2013年9月11日水曜日

绝代双骄 1988 -- 古龙+トニー・レオン



中国の新派武侠小说を興したのが梁羽生(广西)と金庸(香港)であり、それに続くのが古龙(香港、のちに台湾に移住)だそうです。この3人をあわせて中国武侠小说三大宗师と呼ぶそうです。

そう言われても何が新しいのか、ぼくにはさっぱりわかりません。古龙の同名小説を原作とする香港TVBのドラが

绝代双骄 1988

です。この小説も何度も映画やドラマになっているわけですが、1988版テレビドラマの主演は梁朝伟(トニー・レオン)です。

どれだけ原作とかけ離れているのかはわかりません。しかし、金庸ドラマって何てリアリズムなんだろうと思ってしまいたくなるほどの荒唐無稽さです。古龙の小説は、歴史や歴史上の人物とは無縁なのだそうです。

たとえば王家卫は、古龙についてこんなことを言っています。

因为他(古龙)是一个流氓,有才气的流氓。所以我拍的时候会想,要是古龙去写这场戏他会怎么去写啊?我喜欢反差嘛,就试着用古龙的口吻来讲金庸的故事。(古龙は無頼派であり、とりわけ才能のある無頼漢なんだ。俺は、古龙だったらこのシーンをどんなふうに書くだろうかと思いながら映画を撮っているんだ。俺はコントラストを強調するのが好きだろ。だから古龙の口っぷりで金庸の物語を語るんだ)


ざっと、物語を振り返ってみましょう。

移花宫の宫主・邀月(陈美琪)は命を救った江枫に恋してしまいます。しかし、江枫は花月奴と恋に落ち、二人は駆け落ちします。このとき、月奴は身ごもっています。

江枫と花月奴は追手を逃れ、隠れ家で日々を過ごしているのですが、ここも移花宫に知られてしています。江枫と花月奴は、再び逃亡しなければなりません。このとき、二人に手を貸すのが使用人の江琴(杨泽霖)です。

3人は小さな旅籠にたどりつき、そこで月奴は双子を産みます。ここに移花宫主・邀月と移花宫の大臣・魏无牙(黄允财)が乗り込んできます。しかし、江琴に毒を盛られた江枫と月奴は息絶えてしまいます。

邀月と魏无牙は、この双子を別々に育てて、ついには二人を殺し合わせようという悪巧みを思いつきます。一人は邀月が育て、もう一人は江枫の親友であり江湖きっての達人である燕南天に託します。

実は、この事態を喜んだのが魏无牙なのでした。彼は、ずっと邀月に恋していたからです。魏无牙は邀月に言い寄るのですが、邀月に殺されてしまいます。

魏无牙の策略で双子の一人・小鱼儿の面倒を見ることになった燕南天は、恶人谷にたどりつきます。ところが燕南天(岳华)は、ここの悪人である屠娇娇(吴丽珠)、李大嘴(谭一清)、哈哈儿(黄天铎)に騙されて廃人にされてしまいます。

恶人谷にはもう一人、万春流(孙季卿)という、偏屈というか、武侠ものではおなじみというか、中国の歴史や小説においておなじみというか、そんな医者がいます。こいつは、致命的な損傷を負いながらも息絶えない燕南天を復活させようとします。

屠娇娇、李大嘴、哈哈儿に、史上最大の悪人になるべく育てられた小鱼儿(梁朝伟)は、悪知恵のはたらく少年というか青年に成長します。

一方、邀月に育てられた一人は花无缺(吴岱融)と名付けられ、お行儀がよく、しかも武功に長けた青年に成長します。でも、邀月には絶対服従です。

たまたま恶人谷の連中は、燕南天の隠し財宝の在り処が書かれた地図を手に入れます。万春流は小鱼儿に彼の出生の秘密を教え、彼を燕南天の隠し財宝探しと両親の报仇の旅に出します。

同じ頃、移花宫の邀月も无缺を燕南天の隠し財宝探しの旅に出します。もちろん、恶人谷の連中に地図を手に入れさせたのも、邀月の陰謀です。

苗族のお祭りに紛れ込んでしまった小鱼儿は、苗族の風習など知るわけもないので、苗族の娘と結婚するはめになってしまいます。

小鱼儿は苗族ご一行様から苦れるため、美女が乗っている馬を奪って逃げます。この美女が铁心兰(黎美娴)で、铁心兰を追っている美女が车月国のプリンセス、张菁(刘美娟)です。

铁心兰がなんで江湖をさすらっているのかというと、パパである车月国の国防大臣・铁战(吴孟达)が無実の罪で捕えられ、パパを燕南天に助けてもらうために、燕南天を探しているのです。

小鱼儿と铁心兰は张菁ご一行様から逃げるのですが、とうとう捕まってしまいます。しかし、移花宫に属しもしないのに移花宫の武功を使う謎の女性に助けられます。これが苏樱(谢宁)です。

実は魏无牙は死んではいなかったのです。ただし、車椅子生活ではあります。魏无牙の養女が苏樱で、だから苏樱は移花宫の武功を使えるのでした。


以上で、主だった登場人物は出揃いました。このメンバー以外で物語に大きく関わるのは、江琴の息子・江玉郎(关礼杰)でしょうか。あと、割とあっさり目に殺されてしまうのですが若き吴君如も出ています。このおばさんは、若い頃からおばさんなのです。

さあ、小鱼儿と无缺はどんな決戦が待っているのか--というわけではありますが、梁朝伟は例によって武功に取り組むつもりはまったくありません。

そうなのですがモテモテなのは、例によってモテモテなのは梁朝伟であり、良い子の花无缺のほうは花公子という名前に反してあまりもてません。

そう。このドラマの見どころは例によって、梁朝伟と女どもの漫才みたいなかけあいです。特に梁朝伟に惚れてしまった苏樱が、あの手この手をつくして口説うとする姿は、涙なくしては笑えません。


梁朝伟は1980年代には、主に香港TVBのテレビドラマで活躍したように思います。この 《绝代双骄》 1988 の後、彼は金庸原作の 《侠客行》 に出て、たぶん、これが梁朝伟の最後のテレビドラマです。

梁朝伟はそれ以降、映画で二枚目ヒーローとして活躍します。これに呼応するかのように、お笑い映画のヒーローになるのが周星驰です。日本でも、梁朝伟と周星驰が幼なじみであることは有名だと思います。

梁朝伟のお笑いドラマについては、当時の日本における香港映画紹介において、ごっそりと抜け落ちているように思います。そのへんの事情は

《侠客行》 1989

で、まとめようと思います。

このブログで紹介した梁朝伟のお笑いテレビドラマ、あるいはお笑い映画はこんなところです。

鹿鼎记 1984 -- 永遠の傑作お笑いドラマ
倚天屠龙记 1986 梁朝伟版 -- 分裂と収束
绝代双骄 1988 -- 古龙+トニー・レオン
東成西就(大英雄) 1993 - つらい時に見てね!
正牌韦小宝之奉旨沟女 1993
超时空要爱 1998

どんな映画やドラマでも、たとえ言葉がわからんくても吹き替えじゃないのを見たいものですが、特に梁朝伟ものは吹き替え版だとお笑いが半減してしまいます。この人のしゃべりは素敵なのです。

たいして中国語のできないぼくたちは、吹き替え版だってたいして理解できないわけですが、それでも梁朝伟ものは粤语版を見るべきように思います。

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