2012年12月14日金曜日

铜雀台 2012 (曹操暗殺 三国志外伝) -- 刘亦菲 vs 曹操(周润发)


▼

項羽と劉邦の物語を描く 《鸿门宴》 2011 では、項羽(冯绍峰)の愛姫・虞姬(虞美人)を演じた刘亦菲ですが、三国時代を舞台にした

《铜雀台》 2012

では、貂蝉を演じています--というのは嘘でもないのですが、刘亦菲は、曹操を殺すために、青梅竹马な穆顺(玉木宏)と共に铜雀台に送り込まれる灵雎という美女を演じています。

今年(2012年)、刘亦菲が出た映画は

《四大名捕》 2012
《铜雀台》 2012

《倩女幽魂》 2011
の2本だと思います。《倩女幽魂(チャイニーズゴーストストーリー)》 2011 の大失敗で、中国の映画人は刘亦菲の使い方を再認識し、《神雕侠侣》 2006 に回帰したのでしょう。《四大名捕》で も  《铜雀台》でも、刘亦菲は暗くて重い美女を担当します。

映画は、曹操と結託した呉の孫権が関羽を倒し、曹操は関羽の首と対面して、铜雀台に帰還するところから始まります。

このシーンでの曹操=周润发(チョウ・ユンファ)は、とても暴力的です。息子の曹丕と献帝を冷たくあしらい、太医にプレゼントされた美女・灵雎を抱えて寝室に入ると、灵雎をどさっとベッドに放り出します。

《孔子》  2010
わあ。帰ってきた周润发でしょうか。けっこういいです。《孔子(孔子の教え)》 2010 では、孔子を演じ、第2回金扫帚奖(中国最低映画大賞)で作品賞に輝いた周润发です。李连杰(ジェット・リー)と同様、最近の周润发はちょっと情けないように思いますが、そんなイメージを一新している感じです。

刘亦菲と監督・赵林山
この映画の監督は、赵林山という広告畑の人です。これが映画監督としてのデビュー作です。撮影が张艺谋監督御用達の赵小丁、美術が種田陽平--というわけで、暴力的なシーンがずいぶんとおしゃれな映像で展開されます。

仲良しの灵雎と穆顺は子供のとき誘拐され、同じく誘拐された多くの子供たちと共に、武術の訓練をさせられます。子供たちは大人になって、ついに曹操打倒計画に参加することになります。

映画は、刘亦菲演じる灵雎の語りで物語が展開していきます。灵雎は铜雀台に出発するシーンを回想しながら言います。

我们所有的努力都是为了杀一个人,杀一个全天下权利最大的人。
(私たちの訓練の目的はある人間を殺すためだった。殺すべき人間とは、この世で最も権力のある人間だ)

わあ。けっこう胸が高鳴ります。

*

ところで “铜雀台” とは、いったいなんなんでしょう。百度百科には、こんなふうに書かれています。

铜雀台位于河北临漳县境内,距县城18公里。这里古称邺,古邺城始建于春秋齐桓公时,三国时期,曹操击败袁绍后营建邺都,修建了铜雀、金虎、冰井三台,即史书中之“邺三台”。

(銅雀台は河北省の臨漳県に位置した、18キロ平米の都市である。ここは、かつて邺yè(鄴)と呼ばれ、春秋時代の齐桓公がここに邺城を造った。三国時代においては、袁绍を撃破した後、曹操はここに邺都という都市を造り、铜雀台、金虎台、冰井台という建設物を建てた。これは“邺三台”と呼ばれる。)

《赤壁·铜雀台》 
革命のたびに、なんでも壊したり燃やしてしまうのが中国の歴史であるため、もちろん“铜雀台”は残っていません。曹操政権御用達のテーマパークのようなものだったのかもしれません。

なお、《赤壁·铜雀台》 というセクシーな映画(映像? または写真集?)があるようです。銅雀台における、曹操と二桥(张馨予)の物語を描いているようですが、実体は明らかではありません。

东方美神 张馨予[赤壁铜雀台][春江花月夜] 古筝


三国志平話では、曹操と戦うことになかなか煮え切らない孫権の軍師・周瑜に、诸葛亮はこう言うそうです。

「曹操が铜雀台を立て、天下の美女を根こそぎ集めようとしていることをお考えになるべきです。いま曹操は呉を攻略して、喬公の二人の娘(上の娘の大喬は孫権の亡兄孫策の妻、下の小喬は周瑜の妻)を、わがものにしようとしております。」
--「三国志演義」井波律子著(岩波新書)

こんなセリフが 《赤壁》 であったかどうかは覚えていませんが、これに挑発されて、周瑜は曹操との戦いを決意して、赤壁の戦いが実現します。今年、ぼくたちを笑わせてくれた香港のテレビドラマ《回到三国》では、小喬(二桥)は公主病という扱いになっていました。

*

このブログでは三国時代ものの映画やドラマとして、こんなのを見ています。

《关云长》 孙俪
《超时空要爱》 1998
《赤壁(レッドクリフ)》 2008-2009
《越光宝盒》 2010
《关云长(三国志英傑伝 関羽)》 2011
《回到三国》 2012

《关云长》 2011 は、曹操(姜文)と关云长(関羽|甄子丹)についての物語でしたが、せっかく孙俪が出ているのに、第3回金扫帚奖(中国最低映画大賞)作品賞を獲得しています。

三国時代の歴史状況については、

《回到三国》 2012 - 5分でわかる三国志人物伝
《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族

《超时空要爱》
などに書いたのですが、こんなにわか仕立ての知識では、この《铜雀台》 2012 には通用しませんでした。三国志に詳しくないぼくたちが、《铜雀台》 を楽しむための歴史背景をざっとまとめておきます。

まずは、貂蝉diāochánの物語です。漢末の混乱において、董卓が権力を握ります。董卓を補佐するのが、無茶苦茶強いけれど頭は強くない呂布です。董卓一派は、漢末混乱の大きな要因である宦官を皆殺しにします。

《越光宝盒》  孙俪
しかし、あまりに横暴な董卓一派を排除しようという動きも活発です。曹操の任務が、董卓一派排除です。でも、直接に董卓を殺害する陰謀をはかるのは、董卓一派の官僚・王允です。王允は自分の歌技である貂蝉に、董卓と呂布の両方を誘惑させて、まんまと呂布に董卓を殺害させます。

《回到三国》 
漢末の混乱において活躍する董卓、呂布、曹操、刘备などは、黄巾の乱制圧をお題目としています。つまり、誰もが、漢政権を革命して新政権を樹立するのが目的ではなく、漢政権を継承するのを目的にするわけです。このことは、以後400年にわたる分裂時代がはじまってしまう大きな要因のようにも思えます。

伏皇后と伏完
呂布が董卓を殺したあと、曹操は呂布一派や反董卓の主力勢力である袁一族を撃破して、権力を手にします。皇帝は、董卓がかつぎだした献帝のままとします。

どんな映画やドラマでも、情けなく描かれるのが献帝です。この人の奥さんが官僚・伏完の娘である伏皇后です。献帝一派は実権を握る曹操に不満なわけで、曹操に対するクーデターも企てます。

*

この映画の前半では、刘亦菲も周润发もいきいきしていて、展開の切れもよく、撮影・赵小丁+美術・種田陽平による華麗なる映像もすてきです。

ただし、後半になると華麗なる映像は華麗なのですが、ちょっと飽きてきます。これは、曹操の暴力性がちょっと薄れて来るからかもしれません。

なお、この映画のシナリオは、こんなふうにつくられたのだと監督の赵林山は語っています。

曹操のお墓(曹操墓) ? ? ?
“编剧方面我请来了目前国内一线编剧团队,第一稿是《疯狂的石头》编剧周智勇写的,第二稿是张艺谋的御用编剧王斌完成的,最后一稿目前在修改当中,也是一位业内的大腕级编剧来完成。三位编剧对这个构思特别感兴趣,在取材方面绞尽脑汁。《铜雀台》是纯正意义的古装片,不神话不穿越,主要描写老年的曹操在权谋、军事、爱情以及他的诗方面的故事。“

また、赵林山がこの映画を構想するきっかけになったのは、曹操のお墓(曹操墓)にまつわるニュースだったそうです。

彼は、この物語が“不神话不穿越(おとぎ話しでもないし、タイムトリップものでもない)とも言っています。

劉亦菲 - 等雪來(电影《铜雀台》主题曲)MV


《铜雀台》终极预告片

2012年12月10日月曜日

四大名捕(ドラゴン・フォー 秘密の特殊捜査官 / 隠密) 2012|刘亦菲、邓超に恋する

▼

今年(2012年)の夏

《四大名捕》 2012

という映画が公開されました。

今年(2012年)の刘亦菲の映画には、あと秋に公開された 《铜雀台》 があります。刘亦菲の2012年は、充実の年だったように思います。

《四大名捕》というのは、まずは温瑞安という人が書いた武侠小说です。温瑞安という人はマレーシア出身で、台湾大学に留学しています。

なんかの理由があって、台湾を追い出され、香港や大陸で、武侠小说家として活躍しているようです。つまり、温瑞安は、金庸後の新世代(と呼ぶにはおっさんですが…)の武侠小说家です。

《四大名捕》は、中国語圏で何度かテレビドラマ化されています。《四大名捕》とはなんなのかというと、つまりは《必殺仕掛人》です。《必殺仕掛人》とは、権力の走狗が悪者を懲らしめるお話でした。

温瑞安は、《必殺仕掛人》シリーズのテレビドラマとか、原作小説に触発されて《四大名捕》を書いたように思いますが、本当かどうかはわかりません。

《四大名捕》の師匠(親分)が、诸葛正我(神侯|小花)という人です。诸葛先生が率いる4人の弟子=四大名捕は、こんなメンバーです。

无情(盛崖余)
铁手(铁游夏)
追命(崔略商)
冷血(冷凌弃)

《四大名捕》 2012 では、诸葛先生は神侯府という皇帝直属の特務機関を運営しています。映画は、神侯府の新たなメンバーとして、追命と冷血が加わるところからはじまります。どんな役者構成かというと、こうなっています。

无情(刘亦菲)
铁手(邹兆龙)
追命(郑中基)
冷血(邓超)

わあ。なかなかの豪華メンバーです。とはいえ、出来のいい中国映画なんてめったにないわけだし、とりわけ刘亦菲が出る映画はひどいのがお約束なので、多くを期待してはいけません。でも、刘亦菲が出てるんだから、見ないわけにはいきません。

しかし、なんで刘亦菲がここにいるのでしょうか? 彼女が男装して无情を演じるのであれば、うきうきしてしまいそうですが、そうではありません。彼女は車椅子に乗る障害者であり、テレパシーとテレキネシスを駆使します。

ファンタスティック・フォー
わあ。なんで? この映画の英語タイトルは 《The Four》 です。《Fantastic Four》というアメリカンコミックがあります。4人の若者が超能力者となってしまい、悪と戦う物語で、アニメやドラマや映画にもなっています。

そうなのです。この映画の四大名捕たちは、超能力者に改編されているのです。どんな超能力かというと、こんな具合です。

・无情
擅长读心术和意念控物
(テレパシーとテレキネシスに長ける)
・铁手
双臂拥有神力,懂制作工具
(むきむきな体になって機械を工作する)
・追命
最大的特点就是腿功无敌,跑得快
(走るのが速く、飛ぶがごとくである)
・冷血
被狼养大,身中狼毒,情绪激动会变身狼人
(狼に育てられた狼男)

X-メン
冷血が、狼に育てられた狼男であることに注目しましょう。原作小説でも、冷血は狼に育てられたようですが、“超能力者としての狼男”というキャラクターとして思い出されるのは《X-メン》でしょう。

そうなのです。《四大名捕》 2012 とは 《Fantastic Four》というマーベルコミックよりも、より 《X-Men》というマーベルコミックであり、実質的には2000年から作られた、プロフェッサーX が率いるミュータント軍団が地球の危機に立ち向かう  《X-MEN》  シリーズなのです。

そういうわけで、この映画は、はじめから三部作であることが決まっています。監督は、陈嘉上という人です。このブログでは、こんな陈嘉上作品を見ています。

《武状元苏乞儿》 1992
《画皮》 2008
《画壁》 2011

蝴蝶(方安娜)
ツイ・ハークが、お笑い映画を作れないのと同様に、質は違うのですが、この人もお笑い映画を作りきれない監督のように思います。悪しき例が、《武状元苏乞儿》 1992 と 《画壁》 2011 です。

郑中基を使うからには--という気持ちで、お笑い的な要素を付加したいのだとは思うのですが、失敗しています。

郑中基と陈嘉上
でも、刘亦菲が出る限り、物語を重くしてしまうという法則は、よく理解しているように思います。刘亦菲ファンにとっては、久しぶりに彼女らしい彼女に出会えます。

来年(2013年)には、PART2とPART3が公開されるようなので、楽しみにしておきましょう。

ちょっと気になるのが、铁手が恋する蝴蝶を演じる方安娜です。

劉亦菲[2012.06.23]電影《四大名捕》主題曲《夢不死》


2012年12月2日日曜日

笑傲江湖 1990 -- 金庸映画観賞講座


《笑傲江湖》 2001
日本人にとっては、《笑傲江湖》 と言えば、2001年の李亚鹏版ということになるでしょう。日本でも、テレビ放映されたりDVDが発売されているみたいだからです。ぼくも好きです。

エンディングタイトルを振り返ってみましょうか。

笑傲江湖 ED片尾


あるいは、こんなのも見てみますか。

红军版笑傲江湖

※この紅軍は、とても多くの演奏をしています。あれこれ楽しんでください。

《笑傲江湖》 2012 あらら
《笑傲江湖》 2001 は、今でも人気があることがわかります。放映当時、金庸自身やファンからさんざん文句を言われたそうですが、このドラマが面白かったから、みんなが何かを言いたくなったように思います。

*

いろいろな《笑傲江湖》があるわけですが、ここでは

《笑傲江湖》 1990(香港)

を見てみたいと思います。登場メンバーは、こんな具合になっています。

令狐冲(许冠杰)
陆大有(张明敏):冲のお友達
风清扬(韩英杰)
岳不群(刘兆铭)
岳灵珊(叶童)
左冷禅(元华):五岳派盟主
刘正风(午马)
曲洋(林正英)
任盈盈(张敏):日月神教坛主
蓝凤凰(袁洁莹):云南五毒教教主
林震南(金山)
厂公(刘洵):东厂主管太监
欧阳全(张学友)

欠けている人たちのことは別にして、おなじみなメンバーばかりです。でも、知らない人もいます。厂公と欧阳全です。

厂公というのは、东厂という明朝政府の諜報機関の長である宦官(太监)です。だから、厂公の部下である欧阳全(張学友)は、彼を厂公と呼びます。欧阳全は、欧阳峰みたいな名前からして、性格が悪いことがわかります。

注目すべきは盈盈と凤凰(五毒教教主)のコンビでしょう。盈盈は日月神教坛主で、坛主を補佐するのが、五毒教教主の凤凰です。

香港のお笑い映画では、この二人のようなお笑い女性コンビがよく登場します。この映画の张敏の扱いには不満もあるのですが、けっこう笑わせてくれます。

刘正风(午马)と曲洋(林正英)
《笑傲江湖》 1990 は、(なんと!)禁宫(皇宮)から盗まれた“葵花宝典”にまつわる物語です。なのですが、林震南がいるのに、なぜ林平之がいないのでしょうか? 見てのお楽しみです。

この映画では“葵花宝典”の正体については、明らかにされません。ぼくが見たバージョンでは、オープニングで、きれいに刺繍された布に血が飛び散りますが、オリジナルではそうではなかったかもしれません。

令狐冲と灵珊は、たまたま船のなかで曲洋(林正英)と出会います。曲洋は、正派から追われています。そんなことは知らない令狐冲は、曲洋に言います。

你放心。我们不是日月神教的人。
(おじさん。心配しなくてもいいよ。ぼくたちは日月神教じゃないから)

林正英の曲洋は言います。

我是。(わしは、そう[日月神教]だ)

こうして、刘正风(午马)+曲洋+令狐冲のコラボレーションが展開します。

            *

《笑傲江湖》 1990 は、《スウォーズマン/剣士列伝》というタイトルで検索すれば、あれこれ情報を得られるようです。

ならばここでは、金庸もの映画を、ぼくたちはどのように楽しむべきかを、ちょっと考えてみたいと思います。

まずは、金庸ドラマとはお笑いであることを忘れてはいけません。金庸は、人を笑わすために小説を書いていたはずです。

間違っても、武功シーンの出来がどうのなどということを、金庸もの映画において語ってはいけません。

映像的にどれだけすばらしい武功シーンがあったとしても、それは笑うためのものであって、映画を評価したり、泣いたり感動したり人生について考えるためのシーンではありません。

このことを勘違いしているのが、当のツイ・ハークです。これについてはツイ・ハークの《青蛇》を見るとよくわかります。あるいは、同じように勘違いしているのが、程小东であると言ってもいいし、木村威夫であると言ってもいいでしょう。

ただし、武功の名前については注意しておきたいと思います。この映画には登場しませんが、盈盈のパパ任我行が開発した“吸星大法”などは、金庸ものではない映画でも、あちこちでお目にかかることになるからです。

蜜蜂を呼び集める鳳凰
また、長編小説を90分くらいにまとめるわけなので、当然、原作は改編されます。このとき、改編に異議を唱えるのではなく、どのように改編されたのかを楽しむべきでしょう。

この映画では“葵花宝典”盗難事件に(なんと!)太监が乗り出すわけですが、それだけで笑えるわけです。

もうひとつ必ず登場するのが、ほかの金庸ドラマからの流用シーンです。これは、うれしいお楽しみです。この映画ではたとえば、林家を襲撃するのは(なんと!)左冷禅なのですが、盈盈と凤凰は左冷禅を蜜蜂作戦でやっつけます。

いま、昔の金庸もの香港映画を見るとき、ぼくたちは、このようなとてもぜいたくな喜びを味わえるわけです。当時の日本人(特に香港映画をもてはやしていた連中)に、いったい何がわかっていたのでしょう。

しかし、香港の人たちにとって、こんなことは常識というかあたりまえのことなわけです。金庸ものあるいはほかの武侠もの映画を見て、大笑いして映画館を出てきたことでしょう。

そういう意味では 《碧血剑》 1993 は、展開が無茶苦茶すぎですが、経典のひとつに数えるべきだと思います。

Swordsman Trailer(2012)HD English&Chinese

笑傲江湖之东方不败(女神伝説の章) 1992


《笑傲江湖》 1990 に続いて、ツイ・ハークがプロデュースしたのが

《笑傲江湖之东方不败》 1992

のようです。

ウィキペディア《スウォーズマン》の項では、《笑傲江湖》 1990 について、こんなことが書かれています。

“金庸はキン・フー映画のファンであった為に映画化には彼を指名。悪知恵の働くツイ・ハークは途中でキン・フーを追い出してしまうが、時間が足りなかったので無許可でキン・フーが監督したカットを利用した。大人の態度で許したキン・フーだが決して気分のよいものでもなかっ
た”
       --『武侠小説の巨人 金庸の世界』岡崎由美著

ツイ・ハークが、ずいぶんと悪者扱いされています。でも、ぼくはツイ・ハーク+李连杰(ジェット・リー)のワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナは好きです。

また、ウィキペディアにおいては、《笑傲江湖之东方不败(スウォーズマン/女神伝説の章)》について、こんなことも書かれています。

“「東方不敗」を演じたブリジット・リンはこれで「男装の麗人」のイメージを確立させた。”

へんてこりんな格好をすることを、中国語では“服妖”と言います。また、女が男装するのが“女扮男装”、男が女装するのが“男扮女装”です。

しかし、この映画で、あるいは他の《笑傲江湖》の映像もので、“東方不敗”は“男扮女装”ではあるものの、いったいどこの“東方不敗”が男装したというのでしょうか。

そういうことはともかく、この映画に登場するのはこんなメンバーです。

令狐冲(李连杰)
岳灵珊(李嘉欣)
任我行(任世官)
任盈盈(关之琳)
蓝凤凰(袁洁莹)
向问天(刘洵)
东方不败(林青霞)
东厂千户(黄子扬)
杨诗诗(余安安)
洪门达(张国梁)
服部千军(李子雄)
猿飞日月(钱嘉乐)

いよいよ东方不败が登場し、令狐冲を演じるのは李连杰(ジェット・リー)です。东方不败が登場するのであれば、任我行や向问天だって登場します。

でも、この映画の監督として

程小东

がクレジットされたとき、この映画に期待してはいけないことがわかります。たとえば、このブログでは程小东ものとして

《白蛇传说》 黄圣依
《白蛇传说》 2011

を見ました。黄圣依も李连杰も、あまりにかわいそうでした。

もしかしたら、李连杰って、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ以外にはいい映画がないのかもしれません。

《笑傲江湖》には関係ありませんが、《白蛇传说》と言えば、劇中劇ではあるものの、刘镇伟(ジェフ・ラウ)の《尸家重地(オカルト・ブルース)》を思い出したいと思います。

物語的に言うと、《笑傲江湖》 1990 あるいはこの《笑傲江湖之东方不败》 1992 が、なんでだめだめなのかというのは、林平之がいないために、令狐冲と、盈盈と灵珊の関係があいまいになってしまっているからです。

もしかしたら、王家卫(ウォン・カーウァイ)が《东邪西毒(楽園の瑕)》を構想した、直接のきっかけは《笑傲江湖》 1990 だったのかもしれません。

そんなわけで、林青霞(ブリジット・リン)と言えば、ぼくたちがまず楽しむべきは《東成西就 1993(大英雄)》で“大海无量”という武功を披露するシーンでしょう。

《東成西就》 1993 林青霞“大海无量”
《東成西就(大英雄)》 1993 / 《東成西就 2011》 の監督、刘镇伟(ジェフ・ラウ)は、性懲りもなく、《出水芙蓉》 2007 において “大海无量” を復活させます。

《出水芙蓉》 には、心に傷のある女の子役として、黄圣依も出ていました。

2012年11月19日月曜日

八星抱喜 2012 -- 甄子丹+古天乐+杨幂

▼

今年(2012年)公開された杨幂が出ている映画で、ひとつ見落としているのがありました。

《八星抱喜》 2012

この映画は、百度百科の冒頭で“贺岁喜剧电影”と紹介されています。お正月映画--わあ! なんてなつかしい響きでしょう。

と書いて、ぱっと思いついたお正月映画は、リアルタイムで見ているわけではありませんが、《初春狸御殿》 1959 でした。

スターがたくさん登場して、なんならミュージカル仕立てであってもいい、ぼくたちをハッピーにしてくれる映画--それがお正月映画でしょう。

この《八星抱喜》は、タイトルそのものが“八星”となっています。で、どんな“八星”なのかというと、こんな組み合わせになっています。

・ 李张:律师,陈思思的“便宜老爸”(黄百鸣)-陈思思:富家大小姐,为继承遗产选夫(杨幂)
・ 谭冠荣:追求梦想的音乐发烧友(甄子丹)-宋秋波:唱歌跑调的老歌手(吴君如)
・ 彭坚:建筑工人(古天乐)-Julie:摄影艺术家,追求艺术生涯(陈慧琳)
・ 华一声:外形“难看”的作家,唤作自己有金城武的面容(杜汶泽)-谈笑:瞎子想要寻找恋爱感觉的一个单纯女孩(熊黛林)

*

・ 李张(黄百鸣)::弁護士。陈思思の臨時パパ
・ 陈思思(杨幂):富豪の娘、遺産を受け継ぐために結婚しなければならない

・ 谭冠荣(甄子丹):売れない歌手
・ 宋秋波(吴君如):かつての歌手

・  彭坚(古天乐):建設労働者
・ Julie(陈慧琳):カメラマン

・  华一声(杜汶泽):ぶさいくな恋愛小説家。自称、顔は金城武
・ 谈笑(熊黛林):恋愛にあこがれる盲目の美少女

この4組のカップルが、どたばたのすえ、最後はハッピーになれるのかどうかがテーマとなります。

香港のテレビドラマというのは、現在でも存在します。そのことは、今年(2012年)の夏、《回到三国》というテレビドラマを見て確認しました。一方、現在では香港映画というのは存在しないと考えるべきであるようには思います。

ぼくたちはこのブログで、今年(2012年)、杨幂が出演した映画としてこんなのを見てきました。

《春娇与志明》
《画皮Ⅱ》
《大武当之天地密码》
《hold住爱》

あらま。どれもつまんねとケチをつける前に言うべきことは、どれも香港くさいということでしょう。なんでそうなのかというと、答えはとても簡単です。杨幂の彼氏が、香港の刘恺威だからです。

それがほんとうかどうかは知りません(中国に映画監督がいないだけかもしれません)。杨幂と刘恺威が、共演したのが《hold住爱》です。

周星驰がいなくなってしまった現在、香港のお笑い役者といえば古天乐が代表になってしまったのでしょうか。このへんの事情については、ぼくはまったく無知です。

このブログでは、古天乐が出ている映画は、《神奇侠侣》というのを見たように思います。ヒロインは、たしか吴君如でした。

あ。《倩女幽魂(チャイニーズゴーストストーリー) 2011 》にも、この人が出ていたかもしれません。あ。あと、見てはいませんが穿越もののテレビドラマにも出ていたような気がします。

《八星抱喜》について特筆すべきは、周星驰の穴を埋めるかのような怪演を演じているお笑いスター甄子丹でしょう。《东成西就 2011》では、こんなセリフがありました。

“司机大哥,开车别那么甄子丹,熊黛林一点就行了。”
(運転手さん。ドニー・イェンみたいな乱暴な運転はやめて。せめて、もうちょっと熊黛林くらいにして)

莫文蔚(カレン・モク)のセリフです。もしかしたら、お笑いスター甄子丹って、けっこう有名なのかもしれません。

莫文蔚に引き合いにだされた熊黛林も,この映画に·出ています。

どんなおねえさんなのか、一度見てみたいと思っていたのですが、179センチもある背の高いおねえさんでした。この人は、整形疑惑もあるようです。

さらに特筆すべきは、お笑いスター甄子丹のお相手が吴君如であることです。

なんの予備知識もなしに、この映画を見ていて、ぼくは、いったいどこのおばさまが甄子丹のお相手をしているのか、途中までわかりませんでした。この映画の吴君如の造形は、賞賛するべきように思います。

甄子丹とおばさまは、のど自慢大会みたいなのに出ようとして、涙ぐましい努力をします。

で、このおばさまは、よくもまあ、こう言います。「あたし、もう20すぎなのよ!」ぼくは、笑いすぎて、死にそうになってしまいました。吴君如だからこそのセリフのように思います。だって、たとえば莫文蔚が言ったとしたら、ストレートなお笑いにはならないように思います。

このセリフは、50になったら役者は引退すると言っていた甄子丹が、50間近になってそれを撤回し「俺はまだ28だ」と語ったことに由来するようです。

実際のところ甄子丹は演技らしい演技をしているわけではないのですが、さすがの吴君如おばちゃまです。このシーンというか、このセリフがあるだけで、この映画は存在価値があると言っていいでしょう。

クライマックスでは、彼女のボリューム感が、ひときわ強調されているというか、自然とむきだしになってしまっていて、ひときわ笑えると思います。

ぼくが見た吴君如おばちゃまの映画で、一番好きなのは《尸家重地(オカルト・ブルース)》ですが、この《八星抱喜》も、彼女が出演した映画のなかの偉大なる経典のひとつに加えておく必要があるはずです。

杨幂だけが、一応は若いよねと言えるものの、あとはおっさん、おばさんばかりの映画ですが、お正月映画って、そんなものであっていいように思います。

《八星抱喜》製作花絮