《九一神雕侠侣》 という映画は存在するのですが、本来のタイトルは 《魔宫奇侠》 と言います。しかし、誰かが 《九一神雕侠侣》 という取ってつけたようなタイトルバックを偽造して、堂々と《九一神雕侠侣》という映画になってしまったようです。
ぼくは長いこと、この謎がわかりませんでしたが、最近やっと大体わかりました。《九二神雕侠侣》(正式タイトルは 《九二神雕侠侣之痴心情长剑》)という映画が存在するからです。
この映画は劉德華(アンディ・ラウ)が自分の天幕製作有限公司で作った第1作目であり、評判も興行成績も良かったそうです。天幕製作有限公司が、《九一神雕侠侣》 の続編のような形で制作したのが《九二神雕侠侣》です。
いつのまにか《魔宫奇侠》のタイトルバックが《九一神雕侠侣》に置き換えられたのか、あるいは公開直前に急遽タイトルを《九一神雕侠侣》に変更したのか、そのへんの事情まではわかりません。
刘德华は、テレビドラマ 《神雕侠侣》 1983 で一躍名前を売ります。 また、これは2003年に金庸が選んだ一番気に入っているテレビドラマの1つだそうです(もう1つは《书剑恩仇录》1976)。
シナリオを担当しているのが金庸(金庸)おたくコンビ、刘镇伟(ジェフ・ラウ)と王家卫(ウォン・カーウァイ)です。このコンビは、刘镇伟のデビュー作《猛鬼差馆(バンパイア・コップ)》1987 でもいっしょにシナリオを書いています。
そんな事情は、中国の人たちは当然ご存知なわけで、普通話吹き替え版の字幕では親切にも、ヒロイン美君の名前が“玫瑰”になっていました。
この映画は、なぜ《九一神雕侠侣》なのでしょうか? 主な登場人物と役者は、こうなっています。なかなか豪華です。
刘德华--秦哥(傭兵仲間)
梅艷芳--美君(傭兵仲間)
梅艷芳--美惠(傭兵仲間)
钟镇涛--小村(傭兵仲間)
叶蕴仪--惠香(小村の妹)
郭富城--銀狐(殺し屋)
方家煌--老鹰(银狐の師匠)
劉嘉玲--寵物夫人
賞金のかかっている悪人を始末する傭兵4人組が、秦哥(アンディ・ラウ)と小村(ケニー・ビー)そして美惠(アニタ・ムイ)と美君(アニタ・ムイ)の姉妹です。小村は美君に求愛しているのですが、美君は秦哥を愛しています。しかし、秦哥は小村に遠慮して、美君に愛を伝えることができません。
殺し屋銀狐(アーロン・クオック)は、刑務所に乗り込んで、かつて美君によって両目をつぶされた師匠老鹰を脱獄させます。しかし、老鹰は銀狐に、自分を殺して美君に报仇してくれと頼み、銀狐は答应します。
秦哥が、ついに美君に愛を告白しようとしたその日、銀狐が美君に报仇にやってきて、小村は銀狐に殺されてしまいます。そこにマカオからやってきたのが、小村の妹である15歳の野球少女惠香(グロリア・イップ)です。
こうして、秦哥と惠香の修業が1年たったころ、最後の銀狐との死闘がはじまります--と、ストーリーは《神雕侠侣》と関係ありません。実際に見て楽しんでください。
というわけで、この映画(シナリオ)こそは、王家卫《东邪西毒》と刘镇伟《东成西就 1993》の原型ということになります。
しかし、この映画が《神雕侠侣》を名乗ろうとする限り、毒薬と毒消しの物語とかはさておいて、周伯通(周伯通)というキャラクタがぼくたちを笑わせてくれる義務があるように思います。この映画で周伯通に相当するのが、おねえさんのほうの梅艳芳です。
そんなわけで、この映画では王家卫ばりのスタイリッシュな映像(というわけでもないのですが)を切り裂いて爆発するのが、刘镇伟ばりのスラップスティックなお笑いです。
なお、龙儿(小龙女)のどこまでも伸びる白いソデとスソという永遠のテーマは、钟镇涛とともに特別客串のカリーナ・ラウ(寵物夫人)が担当しています。
《东成西就 1993》でも、钟镇涛(ケニー・ビー=王重阳)はいきなり死んでしまうのですが、最後には劉嘉玲(カリーナ・ラウ=周伯通)と永遠の愛を語るのでした。
Saviour of the Soul (1991) - 01
梅艳芳 刘德华 九一神雕侠侣 不可不信缘
Saviour of the soul 1991.wmv
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