2015年11月19日木曜日

芈月传 2015|ドラマの時代背景と 《甄嬛传(宮廷の諍い女)》 後の孙俪(スン・リー)



甄嬛传(宮廷の諍い女)》 2011 の孙俪(スン・リー)が、やっとこさ宮廷ドラマに帰ってきました。いよいよ(2015年)11月30日から

芈月传 2015

の放映が始まりました。タイトルは、まさに二匹目の 《甄嬛传》 狙いです。瞬間、 “华月传” かと思ってしまいましたが、“华” ではなく “芈” です。“芈” なんて漢字、見たことありませんでした。発音は mǐ です。

この記事では、ドラマの概要や時代背景、《甄嬛传》 以後の孙俪の活動などについて書いておきます。

《芈月传》 は(たぶん)81集あるのですが、クランクインが2014年9月6日(内モンゴル)で、その後、河北涿州や北京园博园などあちこちでの撮影を経て、2015年1月29日に横店でクランクアップしたそうです。

主な登場人物たちのあれこれについては、こっちの記事にまとめておきました。

芈月传 2015|“宫斗” ではなく “朝斗” の登場人物たち


戦国時代半ばの物語です。詳しい歴史が明らかになっていない時代を選べば、大陸のテレビドラマに課せられた多くの禁制からも逃れられるという面もあるでしょう。

戦国時代の主だった国は斉・楚・秦・燕・韓・魏・趙ですが、楚の威王の娘のひとりが芈月です。

しかし、威王の奥様のおかげで、芈月と彼女の母はつらい生活を送ることになり、数奇な運命をたどる--そんな物語のようです。

監督も含めて多くのスタッフが甄嬛传組だそうですが、監督の郑晓龙は “《甄嬛传》 の続編のようなつもりで見ると失望することになる” と語っています。芈月は実在した人物であり、《甄嬛传》 は “宫斗(後宮の闘い)” でしたが、こちらは “朝斗(朝廷の闘い)” とのことです。


なぜ “宫斗” ではなく “朝斗” なのかというと(書いてしまいますが)芈月は秦において “太后”  になるからです(“宣太后” あるいは “芈八子” と呼ばれます)。太后とはもちろん皇帝の母親のことですが、芈月がはじめて太后という “位” を創設したそうです。

詳しいことは実際のドラマを見て楽しみたいと思いますが、もちろん太后という地位を利用して政治を牛耳るのでしょう。ただし、たとえば武则天武媚娘)には強烈な悪女イメージがあるわけですが、宣太后は始皇帝のひいおばあちゃんであり、始皇帝が統一国家を打ち立てる礎を築いたとのことです。


この朝斗物語はどうやって誕生したのかというと、やはり 《甄嬛传》 から生まれたと言っていいでしょう。ドラマのシナリオを担当しているのは蒋胜男王小平の二人です。王小平は監督・郑晓龙の奥様で、 《甄嬛传》 のシナリオも担当しています。蒋胜男は、大衆歴史小説の女流作家です。

(胜男は日本語で書けば “勝男(かつお)” です。いくら現代の日本のパパママが変な名前を子供につけるからといって、女の子に “勝男” という名前はつけないでしょう。ぼくは胜男という中国人の女の子に会ったことがあります。)

蒋胜男が小説 《芈月传》 を書き始めたのが2012年だそうです。大ヒットした 《甄嬛传》 に触発されて、この物語を思いついたのでしょう。シナリオの第一稿が出来上がったのが2014年3月で、小説が出版されたのが今年(2015年)9月だそうです。詳しいことはわかりませんが、小説とシナリオが同時進行していたのかもしれません。

なお、このドラマの宣伝活動が始まると、たぶん著作権がらみの問題で、蒋胜男は王小平に文句をつけ、二人の仲はこじれてしまったようです。

また、乔小主という人が書いた 《芈月传》 と同名の小説もあるらしいのですが、本当かどうかはわかりません。


孙俪は、《甄嬛传》 の後、何をしていたのでしょうか? 《甄嬛传》 までの孙俪については、こっちの記事を見てください。

后宫・甄嬛传 2011|孙俪传(スン・リー伝)

《甄嬛传》 が最初に放映されたのは2011年ですが、その2011年、孙俪は邓超と結婚して、娘を産みます。その後、子育てに専念して、何も活動していなかったわけではありません。2013年にはテレビドラマに主演しています。

辣妈正传 2013

辣妈正传
ただし、このドラマはたいして話題にはならなかったように思います。

そして、2014年5月には香港で2番目の娘を出産しています。なんで香港なのかというと、第2子を産んだ罰金を逃れるため--とかあれこれ話題になりました。

香港には、大陸の有名人を香港人にさせてあげるみたいな制度があって、孙俪夫婦は香港人になったようです。

2014年には、彼女が出演した2つの映画が公開されています。

大话天仙 2014
分手大师(失恋の達人~上手に愛を手放す方法) 2014

ただし、《大话天仙》 には、あれこれ事情があります。刘镇伟は、 《越光宝盒》 2010 に引き続き、孙俪主演で 《天仙奇缘》 という映画を撮り始めるのですが、資金がショートしてしまい完成しませんでした。

大话天仙
刘镇伟いわく “どこの誰だか知らないが”、《天仙奇缘》 の既存フィルムといくつかのシーンを新たに撮影して、映画にでっちあげてしまったのが 《大话天仙》 です。

刘镇伟自身は、《大话天仙》 は自分とはなんの関係もない映画だと、新浪で言っていました。

ただし、ぼくはこの映画はけっこう好きです。《越光宝盒》 の孙俪が明るい狂気であったとすれば、《大话天仙》 の孙俪は冷たい狂気であって、とことん冷たい孙俪がものすごくきれいだからです。

また、邓超と杨幂が主演して、邓超も共同監督を担った 《分手大师》 では、孙俪はほんのちょこっと客串(ゲスト出演)しているだけです。


孙俪は 《芈月传》 の出演依頼を受けたとき、誰もが 《甄嬛传》 を意識してこのドラマを見ることは明らかで、すごくプレッシャーな仕事になるはずだし、撮影が始まるのが2番目の子供が生まれてからあまり時間がないこともあり、決断するにはあれこれ悩んだそうです。でも、シナリオを読むや、一発で出演を決めたそうです。

彼女は 《甄嬛传》 のときも、セリフを覚えるのに相当苦労したと言っていましたが、今回はクラインクインの一ヶ月前からセリフを覚えはじめ、誰にも会わない、電話にも出ない状態でセリフを覚えていったようです。

常に辞書や成语词典を抱えていても、それでも知らない言葉が出てくるので、そのときはシナリオの王小平に電話してあれこれ教えてもらったそうです。だんなの邓超も協力してくれたようです。彼は少年皇帝を何度か演じたことがあるので、邓超にセリフをしゃべらせて、それを録音して自分のセリフを練習したそうです。


孙俪は、このドラマを撮ったあと、だんなの邓超と共演している映画を撮っています。邓超は、この映画では本格的に監督をしているようです。

恶棍天使
恶棍天使 2015

2015年6月~8月に撮影され、今年(2015年)の12月24日に公開されます。

《分手大师》 と同様、もともとは俞白眉という人が書いたお芝居なのですが、お芝居の 《恶棍天使》 は、邓超はプロデューサーも担当しています。

かなりシュールでロマンチックな喜劇のようなので、それなりに期待していようと思います。


最後に 《芈月传》 の時代背景である中国の戦国時代について、おおざっぱにまとめておきましょう。

実在したとされている最も古い中国の国家が殷(紀元前17世紀頃~紀元前1046年頃)です。だから、ドラマや映画で描かれる中国の最古の王朝も殷ということになります。どう描かれるのかというと

封神演义(封神榜)

黄轩
における、周(紀元前1046年頃~紀元前256年)が殷を倒す戦いです。神話世界のエンターティンメントとして、女媧、哪吒、姜子牙、申公豹、妲己といったヒーローや妖怪たちも大活躍します。

このブログでは、“封神榜” ものドラマを2つ見ています。

テレビドラマ 《封神榜》 2006 2009
封神英雄榜 2014 -- 妲己=张馨予!

こうして、周(西周)が新たな王朝を立てることになります。ただし、統一王朝ではなく、多くの都市国家が存在し、都市国家の諸侯は周王を君主とするわけです。やがて周が衰えていくと、都市国家どうしが覇を競うことになります。

蒋欣
これが春秋時代(前770年~前403年)です。なんで前770年から始まるのかというと、この年から東周が始まるからです。チベット系部族が周を脅かし、周は首都を鎬京から東の洛邑へと遷都するからです。こうして、前770年以降の周は東周(二周)と呼ばれます。


刘涛
とはいえ、春秋時代の諸侯にとっては、建前は周王が主君であるわけです。都市国家どうしは尊皇攘夷を旗印にして、主君である周王のために、外敵を倒すために戦うということになります。

春秋時代には、春秋の五覇という有力諸侯がて、一般的には斉の桓公、晋の文公、楚の荘王、呉王夫差、越王勾践を指すそうです。

やがて、晋において家臣が独立して韓・魏・趙という三国に分裂したのが契機となって、下克上の時代になります。こうして、周王朝は都市国家にとっての権威ではなくなり戦国時代(前403年~前221年)が始まります。

戦国時代においては、斉・楚・秦・燕・韓・魏・趙という都市国家が戦国の七雄と呼ばれるそうです。

周は消えてしまったのかというと、そうではなく秦が統一国家を打ち立てる直前まで、細々と続いています。もちろん、周を消滅させるのは秦です。

《芈月傳》官方片花 (預告)─鄭曉龍作品


《芈月传》首曝26分钟超长片花

2015年11月17日火曜日

芈月传 2015|“宫斗(後宮の闘い)” ではなく “朝斗(朝廷の闘い)” の登場人物たち



2015年11月30日、《甄嬛传》 に続く孙俪(スン・リー)の宮廷ドラマ

芈月传 2015

が始まりました。《花千骨》 の記事では、大陸テレビドラマにおける今年最大の話題作は 《花千骨》 だったと書きましたが、それはそれでそういうことにしておきましょう。この 《芈月传》 は、どんな話題を巻き起こすのでしょうか。

《甄嬛传》 は “宫斗(後宮の闘い)” でしたが、この 《芈月传》  “朝斗(朝廷の闘い)” です。ドラマの概要や時代背景、《甄嬛传》 以後の孙俪の活動などについては、こっちの記事を見てください。

芈月传 2015|ドラマの時代背景と 《甄嬛传(宮廷の諍い女)》 後の孙俪

この記事では、主だった登場人物たちを(自分のためにも)それほどネタバレにならない程度に紹介しておきましょう。間違いも多いことと思います。ドラマを見始めてから、たらたら修正していこうと思っていたのですが、このドラマを本気で見たい気持ちはなくなってしまったので、このままにしておきます。ごめんなさい。


芈月孙俪

芈mǐ月が、この物語の主人公であり、もちろん演じているのは孙俪です。芈月は戦国時代(前403年~前221年)の半ば、実在した人物です。楚国の威王の公主なのですが、生まれると同時にかなり過酷な人生が始まります。

芈月は、どんな運命を切り開いていくのでしょうか。あるいは、どんな男とどんな愛を語っていくのでしょうか。

香儿陈楚月

芈月の侍女頭が香儿です。彼女は、芈月の数奇な生涯にずっとつきあい、重要な役割を演じるようです。

陈楚月という女の子が演じているのですが、ぼくはちょっと期待しています。1992年生まれの90后で、写真を見ると美女ではなさそうですが、けっこうほんわかしているのかもしれません。


芈姝刘涛

芈月と同父異母のおねえさんが芈姝です。楚国の王室ではいじめられてばかりいる芈月を、常に守ってくれるやさしいおねえさんのようです。やがて秦の惠文王に嫁ぎますが、そのとき芈月も芈姝の侍女として秦に行くことになります。

ただし、この麗しき姉妹関係は、いつまでも続くわけではなさそうなのですが、それは見てのお楽しみということにしておきましょう。

演じているのは、1978年生まれのの大ベテランと言っていいでしょう刘涛です。今年は胡歌の話題作 《琅琊榜》 2015 に出ていましたが、中国の人も日本の人も最も印象が強い刘涛とは 《天龙八部》 2003 の阿朱なのかもしれません。

玳瑁李蓓蕾

玳瑁dàimàoは威后の侍女で、芈月と芈月を虐待する実行犯です。

ただし、芈姝が秦に嫁ぐにあたって芈姝の侍女になるようです。芈姝のためには、かなり悪辣な手段を使い、芈月殺害計画ももくろむようです。


孟昭氏徐百卉

芈姝の侍女として芈月とともに、秦にやってくるのが孟昭氏です。この子は楚のスパイで、芈姝と芈月を仲違いさせることに尽力するようです。






魏琰马苏

魏国の公主で秦の惠文王の側室の一人です。魏琰yǎnを演じているのは马苏という女優さんです。たいていは脇役ですが、美女なので、けっこう人気のある人です。

今年(2015年)ならたとえば、黄晓明杨幂というヒットしない映画の2大巨頭が主役で、さらには今年、黄晓明の嫁になったangelababyも出ている映画 《何以笙箫默》 に出ていました。

去年(2014年)は、宁浩監督、徐峥黄渤が主演の 《心花路放》 では、きわどい商売をしている女を演じて話題になりました。

《心花路放》
魏琰は香水の調合や華麗な服を着るのが趣味で、いかにもおしとやかなのですが、性格はとても悪そうです。惠文王の王后(まだ皇帝はいないので皇后もいません)の妹なので、後宮ではNo.2にあたります。

王后が死んだため、自分が王后になると思っていたのですが、惠文王は芈姝を王后として迎えます。

怒り狂った魏琰は、芈姝と芈月の秦への旅の途中から刺客を送り込み、芈姝と芈月が秦の王室にやってきてからは、芈姝と芈月を仲違いさせようとか、あれこれの攻撃を繰り出すようです。

《甄嬛传》 で最も強烈な悪役が蒋欣演じる华妃でしたが、马苏の悪女ぶりを楽しみにしていたいと思います。华妃あるいは蒋欣ファンの方は安心してください。蒋欣は、このドラマにも出ています。


黄歇黄轩

楚で有名な四大おぼっちゃま(公子)の一人で、芈月の青梅竹马であり、すなわち芈月の初恋の人です。秦で皇太子芈横の補佐役を担うようです。

《甄嬛传》 の難点のひとつは、大量の美女を必要としたため、それなりに揃えはしたのですが、美女どころとか有名どころに欠けていたことでした。《芈月传》 は 《甄嬛传》 より予算的に楽だったのでしょう。刘涛とか马苏を用意しています。

《推拿》
黄歇を演じる黄轩は、売り出し中の2枚目です。85年生まれながら、小鮮肉のひとりとして数えられています。QQの知り合いが、彼のファンだと言っていました。

昨年(2014年)アジアの映画祭を総なめした娄烨の 《推拿》 では、ほぼ主役である小马を演じていました。

惠文王|嬴驷方中信

秦の惠文王の名前が嬴驷sìです。嬴驷は孝公之の子で、芈月のだんなであり、秦の昭襄王のパパです。芈月は芈妹侍女として秦の王室にはいったはずですが、どういういきさつで側室になるのか、これも見てのお楽しみでしょう。

嬴驷sìと芈月が出会ったとき、嬴驷は30なにがしで芈月はまだ15の少女です。
嬴驷の芈月に接する態度は夫であると同時に、彼女の兄であり父でもあります。

嬴驷は芈月を蔑まされる境遇から救い出し、彼女の人生に自信を与えます。また、家族を守るための政治における権謀術策も教えます。しかし……さあ、どんな波乱が展開していくのでしょうか。

翟骊|义渠王高云翔

秦西北部の少数民族の义渠yìqú王が翟骊dílíです。翟骊は、しばしば秦をかき乱します。時には大暴れし、時にはなついてくるようです。

中国の歴史には、いつも北方民族との攻防がついてまわります。この時代、まだ漢民族という自覚はないのでしょうが、北方民族は夷狄であって、自分たちとは違う人だったのでしょう。とはいえ、夷狄とあれこれ混血していくのも中国の歴史です。

芈月の人生には、3つの重要な愛情物語があるそうです。2つは、すでに紹介した黄歇と嬴驷(惠文王)との愛です。そして、3つ目がこの翟骊(义渠王)です。なんで芈月が夷狄の王と愛を語ることになるのか、それは、ドラマを見る前から知る必要はないでしょう。

《哪吒与杨戬》
翟骊を演じる高云翔という人は、ドラマであれば主役級をこなせる人です。たとえば、このブログでは 《宫锁连城》 を見ています。今年(2015年)は 《爱你,万缕千丝》 という恋愛ドラマで黄圣依と共演しています。

たぶん来年(2016年)に放映される 《哪吒与杨戬》 というドラマでは、杨戬二郎神)を演じています。封神演义の少年神たちの若き日の成長を描く喜劇だそうです。ただし、シナリオが王晶なので、あまり期待しないほうがいいかもです。


楚威王赵文瑄

楚の君主の中でも最強の一人が威王であり、芈月のパパです。軍人気質で楚を拡大することに精力を費やし、多くの国を滅ぼします。芈月にとって、威王はヒーローです。

しかし、後宮で威后が何をやっているのかについては、まるで知りません。しかし、芈月のママ向氏の命を賭けた訴えで、威后の悪事を知ることになるのですが……。


楚威后姜宏波

自分の息子である芈槐huáiと娘の芈姝ばかり可愛がり、庶子の子供たちには対しては、悪どい手口でいじめています。

しかし、芈月のママ向氏によって、威王に威后の悪事を知られてしまい、威后の地位も息子の太子の地位も廃されることになります。ところが……。

そうはならなかったため、威后は芈月と芈戎さっさと始末してしまおうとするのですが……。

楚怀王|芈槐曹征

威王と威后の嫡子が皇太子の芈槐であり、後の楚怀王です。母親に甘やかされて育ったため、無能で淫らな人間に育ってしまいます。

威王は威后と太子を廃そうとしたのですが、悲しみのあまりの深酒がたたり死んでしまい、芈槐はまんまと威王を継ぐ怀王になります。

ただし、楚怀王は、父が築いた大国を……ということになるのでしょう。

南后郑袖袁志博

楚の怀王の奥様が郑袖であり、芈兰の母になります。“南后”というのは、たぶん威后に対しての呼び方なのでしょう。

計略に長け、冷酷な手口も使うようです。




向氏孙茜

甄嬛の最後のセリフは “槿汐,我累了” でした。向氏を演じている孙茜が、《甄嬛传》 の槿汐です。なんだかなつかしいですね。ただし、今回はかなりかわいそうな役どころのようです。

向氏が誰かというと、芈月のママです。もとは莒姬の媵女yìngnǚで、媵女とは公主の結婚にくっついてくる身内の女性のことで、媵女もだんなのものになるようです。

向氏は莒姬を姐姐と呼び、莒姬は向氏を妹妹と呼びますが、本当の姉妹なのか、姐姐・妹妹と呼び合う親戚なのかは、よくわかりません。

芈月の出産に際しては “天を制覇する子が生まれる” というお告げがあったため、王室全体が騒然とします。しかし、芈月が女の子だったため、威王はがっかりしてしまいます。威后はほっとはするのですが、玳瑁に芈月を捨てさせてしまいます。

芈月は辛い境遇にありながら明るく活発な子供で、ちゃっかり威王とお友達になってしまいます。その結果、向氏は威王の寵愛を受け、2番目の子供が生まれます。それが男の子の芈戎です。

葵姑井星文

向氏の侍女が葵姑で、向氏の良き相談相手です。向氏が後宮から連れだされてしまった後は、葵姑が幼い芈月と芈戎の面倒を見ます。

なお、百度で井星文を検索すると李君懿が表示され、“井星文一般指李君懿(井星文とは李君懿のことである” と書かれています。

莒姬蒋欣

莒jǔ姬は莒国の公主で、威王の側室のひとりです。演じているのは 《甄嬛传》 で华妃を凄絶に演じた蒋欣ですが、今回は蒋欣は孙俪の敵ではありません。

向氏が芈戎を生むと、威后は毒を仕込んだ着物をプレゼントして、向氏の体は発疹だらけになってしまいます。威后は、これは大変な病気だということで、向氏を後宮から追い出して、しかも男をあてがって犯させてしまいます。

そんなわけで、子供のいない莒姬が芈月と芈戎のママ代わりになります。向氏は生命を賭して威后に报仇しますが、莒姬は生命を賭して芈月と芈戎を生き延びさせます……。

そんなわけで向氏も莒姬も、 第四集あたりで姿を消してしまいます。《甄嬛传》  の华妃(蒋欣)と槿汐(孙茜)ファンには、ちょっと寂しいかもですね。

芈戎李泓良

向氏の2番目の子供で、つまりは芈月の全弟が芈戎róngです。生まれたとたん、ママは後宮から追い出されてしまうので、ママに甘えることを知りません。

芈月はそんな芈戎を、子供ながらに必死で守ってあげようとします。芈戎にとっての芈月は姉であると同時にママであるのかもしれません。

芈月のもう一人の弟魏冉が直情型体育会系なのに対して、芈戎は沈着型文化系のようで、おおむね芈月の言いなりに彼女を補佐していくようです。


芈茵徐翠翠

芈茵yīnは、芈月と芈姝の(庶出の)異母おねえさんです。楚の威后(王后)の猛威のもとで育ったおかげで、卑屈で嫉妬深い性格のようです。自分の身分は理解しているものの、あの手この手を使って、手に入らないものを手に入れようとします。

芈月にとって(というか誰にとっても)困ったちゃんなのでしょう。この人がどういう形でドラマに絡むのか、それはわかりません。


赢华(迟嘉)

赢华が惠文王(嬴驷)と魏琰の息子です。本人は、自分が太子になると思っていたようですが、そうはいかないようです。

しかし、王位に執着する赢华は戦場で功績を立てることによって、太子の座を奪取しようとするようです。


嬴稷朱一龙

嬴稷jìは、惠文王(嬴驷)と芈月の息子です。どんな運命が待ち受けているのか、そういうことも知らないほうが良さそうです……って。







樗里疾|嬴疾宋佳伦

樗里疾chūlǐjí(嬴疾)は惠文王(嬴驷)の弟で、嬴驷の厚い信任を得ています。ただし、嬴驷が太子を改めることには、宗族的な立場から反対するそうです。嬴驷は、たぶん芈姝の子供を太子に立てるのでしょう。

この人もあれこれ芈月に協力することになるようですが、どんな波乱万丈が待っているのでしょうか。

庸芮巩峥

庸芮ruìは庸夫人の弟で、秦を代表する役人とのことです。秦にやって来た芈月を最初に見たのが庸芮で、彼は芈月に一目惚れしてしまいます。

しかし、身分が違うため、芈月に愛情を抱きつつ芈月の腹心になります。芈月と秦の旧貴族勢力が対立する際には、この庸芮が緩衝材になってくれるそうです。

庸夫人魏一

庸芮の姐姐が庸夫人で、もとは庸の人なのですが、庸が滅んでからは秦の貴族になります。外見も性格も男まさりで、最も速い馬に乗り、最も強い酒を飲むそうです。

嬴驷に対しても遠慮なく接し、嬴驷も彼女を信頼しているそうです。嬴驷と庸夫人にはあれこれの関係があるのでしょう。これも見てのお楽しみにしておきましょう。


魏冉张钧涵

魏冉rǎnは、芈月のパパが異なる弟です。なんで姓が魏なのかというと、パパが魏甲という男だからです。魏甲は、楚后が向氏を後宮から追い出して、無理やり向氏にあてがった男です。

芈月は弟を守らなければなりませんが、魏冉も小さいころから “大きくなったら、姐さんを守る” という誓いを立て、やがては秦の将軍に成長していくようです。

白起曾虹畅

中国のドラマでは、よく狼といっしょに育った狼少年が登場します。《步步惊心》 の原作者、桐华の小説をドラマ化した 《风中奇缘(風中の縁)》 では刘诗诗が狼少女を演じていました。

この白起もそんな狼少年のようです。芈月は义渠王の手からこの狼少年を救い出し、魏冉に渡します。もうドラマは、三分の二あたりでしょうか。白起はさっそく天才的な軍事的才能を発揮して、数々の功績を立てるようです。


张仪赵立新

秦の惠文王の宰相が张仪で、天下に名をはせる遊説家とのことです。纵横学(戦国時代における政治外交学の一派)を代表する人で、遊説するだけで戦わずに他の国を秦に従わせてしまうようです。





苏秦张潇恒

张仪の後に出た纵横家の遊説家が苏秦で、この人は合纵学を起こすようです。

事情はわかりませんが、燕の燕易后(孟嬴)と愛し合うことになり……もう、物語はかなり進んでいるのでしょうか?



孟嬴|燕易后毛俊杰

惠文王の娘で、燕の昭王のママです。彼女は、芈月と同じく太后となって “燕易后” と呼ばれるそうです。

芈月とあれこれの共通点もあるのですが、決定的に異なるのは……こういうことも知らないでおきましょう。


原子霏 芈月传《芈月传》主题曲


孙俪聊芈月传:刘涛腹黑起来很可怕;朝堂戏最难驾驭


《芈月传》即将开播 孙俪领衔古装美人PK战

2015年11月8日日曜日

花千骨 2015|舞台は 《仙剑三》、物語は金庸の良いとこ取り



とにもかくにも、今年(2015年)の大陸におけるテレビドラマの最大の話題作がこの

花千骨 2015

でした。《花千骨》 は、湖南卫视の钻石独播剧场で6月9日から放映がはじまり、9月7日に大結局を迎えました。週に4話(週2日、1日2話の放映)の放映なので、全58話の放映が終わるにはけっこう時間がかかります。

昨年(20104年)、だいたい同じ時期に同じパターンで放映されたのが

古剑奇谭 2014

でした。杨幂最後の主演ドラマとして、ぼくは 《古剑奇谭》 にかなり期待していたのですが、ちょっと期待はずれでした。そんなこともあって、この 《花千骨》 にはあまり期待していませんでした。ところが、あらま!  これ面白いじゃありませんか!!


花千骨を演じる赵丽颖は可愛いタイプの女優さんで、個人的には特にタイプではないのですが、このドラマにはふさわしかったように思います。なによりも霍建华が演じる花千骨の師匠、白子画が真面目一辺倒で、その冷たさがぼくたちを大いに笑わせてくれます。

中国のテレビドラマは、何かが大ヒットすると禁止事項が追加されてしまいます。たとえば 《》 とか 《步步惊心》 などの穿越(タイムトリップ)ものが当たると “歴史を改ざんする穿越ものは禁止” といった具合です。

そんなわけで、最近の古装戏(時代劇)における話題作は、いつでもないどこでもない場所で仙人や妖怪が活躍します。それが 《古剑奇谭》 であり、この 《花千骨》 ということになります。この系列のドラマは “仙侠” ものと呼ばれ、(たぶん)《仙剑奇侠传(仙剑一)》 が源流です。


じゃあ、そもそも 《花千骨》 がなんなのかというと、まずは小説です。fresh果果という若い女の子が書いたベストセラーです(1986年6月贵州生まれ、2005年中国传媒大学卒業?)。2008年12月31日、晋江文学城で連載がはじまり、2009年にはたちまち超人気作家になります。

テレビドラマ 《花千骨》 の原作が小説であり、《仙剑奇侠传》 や 《古剑奇谭》 の原作はゲームです。

“仙侠” ものは、まず小説とゲームにおいて、あるいは小説とゲームの相互影響のもとで、この分野が開拓されていったのでしょう。

“仙侠” ドラマの大傑作が 《仙剑三》 2010 ですが、原作であるゲームは2003年に発表されています。そしてこの頃、fresh果果は小説 《花千骨》 で超有名になります。

ドラマ 《仙剑三》 でも 《花千骨》 でも仙術を身につけた道士は、剣に乗って空中を飛びます。剣に乗って空を飛ぶ術は、仙剑系列のゲームが発明したのか、fresh果果が発明したのか、あるいは他の誰かが発明したのか、ぼくは知りません。


仙剑シリーズと 《花千骨》 において、共通する大切なキーワードが “六界” です。世界がどうして6つ部分から成り立つのかというと、これは女娲の天地修復神話と関係しているのですが、詳しいことは知りません。何が六界なのかというと、“神界”、“魔界”、“仙界”、“妖界”、“鬼界”、“人界” です。

“神界” と “魔界” は徹底的に対立するものとして存在していて、その間に仙界、妖界、鬼界、人界があります。“魔界” と “鬼界” は同じではありません。

魔は神と対立するものですが、鬼界に存在するのは亡霊たちで、簡単に言えば地獄です。仙界にいるのは、修練を重ねて神に近づいた人たちです。

人間を作ったのが女娲ですが、仙剑シリーズでは女娲の后人(子孫)があれこれの活躍をします。《仙剑一》 では、なんと刘亦菲がへび女になって、山中を駆けずり回るのでした。そして 《花千骨》 の花千骨も、実は女娲の后人です。

そんなわけで 《花千骨》 のドラマの舞台は“いつでもない” “どこでもない” いまだ六界が存在していた世界です。舞台はそうなのですが、展開するドラマは金庸ドラマのいいとこ取りと言っていいでしょう。


どんな物語なのかというと、基本は长留(仙人の修業を行う集団)vs 七杀派(魔界の住人たち)の対立が基本になります。

人界の武功集団も登場するのですが、いずれも七杀派にはかないません。

しかし、物語はそう単純ではないようです。异朽阁という組織が不気味が動きをしています。

物語の中心は长留のトップである上仙・白子画と花千骨の恋なのですが、白子画は花千骨に対して一貫して冷たい態度を貫き通します。ぼくたちは、白子画と花千骨がいつかひしと抱き合うシーンを見たくてしょうがないわけです。

白子画は、花千骨が自分の “生死劫” であることを知っています。“生死劫” とは、自分を死に至らしめる縁のある人間のことです(本来は囲碁における無限ループになってしまうパターンのようです)。

自分にとっての “生死劫” の血を “验生石” にたらすと验生石が光ります。

一方、花千骨は、自分が白子画の生死劫であることを知りません。やがてそのことを知ったとき、彼女は白子画の前から姿を消そうと決心するのですが……。この “生死劫” と “验生石” が、fresh果果のオリジナル開発なのかどうか、それも知りません。


準主役の一人が东方彧卿で、なにかにつけ花千骨の力になってくれます。花千骨にとって东方は最も良き友人ですが、东方は花千骨を愛してしまいます。东方をパパ、千骨をママと認識するいも虫が糖宝です。やがて、糖宝は人間の姿となり、长留の弟子の一人、落十一と恋に落ちます。

《仙剑三》 で、原作ゲームとは異なる唯一のキャラがじゃがいもの精である五毒兽で、五毒兽はやがて花楹という人間の女の子になります。この設定は、あきらかに 《仙剑三》 が小説 《花千骨》 から拝借してきたものでしょう。

このドラマのキャラクタたちのあれこれについては、こっちに書いておきました。

花千骨 2015|ぼくたちを大笑いさせてくれた素敵な登場人物たち


中国の一般の人たちはテレビドラマ 《花千骨》 を、大結局(最終回)以外は、普通に楽しんでいました。

ただし、中国にもコミックやライトノベルやアニメや小説好きの女の子がたくさんいます。そんな彼女たちにとって小説 《花千骨》 は、強烈な経典です。

このドラマの放映が始まるころ、QQにおいて、ぼくには当時中三の三人の女の子の徒弟がいました。彼女たちはもう中学生ではなく、高校に通ったり、美容師の道を目指していたりします。じゃあ、いったいぼくは何の师父なのかというと、いまだにわかりません。

そのなかの一人は、“もうすぐテレビドラマの 《花千骨》 が始まるけれど、わたしは原作のイメージを大切にしたいので人間版のテレビドラマは見ない!” と言っていました。小説 《甄嬛传》 もある意味、ベースにあるのは少女漫画だったと思いますが、《花千骨》 はもっと少女漫画なのです。

おたく少女ではない人は、そういう態度でこのドラマに臨まないと、大笑いできないでしょう。ぼくは、このドラマを見ている間、ずっと大笑いしていました。


原作者であるfresh果果は、このドラマのシナリオにも参加しています。実写化にあたって、あれこれアイデアを出したそうです。

とはいえ話題作はあれこれ吐槽され(突っ込まれ)ます。原作の改編度がひどすぎとか、霍建华はなんの演技もしていないとか、あれこれ言われます。そして、誰もがあぜんとしてしまったのが大結局(最終回)なのですが、実際に見てあぜんとしてください。

なお、この本家とでも言うべき 《花千骨》 の放映が終わると、すぐに放映が始まったのが、 《花千骨 2015》 です。

これは、原作とは関係ありませんが、《花千骨》 の後日譚で、花千骨御一行様が、穿越(タイムトリップ)して現代にやってきます。すこぶる評判は悪いのですが、本家 《花千骨》 同様、ぼくはこっちもけっこう笑いました。

《花千骨》 関連記事
花千骨 2015|舞台は 《仙剑三》、物語は金庸の良いとこ取り
花千骨 2015|ぼくたちを大笑いさせてくれた素敵な登場人物たち
《花千骨 2015》 2015|花千骨御一行様、現代にお成り~!
花千骨 2015|2015年の花千骨御一行様って、どんな人たち?

《花千骨》主题曲MV 不可说-片花 霍建华丽颖动情对唱


花千骨 《爱殇》mv


花千骨 蚀骨画