科挙が学問での選抜試験ならば、武挙とは武術の選抜試験みたいなことのようです。科挙でのナンバーワンの称号が状元であり、武挙でのナンバーワンが武状元ということになるみたいです。
《武状元苏乞儿》 1992
の物語の構図は、清朝末、皇帝に取り入っている天理教(の教主赵无极)と、これに対立する丐帮たちです。丐帮は天理教の教主を殺し、天理教は丐帮の帮主を殺し、帮主を失った丐帮は統制が乱れています。
丐帮とは、武術をたしなむ乞食の相互扶助組織みたいなものですが、特に金庸が発明したものではなく、武侠小説ではおなじみの組織のようです。
とはいえ、ぼくたちにとってとりわけなじみ深い丐帮とは、金庸(原作のテレビドラマ)の《射雕英雄伝》と《神雕侠侶》の丐帮でしょう。そんなわけで、この映画には“洪七公”とか“打狗棒法”とか“降龙十八掌”などの言葉がぽんぽん出てきます。
丐帮と天理教の対立に、周星驰(苏灿càn)と吴孟达(苏灿のパパ)が絡みます。大役人の息子苏灿は、娼館で、如霜(张敏)に一目ぼれするのですが、如霜ははまったく気乗りしないようで、武挙に合格したなら、連絡してねみたいなことを言います。
こうして苏灿は武挙にチャレンジして、見事一等になるのですが、文字が書けないことがばれて一家の財産を没収されてしまい、パパと息子はしかたなしに乞食暮らしをすることになります。
如霜とその妹は、(丐帮には4大長老がいるのですがそのなかの一人の)長老の娘で、赵无极を狙うために娼館に潜り込んでいたのでした--こうなれば、あとの展開はだいたい見えてきます。
苏灿は、後に苏乞儿と呼ばれるわけですが、実在したのかどうかよくわかりませんが、“酔拳”の創始者であり、“广东十虎”の一人だそうです(映画の中では“睡梦罗汉拳”が“酔拳”の一種に相当するようです)。
2010年赵文卓版《苏乞儿》 |
清朝はアヘン戦争以降、先進国に蹂躙されるとはいえ、广东一帯は経済的には発展するわけで、そのぶん、武術の達人やら秘密結社やらが集まってきたのでしょう。
この映画の監督は、陈嘉上という人です。どっかで見かけたことのある人のような気がします。ああ。《画皮》 2008 と《画壁》 2011 の監督でした。
この人は、何か余分なものを映画のなかに取り入れてしまう人のように思います。《画壁》 2011 がそのいい例でしょう。軽いだけのお笑い映画にしていれば、《画壁》は傑作になったような気もします。
《武状元苏乞儿》は、基本的にはただのお笑い映画なわけですが、そこにちょこっと悲劇な色合いだとか、武侠的なおまけが加えられているため、中国人も日本人も、なんだかこの映画を誤解して、まじめに取り扱ってしまいがちなようです。
もうすぐ(2012年7月12日)、この監督が監督した《四大名捕》という映画が公開されます。刘亦菲が出ているのでいずれ見ようとは思いますが、刘亦菲が出ているので面白くなくてもしかたないでしょ。
そういうあれこれとは関係なく、なんでこの《武状元苏乞儿》が経典のひとつに数えられているのかというと、この映画で杨幂がデビューしているからです(正しく言うと違うのかもしれませんが、まあいいでしょ)。1986年生まれの杨幂は、この映画に登場したとき、もちろん5、6歳の子供です。
映画の最後で、ちょこっと映るだけなので見落とさないようにしてください。うろうろするだけなのですが、やっぱり杨幂は杨幂であることがわかります。
もうすぐ、杨幂の出ている映画が2本立てつづけに公開されます。
画皮Ⅱ 2012年6月28日公開
大武当之天地密码 2012年7月6日公開
《画皮Ⅱ》は、杨幂と冯绍峰コンビが、赵薇と周迅のおばんコンビにどんな挑戦をしているのか、ちょっと楽しみではあります。
《大武当之天地密码》は、民国はじめの頃を舞台にした、武当山に伝わる秘宝を奪い合うインディ・ジョーンズふうの物語だそうで、お話としてはこっちのほうが面白そうではあります。
しかし、主演の男優が赵文卓なので、必ずやしょうもない作品になっていることでしょう。この人の出ているドラマや映画で、面白いものがあったためしはありません。
それに杨幂が武功をやったって、似合うはずもありません。
あと、《长江七号(ミラクル7号)》に出ていた男の子(女の子)徐娇が出ているのですが、ずいぶんと成長したというかデブになっています。
楊冪小時於武狀元蘇乞衣中的演出
この映画は、日本では《こじきの王》とか《キング・オブ・カンフー》という名前でDVDが発売されていたようです。詳細については、興味はありません。
《武状元苏乞儿》主题曲:长路漫漫伴你闯
King of Beggars 1992 武状元苏乞儿
《大武当之天地密码》国际版预告片
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