1997年、香港は中国に返還されます。そんなわけで1988年3月に上映された
《超时空要爱》 1998
は、最後の香港映画(の1つ)だと思います。“超時空要塞”ではなく“超時空要愛”です。
梁朝伟(トニー・レオン)は《正牌韦小宝之奉旨沟女》 1993 で、清朝から現代へとタイムトリップしたことがあるのですが、この映画では現代から三国時代へとタイムスリップすることになります。
監督は黎大炜、脚本は刘镇伟(ジェフ・ラウ)--このコンビで作られた映画に《九一神雕侠侣(神鳥伝説)》 1991 があります。もしかしたら《九一神雕侠侣》が近未来の物語であったとすれば、《九一神雕侠侣》と《超时空要爱》は、黎大炜+刘镇伟のSF映画2部作なのかもしれません。
この映画は、女など愛したことはないニヒルな刑事と、下っ端ヤクザのカップル、カップルの仲間のヤクザ、ヤクザの親分に強姦されて自殺してしまった女の子、三国時代から穿越(タイムトリップ)してきた关羽(関羽)の魂に乗っ取られた京劇役者とそのかつての相方、なぜか事件に巻き込まれてしまったおっさんの8人が、三国時代に穿越してしまう物語です……。
シナリオを書いた刘镇伟とは、えんえんと同じギャグを繰り返し、ときには王家卫(ウォン・カーウァイ)のように同じ物語を何度も繰り返す人です。
そんなわけでたとえば、強姦されて自殺してしまう女の子はかつては野球少女であって、《九一神雕侠侣》の野球少女の秘密が、ここで明らかになります。
《大话西游之仙履奇缘》 1995 では、《大话西游之月光宝盒》 1995 で使われた移魂大法の変形版であるなんとか大法によって、主人公たちの人格が入れ替わってしまいますが、この映画ではタイムトリップしてしまった8人の人格はそのままなのですが、彼らは三国時代のあれこれなキャラクタに割り当てられてしまいます。
刘镇伟は《大话西游》で月光宝盒というタイムマシンを発明しているわけですが、《越光宝盒》 2010 でも、タイムトリップした結果、異なるキャラクタが割り当てられていました。そして、《越光宝盒》では、赤ちゃんギャグ(出来がいいとは言いませんが…)も含めた三国時代を舞台にしたお笑いの詳細が語られることになります。
なんの因果もないのにドタバタに巻き込まれてしまったおっさん--林尚义が、蛇を飲み込んでしまうシーンは、《东成西就 1993 (大英雄)》そのままです。
《黑玫瑰义结金兰》 1997 では、女中として黑薔薇に仕える吕奇を演じながら、だんだんと杨过になりきっていく林尚义でしたが、ここでは、タイムトリップしたときには关羽の奥さんになってしまいます。オリジナルではどんなセリフなのかわかりませんが、普通話吹き替え版では“人妖”とののしられていました。
“人妖”とか“服妖”は、刘镇伟ものにおいてはごく日常的なことではあるわけですが、林尚义という人の“男扮女装”はとてもいいと思います。
1990年の《赌圣(ゴッドギャンブラー)》が大ヒットして、刘镇伟は1990年代を代表する監督となり、周星驰(チャウ・シンチー)は1990年代を代表する役者になりました。
周星驰は香港返還後もそれなりに活躍したようですが、刘镇伟は香港返還とほとんど同時に映画界から名前が消えてしまいます。
刘镇伟にとって、90年代最後の監督作品が《黑玫瑰义结金兰》 1997 であり、90年代最後のシナリオ作品がこの《超时空要爱》 1998 ということのようです。
刘镇伟が監督として復活するのは、2002年の《无限复活》あるいは《天下无双》だそうです。
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