2014年11月24日月曜日

心花路放 2014|中国の公路片(ロードムービー) とは “お笑い珍道中” である



今(2014年11月)のところ、今年、中国で最もヒットした映画は、

心花路放 2014

という宁浩の最新作です。年内にまだ2、3本話題作が公開されるので、今年最大のヒットが確定したわけではありません。そんなことは、どうでもいいのですが……。

なお、《心花路放》 についてのあれこれのエピソードについては、、こっちの記事に書いておきました。

《心花路放》 2014 について知っておきたいいくつかの事

この映画は、徐峥黄渤が旅をしながら、あれこれの女の子たちと出会うロードムービーです。

中国語ではロードムービーのことを “公路片” と言います。ただし、中国の人が最も理解しがたい映画のジャンルのひとつがロードムービーです。

だから映画なんてほとんど見ない中国人は “公路片” などという言葉は知りません。ぼくが通っている中国語の学校の先生(80後)は、やっぱり “公路片” などという言葉は知っていませんでした。

ところが、そこそこ映画を見ている中国人は “公路片” という言葉を知っています。たとえば、最近受けた中国語の会話試験の試験官のおばちゃまは “公路片” という言葉を知っていて、ちょっとびっくりしました。

どういうことなのかとうと、ぼくがカタカナで書いているロードムービーとは、たとえば(古くてごめんなさい)ジム・ジャームッシュとかの映画のことです。そういったロードムービーと、中国語の “公路片” は等価ではありません。

たとえば、小資本映画ながら大ヒットした徐峥主演の

人在囧途 2010

を見ればよくわかります(“” についてなどはリンクを参照してください)。この映画はロードムービーと言えばロードムービーなのですが、そう言うよりは “お笑い珍道中” です。

これを受けて、中国ではタイトルに “囧” を付けたロードムービーもどきが大量生産されることになりました(たとえば  《车在囧途》 2012 参照)。

徐峥は、《人在囧途》 の続編である

人再囧途之泰囧 2013

では監督も手がけ、この映画も大ヒットします。そんなこんなで、中国におけるロードムービー= “公路片” とはすなわち “お笑い珍道中” であるということになったように思います。


では、日本語のカタカナで書くロードムービーというものが中国では存在しないのかというと、そういうわけでもありません。

今年(2014年)7月に公開されたのが、作家でありカーレーサーであり、良きパパである韩寒が映画監督にもなった

后会无期(いつか、また) 2014

です。韩寒は80後、90後にとってのカリスマであり、神様です。この 《后会无期》 は、欧美を意識した本格的なロードムービーを目指した映画です。

80後、90後は韩寒の忠実なファンであるため、彼らはこの 《后会无期》 にも好感度を示します。ただし、本来のロードムービーとは無縁な中国人にとって、たとえ80後、90後であっても、この映画のどこが面白いのかを語るにあたって、とっても苦労しているように思います。

個人的には、けっこうがんばった映画だと思いますが、体制内であらんかぎりのかっこよさを披露する韩寒の限界がよく表現されています。


《人再囧途之泰囧》 には、中途半端な役柄ながら黄渤も出演しています。そして、やはりロードムービーというよりは “お笑い珍道中” である 《心花路放》 の主役は徐峥と黄渤です。どうして、このことに意義があるのでしょうか。

宁浩がどんな映画を撮って来たのかを、簡単に紹介すると、こうなります。

疯狂的石头 2006(黄渤と徐峥は脇役)
疯狂的赛车 2009(黄渤が主役で徐峥は脇役)
无人区 2010|2013(徐峥が主役で黄渤は脇役)
黄金大劫案 2012(徐峥と黄渤は出演なし)

(より詳しいフィルモグラフィについては、宁浩(ニン・ハオ)の軌跡|主役は乗り物だ 参照)

宁浩の実質的な商業映画デビュー作 《疯狂的石头》 が大ヒットした結果、徐峥と黄渤が注目されることになります。徐峥と黄渤は、宁浩の映画においても、そうじゃない映画においてもどんどん有名になっていきます。


とりわけ黄渤は、周星驰の 《西游降魔(西遊記~はじまりのはじまり~)》 2013 において、周星驰をして “この映画において黄渤は中国のNo.1お笑いスターになった” と言わしめます。

この発言は、もちろん大きな誤解です。あきれてものが言えないというのは、このことです。“周星驰! ふざけるのも、いいかげんにしろ!” と言うしかありません。

《西游降魔(西遊記~はじまりのはじまり~)》 は、今年(2014年)日本でも公開されたようです。

とりわけ、徐峥は小資本映画の帝王として君臨することになります。たとえば、今年(2014年)公開されたのが 《催眠大师》 です。

《催眠大师》 のヒロイン(というには、もうけっこうなおばさんですが)は、香港の莫文蔚(カレン・モク)で、けっこうヒットしました。この映画も、“徐峥の出る映画は面白い!” というイメージを定着させました。


 《心花路放》 において徐峥と黄渤がどんな役柄なのかというと、徐峥は映画のプロデューサー、黄渤は売れなくなってしまった元歌手です。

宁浩は、いつも普通の人々を描いてきましたが、この映画では、ちょっと特別な人物が主人公です。

この映画では、宁浩ははじめてシナリオを担当していません。それが映画のプロデューサーとか元歌手とかが主人公になってしまった理由なのかどうかはわかりません。

映画プロデューサーである徐峥の車に注目してみましょう。何やら三国時代ふうの槍などの武器とかが満載されています。

この車には、こんな文字がペイントされています。

大型古装魔幻穿越剧
徐福你别走
(古代タイムトリップ大作
徐福、[日本に]行かないでくれ)

徐峥が演じる映画プロデューサーは 《徐福你别走》 という映画を企画していて、それは “古代タイムトリップ大作” であるという模様です。そんなわけで徐峥は “ちょっと待ってちょっと待って怎么啦” といった日本語も披露します。

徐福というのが誰かというと、秦の始皇帝が日本に派遣した伝説上の人物です。これにより、日本では文化が生まれてしまったわけです。

この 《徐福你别走》 は、現代の中国人が2000年前にタイムトリップして、“徐福你别走日本” を図るという物語で、宁浩いわく “これぞ究極の抗日映画だ!” ということです。

この映画が本当に作られることはないのでしょうが、ほんとに作ってほしいように思います。


最後に、この映画で徐峥と黄渤がどんな女の子たちと出会うのかを書こうと思っていたのですが、やっぱりそれは見てのお楽しみというものです。女優の名前だけ書いておきます。

袁泉
周冬雨
马苏
陶慧
张俪
刘美含
焦俊艳

ついつい、陈乔恩とか王珞丹を使ってしまう韩寒の 《后会无期》 とはだいぶん趣きが異なるメンバーです。ただし、袁泉は 《后会无期》 でも 《心花路放》 でも貫禄の好演をしています。このいきさつについては

《心花路放》 2014 について知っておきたいいくつかの事

を見てください。

あと、徐峥と黄渤が出会うシーンにちょこっと出てくる看護婦さんが、ぼくはお気に入りです。

【新歌】黄渤-去大理(心花路放插曲)


电影《心花路放》插曲—《阿凡达与屌丝男》MV


《心花路放》东北小姐1东北梗 【森馬Semir】


20140924 行者 “杀马特”周冬雨本色出演 心花路放幕后特辑


20140830 开讲啦 宁浩:我不愿停在这里

2014年11月9日日曜日

后会无期(いつか、また) 2014|韓寒 vs 郭敬明




今年(2014年)の7月24日に公開された話題作が

后会无期(いつか、また) 2014

です。なんで話題作なのかというと、シナリオ+監督が、中国の若者たちに人気のある韓寒(ハン・ハン)という作家だからです。

韩寒は、高校生時代からあれこれの文章を発表して注目を集めます。大学1年生のとき(1999年)、第1回全国新概念作文比赛で一等賞を獲得します。翌年(2000年)の全国新概念作文比赛では二等賞になります。

この年(2000年)、彼は中学生時代の生活を描いた小説 《三重门》 を発表し、これで一気に火がつきます。この小説は200万部以上売れたそうで、ここ20年における文芸作品においては、最も売れた小説だとのことです。

韩寒は大学を中退するのですが、エッセイ集や小説はいずれもベストセラーになります。そんなこんなで、韩寒の本は日本で出版されたりとか、NHKが取材番組を放映したりとかしているのかもしれません。

2010年、韩寒はカーレーサーになります。芸能人がカーレーサーになったり、オートの選手になったりする例はあるわけですが、作家がカーレーサーになったということで、韩寒はアメリカでも注目され TIME(时代周刊)の表紙も飾ります。


作家である韩寒が映画を作るのが注目されるのには、もう一つの理由があります。韩寒は1983年生まれなわけですが、やはり1983年生まれの郭敬明という、やはり若い女の子に人気の作家がいるからです。

郭敬明は昨年(2013年)、自分の小説をもとに映画監督としてデビューします。これが 《小時代》 です。この映画は杨幂が主演して、はじめて大ヒットした記念すべき作品となります。ただし、どんな映画かというと、つまらないだけです。

小時代》 のイケメンの代表の一人が柯震东です。この人が誰かというと、今をときめく台湾のアイドルで、今年(2014年)の8月、北京で房祖名とともに麻薬容疑で拘束されました。

日本では、ジャッキー・チェンの息子(房祖名:ジェイシー・チャン)が麻薬で捕まったという話題ばかりでした。しかし、中国では房祖名よりも、柯震东が圧倒的に話題の中心になっていました。房祖名なんて、誰も知らないからです。

房祖名は正式に逮捕されたものの、柯震东は釈放されて台湾に戻り、謝罪会見などを開いて、当分は活動も自粛しているようです。日本では考えられないことですが、大陸でも台湾でも特にお咎めはないようです。

ただし、映画 《小時代》 シリーズはPART3まで公開されていて、大結局となる 《小時代4》 は今頃(2014年11月)公開されているはずだったのですが、来年(2015年)に公開延期された模様です。


そんなわけで韩寒が映画を撮るということは、アイドル作家同士が、文章ではなく映画監督として対決するという構図になったわけです。

韩寒のあだ名は(国民)岳父です。一方、郭敬明のあだ名は四娘あるいは小四といいます。

韩寒がなんで岳父(妻の父)なのかというと、昨年(2013年)3歳の娘の写真を微博で公開し、その愛らしさが話題になったからです。

冯绍峰(《后会无期》 の主演男優)とか阿信だってせいぜい伯父としか呼ばれていないのに、なんと韩寒は岳父と呼ばれる--といった意見もあります。

なんで郭敬明が四娘とか小四と呼ばれるのかは不明です。

小三の次ってことだよ」とか「女っぽいからだろ」とか「身長が140だからだ」とか、あれこれの意見がありますが決定打はないように思います。

つまりは、郭敬明のちゃらちゃらした青春小説はちゃらちゃらした女の子に受け、韩寒のどちらかといえば骨太な小説やエッセイは、男女の区別なく80后と90后に受けているということでしょう。


《后会无期》 は、中国で一番東に位置する东极岛から中国で最も西に旅する物語です。教師の江河(陈柏霖)が赴任することになり、友達の马浩汉(冯绍峰)が自分の車で江河を送っていくからです。

というわけで、马浩汉と江河は、道中あれこれの人間と出会うことになります。どんな人間と会うことになるのかというと、こうなります。

周沫(陈乔恩

この子は马浩汉の幼馴染で、映画のエキストラをやっています。目は出そうもないのですが、あきらめずに健気にがんばっています。

とはいえ演じているのは陈乔恩で、彼女は台湾のアイドルドラマの女王です。日本でも 《新笑傲江湖》 とか 《王的女人》 で、すっかりおなじみになったことと思います。

苏米(王珞丹

この子は美人局をやっているのですが、江河は彼女を本気で好きになってしまいます。

王珞丹と言えば80后な “四小花旦” のひとりとして有名なわけです。ほかの三人は黄圣依、杨幂、刘亦菲で、こっちの三人は日本でもあれこれ有名ではあります。

王珞丹のドラマとか映画は、ぼくは今までみたことがありませんでした。

刘莺莺(袁泉

このドラマで最も存在感のある女性がこの人です。ビリヤード場の経営者で、彼女と马浩汉んおビリヤード対決は、この映画の一番のクライマックスでしょう。

彼女と马浩汉とはもともとメールフレンドなのですが、実際にはどういう関係になるのかは、映画を見て楽しんでください。

袁泉という人は、たくさんの映画やドラマには出ていないものの、あれこれの賞を取っている演技派の女優さんのようです。実は、昨年(2014)中国で最もヒットした宁浩のロードムービー  《心花路放》 にも出ています。韩寒が、宁浩に ”誰かいい女優はいないか” と聞いて、宁浩は袁泉を紹介したそうです。

阿吕(钟汉良

马浩汉と江河は、最後には男とも出会います。それが钟汉良です。

钟汉良は最近では 《新天龙八部》 2013 で乔峰を演じていましたが、日本で放映されたのかどうかは知りません。

出来のいいドラマではありませんでしたが、ラストだけは要注目でした。

马浩汉と江河は、阿吕と男同士として意気投合するのですが、さて、阿吕がどんな役割を担うのかは、これも実際に見てのお楽しみです。


中国において最も理解されない映画のジャンルのひとつがロードムービーです。ロードムービーとは、起承転結のドラマではないからでしょう。なお、中国語ではロードムービーのことを “公路片” とか “公路电影”などと呼びます。

ぼくが一番好きな中国映画は娄烨の 《苏州河ふたりの人魚)》 2000 です。この映画はロードムービーというわけではありませんが、ロードムービーと言ってもいいようには思います。

ぼくは、何人かの中国の友達に 《苏州河》 を見せたのですが、誰にもこの映画のチャーミングさは理解してもらえませんでした。

《苏州河》 が作られてから、もう15年くらい経ったわけですが、この 《后会无期》 においてようやくというか、初めて中国でロードムービーがヒットしました。さらには昨年(2014年)11月にはロードムービーというよりは “お笑い珍道中” と言ったほうが早い 《心花路放》 が公開されます。


で、こういったあれこれの話は、宁浩の 《心花路放》 の記事に引き継ぎたいと思います。

たぶん2015年、《后会无期》 は日本でも 《いつか、また》 というタイトルで公開されたようです。 《いつか、また》 では “后会有期” そのままなんですが……そういうことは、どうでもいいでしょ。

《后会无期》终极预告片


鄧紫棋 G.E.M - 后会无期 The Continent MV


快乐大本营Happy Camp-韩寒协《后会无期》现场出金句 冯绍峰陈柏霖互爆丑照-【湖南卫视官方版1080P】20140726