2013年11月7日木曜日

重口味 2013 -- お気軽なギニーピッグ(ハードコア)あるいは香港映画の現在



今年(2013年)の夏 《重口味》 という香港映画が上映されました。重はzhòngじゃなくてchóngです。

重口味 2013

どんな味わいなのかというと、簡単に言うとハードコアというかエロ・グロ・ナンセンスというような意味です。だったらchóngじゃなくてzhòngのほうがいいような気もしますが、言葉なんだから仕方ありません。

中国人留学生の女の子とご飯を食べながらおしゃべりしていたら、冗談で重口味と言っていました。いつ頃から使われはじめた言葉なのかは知りませんが、現在では冗談であれば気軽に使ってもOKな言葉のようです。

この映画は、香港のわりと若手な監督三人によるオムニバスで、第37回香港国際映画祭で上映されたということです。

大して評判になったわけでもないんでしょうが、豆瓣で「毒菇求爱不错」なんて言っている人もいます。《毒菇求爱》 というのは3つのお話のうちの2つ目のタイトルです。うふふ。


最初のタイトルが 《惊哗春梦》 です。香港に旅行したことのある人は、住居用の建物にはどれも鉄格子みたいなドアがあることを知っているでしょう。旅行者は、鉄格子の向こうの世界には入れません。

《重口味》 という映画のテーマは“黄、毒、賭”で、まずは“黄”です。この物語は、红灯区(色街)のお話なんだけど、香港に红灯区なんてあるの? ぼくは知りません。

二人の学生が住むことになった建物は、風俗嬢ばかりが住んでいます--というか自分の部屋でお仕事をしています。ドアには店長推薦なんて書かれているので、お店でもあるのかもしれません。これが香港の風俗のしくみ? でも、あの鉄格子の中に客はどうやって入るんだろう。

どんなお話なのかというと、二人の男子学生が風俗嬢たちの中に闖入したことによって、ある種の共同体みたいなのが形成されていき……しかし……というわけで、ここからはドタバタのアクションふうの展開になっていきます。


第二話のタイトルが 《毒菇求爱》 で、今度は“毒”がテーマです。タイトルからもわかるようにラブストーリーです。

あはは! もちろん、独孤求败とは金庸ドラマのあちこちで登場する伝説の人物です。あまりに強くなりすぎて「誰か、俺を負かしてくれ」ということで、こう名乗っているわけです。

黄药师によって桃花岛に幽閉されている老顽童(周伯通)は、亀がお友達です。彼は、亀に独孤求败という名前をつけて、毎日、亀と遊んでいます。そういうわけで、《毒菇求爱》 の主人公である阿杰は、ふられた元彼女から亀をもらいます。

阿杰が乗っているのがピンクの車で、この車は三編ともに登場します。阿杰は麻薬の運び屋です。この車で、亀といっしょに毒菇という麻薬を客に配っています。

運び屋というのは、映画における永遠のテーマのひとつでしょう。たとえば《苏州河》。日本語のタイトルは「ふたりの人魚」だったと思います。人魚と言えば

下水道(的)美人鱼
ギニーピッグ マンホールの中の人魚

という日本のビデオがあります。日本では、熱心なホラーファンならば知らない人はいないのでしょう。こういうのが、それこそ重口味ということでしょう。

これは、中国でもけっこうカルトな映画として有名なようです。特にホラーというかその手が好きというわけではない90後たちは、けっこうこれを知っています。ただし、現在は視聴禁止だそうです。聞いた話なので、本当かどうかは知りません。

というわけで 《毒菇求爱》 は、ロードムービー的なラブストーリーです。阿杰は、ある女の子と出会います。阿杰はママのお誕生日に、彼女に恋人のふりをして、いっしょにママの誕生日を祝ってくれと頼みます。ママのお誕生日のシーンは、けっこういいと思います。

あと、女の子が亀をマイクというかスマホに見立ててしゃべるシーンも悪くありませんでした。



第三話が 《有杀有赔》 で、“黄、毒、賭”の“賭”に相当します。

大陸では制服の女子高生はいません。香港で制服の女子高生に会いたければ、湾仔のマクドナルドに行きましょう。ただし、九龙の人々からすると、香港島は差別すべき場所のようです。

平場の香港競馬というのはすべてハンデ戦で、1番枠がトップハンデで、大外が最軽量です。だから、1が来るとけっこういい配当になります。シャティンでもハッピバレーでもマカオ競馬場でも、これは同じです。

カジノ。これが、日本人には大きな壁になってしまいました。マカオのカジノは、お金持ちの中国人で賑わっていて、札束が乱れ飛んでいます。もはや、貧乏な日本人が小銭でちょっと遊ぼう--というような場所ではありません。

このお話も悪くはなかったように思いますが、どんな内容だったか忘れてしまいました。実際に見て、楽しんでください。


この《重口味》は香港映画です。「香港映画は死んだ」「いや香港映画は死んでいない」みたいなことを、ときどき目にします。昔、香港映画というのはあったわけだけど、今はもうない--そんなのは当たり前のことでしょう。

周星驰の 《西游·降魔篇》 だって、香港映画じゃなくて大陸映画です。甄子丹のろくでもない 《特殊身份》 だって中国映画です。つまり、日本でも知られているようなスターが出ている映画は、香港映画ではありません。

大陸、香港とジャンル分けにこだわるわけではありませんが、香港の大スターが大陸資本の映画に出るとき、ただそれだけで香港映画ではなくなってしまうように感じます。それだけで何かを売ってしまった--そんな感じ。

じゃあ、香港映画はどこにもないのでしょうか? 実はそうじゃないように思います。たとえば 《志明与春娇》。これは香港でしか語ることのできない烟民の物語でした。でも続編の 《春娇与志明》 は、香港映画とはなんの関係もありません。舞台だって北京でした。

ときたまポコンと、香港映画が登場するような気がします。《重口味》 もそんな香港映画のひとつのように思います。たとえば  《热浪球爱战》 2011 は大好きです。

映画ではなくてテレビドラマはどうでしょうか。去年の 《回到三国》 は、毎晩見るのがとても楽しみでした。ださいセット、スケール感のなさなど、お笑い香港テレビドラマの伝統を受け継いでいました。

ただし、香港のテレビドラマが今でもいきいきしているのかというとそういうわけではなく、こちらもときたまポコンと面白いのが出てくるといった感じでしょう。

電影《重口味》激情四射 三級國際版首發預告

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