2012年7月31日火曜日

《回到三国》 2012 - 三国志にすべる


今年(2012年)の7月から8月にかけて、こんなテレビドラマが放映されました。

回到三国》 2012

ちょうど、《轩辕剑》の放映期間と重なっていました。もちろん、人気は圧倒的に《轩辕剑》なのですが、ヒロイン刘诗诗がブスであると同時に、演技が杨幂の下手なまねであるため、ドラマをもたもたさせてしまい、《仙剑3》の爆発力とスピード感に遠く及びませんでした。

そんなわけで、ぼくは《轩辕剑》を見るよりも、この《回到三国》を見るほうが楽しみになってしまいました。特に出来がいいというわけではないのですが、けっこう気に入っています。

ストーリーや登場人物については、“《回到三国》 2012 - 5分でわかる三国志人物伝”を参照してください。

このブログでは、三国志ものとしては

超时空要爱》 1998
赤壁(レッドクリフ)》 2008-2009 -略懂略懂
越光宝盒》 2010
关云长(三国志英傑伝 関羽)》 2011

を見てきました。

ぼくと同様に、三国志に詳しくない人は、《赤壁》とか 《关云长》などを見ておくと、《越光宝盒》やこの《回到三国》を見て、もっと笑えるように思います(《赤壁》や 《关云长》が正統な三国志物語というわけではないのですが……)。


《回到三国》は、諸葛亮をアイドルとあおぐ三国志のゲームおたく司馬信が、三国志の時代に穿越(タイムトリップ)してしまう物語で、香港のテレビドラマです。

最近の香港映画は、香港の映画なのか中国の映画なのかわからないことが多いわけですが、“香港のテレビドラマ”は今でも健在のようです。

香港のテレビドラマでは(あるいは映画でも)、資金が少ないという理由とか、自然が少ないという現実などにより、ちゃちなセットを作って、いかにもご都合主義な物語とかお笑いとかが、田舎芝居のように展開していきます。

したがって、《回到三国》の戦闘シーンなどでは、CGというかVFXというか、そういう技術はほとんど使われていません。10数万の民とか100万の大軍とかは、《回到三国》ではせいぜい20人とか30人くらいにしか見えません。このスケール感には、とても好感が持てます。

このブログでは香港のテレビドラマとして《鹿鼎记》 1984 を見ています。30年近く前のドラマで、梁朝伟トニー・レオン)もとても若いわけですが、お気軽な演技とか、手抜きな撮影とか、安易なアクションシーンとか、そういった構造のあれこれは《回到三国》にも継承されています。


諸葛亮諸葛孔明)おたくの司馬信が、よくも都合よく三国時代にタイムトリップできたものです。しかも、そのとき三国志もの映画だかテレビだかのエキストラをやっていたので、自然に地元の人々とお友達になります。そのうえ、その村には諸葛亮が住んでいたのです。

そのころ、ちょうど諸葛亮は結婚式をあげます。司馬信は、ぶさいくな奥さんをもらうなんてやめちゃえと諸葛亮に提言するのですが、諸葛亮は言うことを聞いてくれません。

そのあと、劉備が諸葛亮を軍師として迎えるためのお願いにやってきます。このドラマでは軍師を補佐する役目の人を謀士と呼ぶのですが、司馬信は諸葛亮の謀士になろうとします。

しかし、まだつきあいが浅いという理由で、諸葛亮は司馬信を謀士にしてくれません。そこで、劉備軍団に従来からいる軍師・韓良の謀士になって、劉備一家に潜り込みます。

三国志ファンならばご存じなのでしょうが、三国志には韓良などという人は登場しないそうです。これはネットに書いてあったことなので、本当かどうかは知りません。

でも、劉備軍団にもともとの軍師がいたとしても不思議ではないでしょう。それに、司馬信が飛び込んだ世界は歴史としての三国時代というよりは、《三国演義》という物語世界であるように思われます。

映画《赤壁》は、10数万の民を率いて荆州から撤退する刘备軍団が、曹操軍団に蹂躙されるあたりから始まります。長坂の戦いという有名なお話なんだと思います。刘备軍団はかろうじて曹操軍団の追撃を振り切ったあと、長坂橋を切り落として、曹操軍団の足を一時的に止めます。

《回到三国》でのこのシーンでは、最後に橋を渡ってきた张飞に、司馬信は大声で怒鳴れと言います。そして、张飞の絶叫によって橋が倒壊します。

このエピソードは、《演義》にはなく、《赤壁》の記事で紹介した講談のタネ本《新全相三国志平話》に書かれているそうです。

つまり、司馬信は《三国演義》という物語世界に穿越したというよりは、語り物とかお芝居の三国志世界に突入した模様です。

映画とかドラマが関羽と張飛を造形するとき、必ずや京劇風のメイクにしないと許されないようです。《赤壁》でもそうであったように、このドラマでもそうです。

穿越のしくみは、星の運行のタイミングによって、時空の裂け目というかねじれが起こるというパターンで、これは《》タイプの穿越です。

《宮》では、穿越の先輩がいたことにより、晴川が現代に帰る道が開きました。《回到三国》では、司馬信の携帯電話がどういうわけか、SFおたくの妹とつながって、彼女とメールをやりとりすることによって、現代への帰還を模索します。

妹は、タイムトラベル研究家の曹教授に兄を現代に戻す術を依託します。タイムトラベルものが守らなければならない原則は、歴史を改変してはいけないことです。しかし、司馬信は、そんなことはまったく気にしていないようです。

刘备の二人の奥さんがけんかして刘备が困ってしまうシーンとか、関羽と張飛がちょくちょくけんかして刘备が困ってしまうシーンとか、諸葛亮の奥さん(月英)が家出してしまい諸葛亮が休暇を取って奥さんを探しに行くシーンとか、“死八婆”=蔡夫人の横暴ぶりとか、あれこれ楽しめると思います。

あと、物語が喜劇だ悲劇だ人情話だとか、あれこれ展開するなか、なごませてくれるのが、司馬信が穿越して最初に出会った范根です。

范根は刘备軍団の兵士になるわけですが、ついにはI'm sorryという英語も使えるようになります。

最後はちょっと悲しいお話になってしまうのですが、これとは別のエンディングもあります。見たい人は、あれこれ探してみてください。

等你回来(回到三国主题曲) 林峯 官方MV


Always on My Mind 回到三國

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