産まないという誓いを立てさせます。

独孤皇后は、実際には楊堅が何人かの側室を持つことを許したようです。しかし、長男である皇太子・楊勇の女好きは許せなかったようで、次男の楊広を隋朝の二代目皇帝とします。これが煬帝で、この時代が《轩辕剑》の舞台となっています。

話は逸れますが、“独孤”といえば金庸(ドラマ)ファンにとっておなじみなのが“独孤求敗”でしょう。読んだことはありませんが、たぶん、小説においても実体は登場しないように思います。

《孤独求败》
テレビドラマ《笑傲江湖》 2000 においては、令狐冲がおしおきで洞窟暮らしをしているとき、独孤求敗の亡霊が令狐冲に武術を授けます。《射雕英雄传》 2003 では、周伯通が桃花島に幽閉されている際、彼の遊び相手である亀に名づけた名前が独孤求敗です。《神雕侠侣》 2006 では、大わし=神雕が杨过に独孤求敗の武術を伝授します。

独孤信とは中国において、むちゃくちゃ強かった武将のひとりとして語り継がれている人のひとりなのかもしれません。

さて、煬帝は、一般には暴君として語られるようです。大昔から、北と南を結ぶ大運河が進められていたのですが、楊堅はこれに本格的に着手して、煬帝がこれを引き継ぎ、ついには完成させます。しかし、この土木事業と高句麗遠征の失敗は、民衆に大きな負担を与えます。

この結果、大反乱が起こります。この混乱を制するのが、隋朝に仕えていた李淵(唐の初代皇帝)です。李淵も、出自は武川鎮軍閥です。李淵が唐朝を創業するにあたって大活躍したのが、その子である李世民(唐の二代目皇帝=太宗)です。

李世民(太宗)
李世民は、ライバルである兄弟を殺して皇帝の地位を獲得します。とはいえ、もし彼がライバルである兄弟を倒していなければ、彼自身が殺されているわけです。

そんなわけで、隋-唐とは漢民族にとっては異民族である鮮卑系の国家であるということにもなるわけですが、正史においては彼らは漢民族として位置づけられているようです--《轩辕剑》においては、正史にのっとた理解のしかたをしているように思えます。

--こうして、隋朝成立前後の歴史をざっと振り返ると、《轩辕剑》のキャラクタたちがほぼ揃います。

たぶん、隋朝を創業した楊堅(文帝)によって奪われた北周の皇子が宇文拓、独孤宁珂は独孤皇后(伽羅)の娘のように思われます。杨素は、そのまま杨素です。

もちろん、陈靖仇は陈国の皇子です。ドラマでは、パパの後主は杨素によって殺されてしまったように思います。しかし歴史的にはとても軟弱な皇帝として位置づけられているようで、楊広と杨素に攻められたときあっさりと降伏して、長安で余生をまっとうしたとのことです。

吕承志は、如烟の夢の中では皇帝になっています。彼は、如烟に対して、夢に閉じ込められたおかげで自分の目標がはっきりしたと言います。つまり、吕承志とは唐の二代目皇帝・李世民(太宗)ということになります。

問題は、张烈や玉儿たちの拓跋族です。北周・隋・唐も鮮卑系拓跋族が創業した国家であるといえるわけですが、彼らはどんな拓跋族なのでしょうか。

ドラマのなかで、剑痴と陈靖仇が拓跋について語るシーンがあって、100年前に北魏を宇文氏が立て、北魏滅亡後、拓跋族は流浪の民となってしまったようなことを語ります。

北魏が華北を制すると、中国における異民族王朝の歴史の法則にしたがって、拓跋族はどんどん漢化していきます。西魏や北周では、中国風に改めた名前を、本来の拓跋の名前に改めるなど、本来の拓跋への回帰も見られるわけですが、とはいえ漢化されてはいるわけです。

そういうわけで、张烈や玉儿たちの拓跋族たちも、中国語がとても上手なのでしょう。

なお、拓跋は辞書的にはtuò báなのですが、ドラマではtà báと発音しています。しかし、宇文拓のほうの拓はtuòと発音されています。

《轩辕剑之天之痕》插曲指紋


[《轩辕剑》についてのブログ]

《轩辕剑》 2012(1) - 胡歌、劉詩詩で失敗する
《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族
《轩辕剑》 2012(3) - 刘诗诗、“金鹰女神”獲得

参考:宮廷女官若曦(步步惊心)-劉詩詩はブスである
参考:仙剑奇侠传三(1) “哈哈哈” 杨幂+胡歌
参考:仙剑奇侠传三(2) キャラクタとストーリー

《轩辕剑》 2012(3) - 刘诗诗、“金鹰女神”獲得


まずは、このビデオを見てください。

今日主题 刘诗诗让杨幂无力争女神


今年(2012年)の金鹰女神を誰が獲得するのかが話題になっています。

金鹰女神というのは、ネット投票によって二年に一度 “女神” を決める賞です。8月1日から8月24日までの投票で、女神が決まりました。ビデオを見ればわかるように、刘诗诗杨幂唐嫣郑爽佟亚丽の争いになったようです。

結果は刘诗诗がダントツのトップ、二位が唐嫣でした。8月といえば、ちょうどテレビドラマ 《轩辕剑》   が放映されていて、このドラマでは刘诗诗がヒロイン、唐嫣は第二ヒロインみたいな扱いでした。

《轩辕剑》 は7月から放送がはじまったのですが、当初は金曜と土曜に3集ずつ放映されるとアナウンスされていたのですが、どういうわけか、3集ずつが2集ずつになってしまったのでした。

この措置ってもしかしたら、  《轩辕剑》 の後半があまりに出来がよくないことが明らかになるのを遅らせるのが目的であって、なんとしても刘诗诗に “金鹰女神” を獲得させるためのはからいだったのかもしれません。

それはそれで、胡歌刘诗诗に対する暖かいおもいやりなのでしょう。 ただし 《轩辕剑》 において、胡歌が相手にするのは唐嫣と古力娜扎であって刘诗诗ではありません。これは、そのまま胡歌の欲望であり、 《轩辕剑》 の大失敗の理由でもあります。

刘诗诗の“金鹰女神”授賞式の模様はこんな具合です。

"金鹰女神"刘诗诗 ❖ 第9届金鹰电视艺术节开幕晚会


“金鹰女神”って何? という前に“金鹰节”って何? という問題があるわけです。金鹰网というのがあって、ここが2000年からはじめたネット投票によるテレビドラマを表彰する賞のようです。

2000年から2004年までは毎年開催されていたようです。しかし、まだ“金鹰女神”賞は存在しません。2006年から“金鹰节”は2年に一度開催されることになり、ここから“金鹰节”のメインイベントは“金鹰女神”賞になったみたいです。

というわけで、2006年第6回“金鹰节”において、第1回“金鹰女神”が創設されます。この年、放映されたテレビドラマが 《神雕侠侣》 です。もちろん、“金鹰女神”を獲得するのは刘亦菲です。

刘亦菲の出現は大事件だったわけで、“金鹰女神”賞とは刘亦菲のために作られた賞と言ってもいいように思います。

2006"金鹰女神刘亦菲新闻报导


[《轩辕剑》についてのブログ]

《轩辕剑》 2012(1) - 胡歌、劉詩詩で失敗する
《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族
《轩辕剑》 2012(3) - 刘诗诗、“金鹰女神”獲得

参考:宮廷女官若曦(步步惊心)-劉詩詩はブスである
参考:仙剑奇侠传三(1) “哈哈哈” 杨幂+胡歌
参考:仙剑奇侠传三(2) キャラクタとストーリー

2012年7月8日日曜日

碧血剑 2007/1993 --金庸ドラマとはお笑いである



日本の金庸ドラマファンにとってなじみ深い《碧血剑》とは、日本でテレビ放映もされ、DVDも発売されている大陸版のテレビドラマ

碧血剑》 2007

だと思います。

しかし、《碧血剑》 2007 とは、なんとも気合の入っていないドラマで、途中で見るのをやめようかなとも思いました。あまりに軽すぎるのです。

《射鵰英雄傳》や《神鵰侠侶》、《笑傲江湖》では、主人公は最初から強いわけではなく、あれこれな出会いとかがあって、だんだんと強くなっていきます。ところが、《碧血剑》では、袁承志ははじめから最後までずっと強いのです。

でも、美女、夏青青(黄圣依)につられて見ていると、だんだん面白くなってきます。

このドラマは力を入れて見てはいけないのです。力を抜いてのんきに見ているとけっこう笑えます。

《碧血剑》 2007 については、日本のWebにも多くの情報があることでしょう。ここでは、違う《碧血剑》を見てみたいと思います。

なお、このブログでは、黄圣依の出ている映画は、こんなのを見ています。

白蛇传说(白蛇伝説) 2011
见习黑玫瑰 2004 (出水芙蓉 2007)

さて、これから見るのはこの映画です。

碧血剑》 1993 香港


メンバー構成は、こんな感じです。

袁承志--元彪
归辛树--吴孟达
归二娘--马海伦
阿九--张敏
温堡主--徐锦江
温仪--李美凤
夏雪宜(金蛇郎君)--李修贤
夏青青--叶全真
何铁手--袁咏仪
何红药--王玉环

阿九はいますが、阿九の師匠程青竹は登場しません。归辛树が、阿九のお師匠さんだからです。《碧血剑》 2007 では、華山派の归辛树と归二娘の夫婦は、重病の赤ちゃんを救う手だてを探すため江湖をさすらっていました。

このドラマでの归辛树は女盗賊団の首領のようで、つまりは、程青竹+归辛树というイメージなのでしょう。归辛树を演じているのが吴孟达で、吴孟达と张敏の阿九のお笑い師弟コンビが登場するや、ドラマは一気に喜劇化していきます。

袁承志に負けた青青が泣きじゃくって、袁承志が青青をなぐさめると、青青が袁承志の腕に噛みつくシーンとか、归二娘が五毒教に負けて泣きじゃくって、それを吴孟达がなぐさめるシーンとか、とてもいいと思います。

江湖の腕自慢たちは、温家堡(温家の館:温家が支配する街)に続々と集まってきます。広東語版ではどうなるのかわかりませんが、普通話吹き替え版では、温家堡の発音は温家宝と同じです。

もちろん、温家堡には五毒教の連中もやってきます。何铁手と何红药の関係とか、何铁手と袁承志の関係とか、何铁手と阿九の関係とかも、お笑いどころです。

さて、青青はどうしたのでしょう。はじめのほうで武功を披露するものの、あとはずっと、袁承志をしたうおしとやかな温家堡のお嬢様というイメージです。

こんなふうに書いていると、この映画がまっとうに展開していくみたいな感じにになってしまいますが、実際には、展開が省略されすぎているため、さっぱりわけがわかりません。

それでも《碧血剑》 2007 を2、3回見た人にとっては、だいたいは誰が誰だかわかるので、2、3回見ればなんとなく大筋は把握できると思います。ぼくは4、5回見て、ようやく大笑いできるようになりました。

このドラマは、単なるお笑いだけではなく、たとえば阿九が归辛树の弟子であるといったような、掟破りの改编がたくさん散りばめられているので、“え! なんでそうなるの?”と、もっと笑えるわけです。

もうひとつのお楽しみは、《碧血剑》以外の金庸ドラマ由来のシーン探しです。これは、特にこの映画だからというわけではなく、金庸もの映画における常套手段です。たとえば、何も見なかったことにするため、自分で自分の目をつぶすシーンとか--あれこれ出会えると思います。

2012年6月25日月曜日

关云长(三国志英傑伝) - ガマガエルな甄子丹




第三届金扫帚奖(第3回中国ごみ映画大賞--中国ラジー賞)で作品賞に輝いたのが、この《关云长》と《战国》、《杨门女将之军令如山》です。

ぼくたちは甄子丹ドニー・イェン)のガマガエル顔を見るほどひまではありません。たぶん、死ぬほど退屈なことでしょう。でも、孙俪スン・リー)が出ているので見ちゃいました。

关云长(関雲長)というのは关羽(関羽)のことで、おなじみ三国志のヒーローのひとりです。ぼくはいつも、刘备劉備)-关羽関羽)と刘邦劉邦)-项羽項羽)が、どっちがどっちだったか、誰が誰だったかわからなくなってしまいます。だって、なんとなく名前が似ているからです。

もちろん、关云长を演じるのが甄子丹です。关云长は一時、曹操曹操)の捕虜になるのですが、この映画はそのときのエピソードを描いています。曹操を演じるのが姜文チアン・ウェン)です。

曹操は关云长を自陣に取り込もうとあれこれ画策するのですが、关云长は承知しません。あきらめた曹操は、关云长に刘备の元へ帰ることを許します。关云长が帰るためには5つの関所を通過しなければならないのですが、曹操はすべての関所の通過を保証します。

ところが、関所を通ろうとするたびに、关云长は襲撃されてしまいます。これが“过五关斩六将(5つの関所を通り、6人の将軍を斬る)”というエピソードなんだそうです。

じゃあ、孙俪はどうしたのよ? --と言うと、孙俪が演じるのは绮兰という、刘备のお妾さんになる予定の少女です。彼女も关云长といっしょに捕虜になっていて、关云长は绮兰を連れて、5つの関所を通過しようとするたびに、绮兰を守りつつ、敵と戦うことになるわけです。

しかし、あらま。なんだか、孙俪がいたっていなくたって、関係ないじゃありませんか。

2012年6月22日金曜日

武状元苏乞儿 1992 --杨幂、デビュー!



科挙が学問での選抜試験ならば、武挙とは武術の選抜試験みたいなことのようです。科挙でのナンバーワンの称号が状元であり、武挙でのナンバーワンが武状元ということになるみたいです。

武状元苏乞儿》 1992

の物語の構図は、清朝末、皇帝に取り入っている天理教(の教主赵无极)と、これに対立する丐帮たちです。丐帮は天理教の教主を殺し、天理教は丐帮の帮主を殺し、帮主を失った丐帮は統制が乱れています。

丐帮とは、武術をたしなむ乞食の相互扶助組織みたいなものですが、特に金庸が発明したものではなく、武侠小説ではおなじみの組織のようです。

とはいえ、ぼくたちにとってとりわけなじみ深い丐帮とは、金庸(原作のテレビドラマ)の《射雕英雄伝》と《神雕侠侶》の丐帮でしょう。そんなわけで、この映画には“洪七公”とか“打狗棒法”とか“降龙十八掌”などの言葉がぽんぽん出てきます。

丐帮と天理教の対立に、周星驰(苏灿càn)と吴孟达(苏灿のパパ)が絡みます。大役人の息子苏灿は、娼館で、如霜(张敏)に一目ぼれするのですが、如霜ははまったく気乗りしないようで、武挙に合格したなら、連絡してねみたいなことを言います。

こうして苏灿は武挙にチャレンジして、見事一等になるのですが、文字が書けないことがばれて一家の財産を没収されてしまい、パパと息子はしかたなしに乞食暮らしをすることになります。

如霜とその妹は、(丐帮には4大長老がいるのですがそのなかの一人の)長老の娘で、赵无极を狙うために娼館に潜り込んでいたのでした--こうなれば、あとの展開はだいたい見えてきます。

苏灿は、後に苏乞儿と呼ばれるわけですが、実在したのかどうかよくわかりませんが、“酔拳”の創始者であり、“广东十虎”の一人だそうです(映画の中では“睡梦罗汉拳”が“酔拳”の一種に相当するようです)。

2010年赵文卓版《苏乞儿》
“广东十虎”の中には、《ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ》の主人公黄飞鸿のパパ黄麒英も含まれています。

清朝はアヘン戦争以降、先進国に蹂躙されるとはいえ、广东一帯は経済的には発展するわけで、そのぶん、武術の達人やら秘密結社やらが集まってきたのでしょう。

この映画の監督は、陈嘉上という人です。どっかで見かけたことのある人のような気がします。ああ。《画皮》 2008 と《画壁》 2011 の監督でした。

この人は、何か余分なものを映画のなかに取り入れてしまう人のように思います。《画壁》 2011 がそのいい例でしょう。軽いだけのお笑い映画にしていれば、《画壁》は傑作になったような気もします。

《武状元苏乞儿》は、基本的にはただのお笑い映画なわけですが、そこにちょこっと悲劇な色合いだとか、武侠的なおまけが加えられているため、中国人も日本人も、なんだかこの映画を誤解して、まじめに取り扱ってしまいがちなようです。

もうすぐ(2012年7月12日)、この監督が監督した《四大名捕》という映画が公開されます。刘亦菲が出ているのでいずれ見ようとは思いますが、刘亦菲が出ているので面白くなくてもしかたないでしょ。

そういうあれこれとは関係なく、なんでこの《武状元苏乞儿》が経典のひとつに数えられているのかというと、この映画で杨幂がデビューしているからです(正しく言うと違うのかもしれませんが、まあいいでしょ)。1986年生まれの杨幂は、この映画に登場したとき、もちろん5、6歳の子供です。

映画の最後で、ちょこっと映るだけなので見落とさないようにしてください。うろうろするだけなのですが、やっぱり杨幂は杨幂であることがわかります。

もうすぐ、杨幂の出ている映画が2本立てつづけに公開されます。

画皮Ⅱ 2012年6月28日公開
大武当之天地密码 2012年7月6日公開

《画皮Ⅱ》は、杨幂と冯绍峰コンビが、赵薇と周迅のおばんコンビにどんな挑戦をしているのか、ちょっと楽しみではあります。

《大武当之天地密码》は、民国はじめの頃を舞台にした、武当山に伝わる秘宝を奪い合うインディ・ジョーンズふうの物語だそうで、お話としてはこっちのほうが面白そうではあります。

しかし、主演の男優が赵文卓なので、必ずやしょうもない作品になっていることでしょう。この人の出ているドラマや映画で、面白いものがあったためしはありません。

それに杨幂が武功をやったって、似合うはずもありません。

あと、《长江七号(ミラクル7号)》に出ていた男の子(女の子)徐娇が出ているのですが、ずいぶんと成長したというかデブになっています。


楊冪小時於武狀元蘇乞衣中的演出


この映画は、日本では《こじきの王》とか《キング・オブ・カンフー》という名前でDVDが発売されていたようです。詳細については、興味はありません。

《武状元苏乞儿》主题曲:长路漫漫伴你闯


King of Beggars 1992 武状元苏乞儿


《大武当之天地密码》国际版预告片

2012年6月14日木曜日

《志明与春娇》 2010 --烟民の悲劇と喜劇



2007年1月1日、香港では飲食店や公共の場所での喫煙が禁止されました。ぼくは、2006年の年末、日本の新聞でそのことを知tって、その記事を切り抜いて、しばらく壁に貼っておきました。

タバコを吸う人を、中国語では“烟民”とか“抽烟族”と呼ぶようです。公共の場所での喫煙が禁止されてしまった香港の“烟民”は、どうなってしまったのでしょう?

志明与春娇》 2010

は、映画館でその旨の字幕が映されるところから始まります。路地裏では、いろいろな職場で働いている“烟民”たちが、休憩時間に灰皿の前に集まってきて、タバコを吸いながらあれこれおしゃべりしています。

そうなのです。2007年の香港では、飲食店や公園での喫煙は禁止になったとはいえ、ストリートには相変わらず灰皿兼ごみ箱が置かれていて、道端でタバコを吸うのはOKなのでした(今[2012年]もそうなのかどうかは知りません)。

そんなわけで、2007年前後の香港を知っているとか、その頃に香港に行ったことのある日本の“烟民”ならば、この映画は見ておいてもいいでしょう。

百度百科によると、“志明与春娇”とは、台湾のバンド五月天が1999年に発表した曲のタイトルだそうです。

以後、“志明与春娇”は、“梁山伯与祝英台梁山伯と祝英台)”とか“罗密欧与朱丽叶ロミオとジュリエット)”のようなカップルの代名詞になったとのことです。

“梁山伯与祝英台”と“罗密欧与朱丽叶”は悲劇な物語でもあるわけですが、“志明与春娇”はごく普通な男の子と女の子のことを指すようです。

というわけで 《志明与春娇》は、カップルである二人が“烟民”であるということを除けば、ごく一般的なラブストーリーです。

単純に笑えるところは、夜中の公園で、志明がタバコを吸っているところを警察に見つかってしまうシーンです。

志明は日本人のふりをして「ワタシニホンジン。I'm japanese」などと言って、香港事情を知らないふりをします。春娇は「アンニョンハセヨ~」とか言って韓国人のふりをします。

春娇を演じているのは、杨千嬅という女の子(おばさん)です。志明を演じているのは、余文乐という男の子です。杨千嬅が1974年生まれ、余文乐が1981年生まれです。実際には、杨千嬅が7つくらい年上なわけですが、映画では5歳年上という設定になっていたと思います。

志明と春娇は、こんなセリフを交わします。

春娇:我年纪比你大。
(わたし、あなたより年上よ)
志明:但我比你高。
(ぼくは君より背が高い)

志明與春嬌 - 五月天


春嬌與志明主題曲