2015年12月28日月曜日

港囧(ロスト・イン香港) 2015|大陸の香港文化と日本の香港文化--あるいは、なんでゴッホから始まるのか



徐峥が主演・監督した 《港囧》 は今年(2015年)の秋に公開され、大ヒットしました。香港以外の人から見れば、香港が舞台の映画で王菲(フェイ・ウォン)が主題曲を歌うのは、とても当然のことでしょう。

王菲 -《清風徐來》電影《港囧》主題曲


この映画は、徐峥が20年前の初恋の相手と、香港で20年ぶりに出会おうとする物語です。そんなわけで、80年代から90年代の香港の楽曲がたくさん使われています。

この記事では、80~90年代の香港文化と、この映画あるいは大陸(内地)との関係についてちょっと考えながら、映画で流れる楽曲を聞いてみましょう。

 《港囧》 って何?  “囧シリーズ” って何?  徐峥って誰?  などについては、こっちの記事を見てください。

港囧 2015|“はじめてのキス” あるいは “落下” とか “墜落” とか


香港の80~90年代を代表するスターといえば、なんといっても张国荣(レスリー・チャン)でしょう。そういうことで、《港囧》 の冒頭でも张国荣の古い映画が流れます。あるいは、20年前に美大生だった徐来(徐峥)と杨伊(杜鹃)は 《阿飞正传(欲望の翼)》 の大きな看板を描いていたりします。

日本での香港(映画)ブームというのは80年代後半から90年前半だったような気がします。こういった話に、成龙(ジャッキー・チェン)の映画みたいなのを入れる必要はないでしょう。

周润发(チョウ・ユンファ)のギャングもの、チャイニーズ・ゴースト・ストーリーとかキョンシーもの、王家卫(ウォン・カーウァイ)の青春映画、周星驰(チャウ・シンチー)のお笑い映画、あるいは王菲の歌……などが代表でしょうか。


では、大陸では香港の映画や音楽がどのように入ってきたのでしょうか。ネットで、あれこれ調べていたら、こんな本がありました。

与我们青春有关的记忆

中国成立から2010年あたりまでのアイドルの歴史についての本なのですが、半分は中国人から見た香港映画史みたいな本になっています。

大陸の人々がはじめて香港の歌手たちを見て、彼らの歌を聞いたのは、1984年のCNN(央视)の春晚(春节联欢晚会)でのことだったそうです。

著者の吴晓赟は、香港の歌手、香港の歌が、とても都会的でおしゃれ(軽妙洒脱)に見えた……というようなことを言っています。

日本で言えば、戦後の若者たちがアメリカ文化に大きな衝撃を受けた……そんな感じでしょうか。

鄧小平の改革開放が始まるのが1978年ですが、1984年くらいになって大陸にも香港文化が入ってきたのでしょう。したがって、現在(2015年)から20年前の1995年には、かなり多くの香港文化が流入していたことでしょう。また、六四天安門事件は、1989年6月4日です。

1972年生まれの徐峥は今43歳なので、1995年には23歳でした。この映画で,徐峥演じる徐来の奥様、菠菜を演じている1976年生まれの赵薇(ヴィッキー・チャオ)は、20年前には19歳です。当時の10代、20代すなわち70后にとっての香港文化は、日本で言えば60年代、70年代の若者たちにとっての欧米ロック文化みたいなものでしょうか。

日本での香港ブームにおいてイデオローグを務めたのが、山田宏一とか宇田川幸洋とかだったように思います。日本では、いまだに香港映画について何か語るとき、この人たちの言い草をだらだらとひきずっているように思います。今となっては、この人たちの悪影響ばかり残っている……そんなようにも思います。

日本での香港ブームと大陸での香港文化受容には大きな違いがあるように思いますが、その大きなひとつが大陸では香港TVBのテレビドラマが放映されていたということです。《港囧》 では、香港TVBのテレビドラマの楽曲がいくつか流れます。

日本でも香港TVBのテレビドラマはいくつかDVDになってはいるようですが、日本の香港理解に決定的に欠けていたのが香港TVBのテレビドラマだと言っていいように思います。

また1993年には、中国・香港合作で张国荣主演の 《霸王别姬(さらば、わが愛)》 が香港と大陸で公開されています。香港映画とは関係ありませんが、日本で中国映画が語られる場合、今でも陈凯歌とか张艺谋とかが語られてしまうのも、大きな不幸のひとつでしょう。


では、 《港囧》  でどんな楽曲が流れるのかを見ていきましょう。

许冠杰 沧海一声笑


70后にとっての “あこがれの香港文化” を、徐峥はこの映画でノスタルジックに語るわけではありません。それはそれで、とっても立派な態度です。そんなことは、現代の中国人--特に80后、90后たちにとっては何の関係もないからです。

日本人にもなじみ深い曲もいくつか流れます。徐峥がSMクラブで、絵を入れる筒が寝ている黒人の足に引っかかってしまい、黒人を起こさずに丸筒を取ろうとするのですが、結局黒人との格闘になってしまうとき流れるのが、《笑傲江湖》 1990 の “沧海一声笑” です。

日本では、《笑傲江湖(スウォーズマン 剣士列伝)》 1990 はDVDで見られるようです。監督は、山田宏一とか宇田川幸洋とかが大好きな胡金铨(キンフー)で、特に大褒めする必要はないと思いますが、いい映画でした。

日本でも公開された 《笑傲江湖Ⅱ東方不敗(スウォーズマン 女神伝説の章)》 の主題歌でもあるので、覚えている人も少くないことでしょう。林青霞(ブリジット・リン)の东方不败が話題になったと思いますが、アクション監督から映画監督になった程小东という人が、いい映画を作るのは永遠に不可能であるように感じます。、


卢冠廷 - 一生所爱


徐来(徐峥)がいよいよ初恋の相手と出会おうかというシーンで流れるのが 《大话西游(チャイニーズ・オデッセイ)》 1994 の “一生所爱” です。日本人から見ると “なんだ、ノスタルジックやってるじゃないか” と思えてしまうかもしれません。

中国の映画ファンにとって、最も有名な映画というのは 《大话西游》 ではないでしょうか。総合文化サイト “豆瓣” での 《大话西游之月光宝盒(1)》 の評価は、現在(2015年12月)301227人が投票して10点満点の8.9、《大话西游之大圣娶亲(2)》 は347252人が投票して9.1です(この記事の下書きは2、3日前に書いたものだったので、今、数字を訂正しました。2、3日の間で1000票前後も増えていました)。

Part1よりPart2のほうが投票者も多く評価も高いのは、もちろんPart2のラストシーンが “一生所爱” が流れるあのシーンだからです。

日本ではヒットしなかったのであろう周星驰の 《西游・降魔篇》 だって2013年の公開です。そういうわけで、《大话西游》 と “一生所爱” は現代の中国において極めて現代的な映画であり楽曲であり、誰でも(映画ファンでなくとも)“一生所爱” は知っているわけです。


倩女幽魂


あれこれあれこれあって、徐来は初恋の扬伊に会うことをいったんは断念します。しかし、意を決して “2046” 号室にいる扬伊に会いに行くことにします。その道中のバスの中とかで流れるのが张国荣の 《倩女幽魂(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)》 1987 の主題曲です。

これも日本の香港映画ファンにとって、ノスタルジックと言えばノスタルジックなわけですが、これも中国の映画ファンにとってはノスタルジックなわけではないでしょう。2011年には刘亦菲と古天乐のあまりに駄作なリメイクも作られています。

徐峥が “決め” のシーンで “一生所爱” と “倩女幽魂” を選んだのは間違いではないように思います。


1980版" 上海滩" 主题曲原声版


A Better Tomorrow Main Theme (best quality)


英雄本色(A Better Tomorrow) 當年情-張國榮


1995年ころ、10代や20代だった大陸や日本の香港映画ファンの男の子にとって、周润发を語らないわけにはいかないでしょう。

周润发の少年時代からTVBに入るまでの苦労話は(たぶん)日本でも知られていることと思います。周润发の出世作であるTVBテレビドラマが 《上海滩》 1980 です。もちろん、黄晓明の 《新上海滩(新・上海グランド)》 2007 は、このリメイクです。

当時の香港では、まずTVBの役者になり、テレビドラマが大ヒットして、映画スターになるというのがひとつのパターンです。たとえば、刘德华(アンディ・ラウ)もこのパターンであり、周星驰が梁朝伟(トニー・レオン)を誘っていっしょにTVBの試験を受けたのも有名な話しでしょう。

このパターンの、最後のスターが古天乐(ルイス・クー)でしょう。香港返還直前に放映された古天乐の 《神雕侠侣》 1995 は、今でも 《神雕侠侣》 ものの最強の経典とされています。TVBからスターになった人たちは、誰もが金庸ドラマの主演をしているわけですが、周润发だって、あまりになんだかなーではありますが 《笑傲江湖》 1984 があります。

そんなわけで、大陸においては “周润发と刘德华には金庸ドラマの傑作はないよな” とか、“《鹿鼎记》 ならば梁朝伟と刘德华の1984版より、陈小春版 1989 だよな” とか、そういう議論ができるわけですが、そういう文化が日本には欠落しているわけです。

銀幕のスター周润发が確立する 《英雄本色(男たちの挽歌)》 1986 については、ここで今更あれこれ言う必要はないでしょう。


《港囧》 において、徐峥は映画について、2度語ります。1つは冒頭のほうで、徐峥と包贝尔がドキュメンタリー映画について語るシーンです。包贝尔が “ぼくのパパのロバート・フラハティが……” と言うと、徐峥が “おまえのパパがなんでフラハティなんだ” と突っ込みます。

拉拉(包贝尔)はドキュメンタリー映画を目指しているわけで、ドキュメンタリーの父=ロバート・フラハティが、拉拉のパパであるのは、それはそれで筋が通っているお笑いなわけです。したがって、拉拉のママはレニ・リーフェンシュタールということになります。

もうひとつは徐来(徐峥)と拉拉が、王晶(バリー・ウォン)の撮影現場に出くわすシーンです。80~90年台の香港映画を代表する監督が王晶であるというのは、王晶の映画の出来がどうのこうのというのは別にして、それはそれで間違いではないでしょう。王晶は自分で映画にでるのも好きですが、この人は絵になります。

また、おなじみの香港の役者たちも登場します。

たとえば、周星驰映画にけっこう出ている苑琼丹は、SMクラブの女子高生(小学生?)です。くわしいことは書きませんが、見て笑ってください。

林雪には、現代の香港映画や中国映画で、ちょくちょくその個性的な体格にお目にかかります。

たとえば 《毒战》、《101次求婚》、《热浪球爱战》、《越光宝盒》、《大话天仙》、《白蛇传说》 などなどです。この人も周星驰映画にけっこう出ています。

《港囧》 で林雪がどんなふうに登場するかというと、林雪が線香をあげているところに、包贝尔が飛び込んできて、骨壷が粉々になってしまいます。実は、このシーンこそ、徐峥が香港映画を語っているのかもしれません。

《港囧》  はゴッホの絵から始まります。ゴッホの絵なおかつ線香をあげるシーンを見れば、必ず思い出してしまう香港映画があるはずです。そう、林雪は刘镇伟(ジェフ・ラウ)の 《回魂夜(ゴーストバスター)》 1995 に出ています。80~90年代の香港映画における最大の傑作のひとつが 《回魂夜》 でしょう。

大学時代、徐来はゴッホについて語り、杨伊はアンディ・ウォーホルについて語り、徐来が20年ぶりに目にする杨伊はアンディ・ウォーホル仕掛けのゴッホの絵の中から、階段を降りてきます。


最後に、これまで触れていな 《港囧》 で流れる主な楽曲を、映画ラストのクレジットタイトルの順番で紹介しておきます。

陈百强MTV-偏偏喜欢你




張國榮 為你鍾情




古惑仔之爭鬥影片  陈小春- 乱世巨星





张国荣早期经典演出 "拒绝再玩"



万里长城永不倒 叶振棠(电视剧《大俠霍元甲》主題曲)

2015年12月22日火曜日

港囧(ロスト・イン香港) 2015|“はじめてのキス” あるいは “落下” とか “墜落” とか



今年(2015年)大陸で最もヒットした2D映画が9月25日に公開され、徐峥包贝尔が主演した

港囧 2015

です。2D映画という但し書きがつくのは、もちろんもっとヒットした3D映画 《捉妖记》(7月16日公開)があるからです。

《太囧》
2013年、大陸の国産映画のヒット記録を作ったのが春节に公開された周星驰の 《西游・降魔篇》 2013 です。しかし、同時期に公開されていた 《泰囧》 2012 がこの記録を破ります。そして、《港囧》 は 《泰囧》 に続く “囧” シリーズです。

“囧” シリーズの1つ目が 《人在囧途》 なのですが、これまでの“囧” シリーズについては、それぞれの記事を見てください。

人在囧途 2010|人は古き時代に生きている
人再囧途之泰囧 2012|異国情緒はタイにある!

徐峥は 《泰囧》 で初監督に挑み、この 《港囧》 も監督しています。また、徐峥の映画について語る場合、宁浩監督を忘れるわけにはいきません。宁浩のお笑い映画のほとんどに、徐峥は出演しているからです。宁浩の映画を見れば、徐峥が宁浩から多くを学んでいることがわかるでしょう。

宁浩(ニン・ハオ)の軌跡|主役は乗り物だ

《无人区》
徐峥と黄渤が主演した宁浩の 《无人区》 は2010年のお正月に公開予定だったのですが審査が通らなかったため、一時期お蔵入りしてしまいますが、なんだかんだ2013年秋に公開されました。

徐峥は “《无人区》 お蔵入り事件がなかったら、《泰囧》 を自ら監督することはなかった” と語っていました。

これは 《无人区》 で演技がなんたるかを自覚したため、自分の演技をスクリーンに一刻も早く登場させたかったということのようです。


《人在囧途》 と 《泰囧》 は、いわばロードムービーでした。さらには、昨年(2014年)公開され国産映画としては最もヒットした宁浩監督、徐峥と黄渤主演の 《心花路放》 はたっぷりロードムービーでした。

《心花路放》
そんなわけで 《港囧》 は、ロードムービーではありません。“走る映画” とでも言えばいいでしょうか。それよりも “落下する映画” とか “墜落する映画” と言ったほうがいいかもしれません。

金庸原作などの武侠ものでは、よく人が崖の底に落ちていきますが、そのお笑い版……というよりは、ブルース・ウィリスの 《ダイ・ハード》 シリーズのお笑い版と
言ったほうが正しいように思います。

徐峥と包贝尔が香港の街を歩いていると、鉄兜を被っている徐峥が道のくぼみに足をとられ、その足をとられたカットが何度か繰り返されます。これが合図です。徐峥と包贝尔は香港の街を走りに走り、落下し、墜落します。

この二人は、いったい何度落下し、何度墜落したことでしょうか。いったい、なんでそん
なことになってしまったのでしょうか。


この映画では、80~90年代の香港の音楽がたくさん使われています。どんな曲が使われているのかについては、こっちの記事を見てください。

港囧 2015|大陸の香港文化と日本の香港文化--あるいは、なんでゴッホから始まるのか


徐来(徐峥)は、妻といっしょにブラジャーの会社をやっています。会社はけっこう繁盛しているようで、一家そろって香港旅行にやってきます。《泰囧》 では范冰冰が范冰冰として登場したわけですが、この映画では赵薇が徐来の奥さん(蔡菠)として登場します。

しかし、徐来には香港に来た本当の理由があります。それは大学時代の初恋の相手、杨伊に会うことです。杨伊は、今では香港を拠点にして世界を飛び回るアーティストです。杨伊を演じているのは杜鹃という人です。

杜鹃はバレー(舞蹈)を目指していたのですが、背が高すぎる(179)ためバレーを断念して、主にモデルとして活躍しているようです。

2012年には、黄晓明邓超佟大为が揃った 《中国合伙人》 で、初めて映画に出演しています。

大学時代、徐来と杨伊の間に入って、徐来をだんなにしてしまったのが蔡菠です。ぼくは、赵薇のたぬき顔は好きじゃないし、演技も下手だと思います。赵薇が監督した 《致青春》 はあまりに悲惨でした。ただし、この映画で注目されたのが包贝尔でした。

この映画では、赵薇が “(だんなの徐峥に)あんた、こんなきれいな人(杜鹃)と……” と言います。

赵薇が “こんなセリフを!” と思って笑うべきなのでしょうが、ぼくはブスな奥さん(赵薇)の嫉妬として、素直に納得しました。たぶん、徐峥は確信犯だと思います。

今年(2015年)は、赵薇が久しぶりに主演したテレビドラマが放映されて、いっとき話題になりました。ちょっとは見てみたのですが、相変わらずのワンパターン演技です。

虎妈猫爸 2015

菠菜--徐来は蔡菠の発音をひっくり返して蔡菠を菠菜(ほうれんそう)と呼びます--の弟(拉拉)は、ドキュメンタリー映画で成功するのが夢で、その題材に徐来を選んでしまいます。

拉拉を演じているのは包贝尔です。

香港では、おかっぱ頭に縁太の大きなメガネをかけた(たぶん、おたく系な)少女たちをけっこう見かけます。《港囧》 の包贝尔のおかっぱとメガネがまさにそれで、それだけで映画が香港らしくなります。

《人在囧途》 と 《泰囧》 では王宝强が徐峥の相方を務めましたが、王宝强は超有名人のひとりになって忙しい日々を送っているのでしょう。あるいは、ロードムービーからの脱却のためにも、徐峥は新しい相方を選択したのかもしれません(この記事の一番下のほうに、徐峥がことの真相を語っているビデオを貼っておきました)。

包贝尔を知らない中国人は、ほとんどいないと思います。顔が三枚目なので、たいていは笑いを誘うタイプの脇役です。このブログでも、なんだかんだ包贝尔の出ている映画やドラマを見ています。

画壁 2011|スン・リー+ダン・チャオ
四大名捕2(ドラゴン・フォー2 秘密の特殊捜査官 / 陰謀) 2013
致青春(So Young~過ぎ去りし青春に捧ぐ~) 2013

宫2(宫锁珠帘) 2012|豚モツ唇なおねえさん
东方不败と令狐冲の恋だって!?|新笑傲江湖 2013
宫锁连城(宫3) 2014|于正、またパクったな!

ところが、徐峥が 《港囧》 で包贝尔を相方に選んだというだけで、包贝尔は一気にブレイクしてしまったのかもしれません。

今年(2015年)3月に 《奔跑吧兄弟 第二季》 から王宝强が抜けて、その代わりに参加したのが包贝尔です(2015年10月からの第三季には不参加)。また、今年の11月には主演している2本の映画が公開されました。

年少轻狂 2015
我的青春期 2015


拉拉は、徐来が女に会いに行こうとしていることに気づいてしまい、徐来を追跡します。徐来は拉拉を振り払おうとするのですが、拉拉はしつこく追いかけてきます。もちろん、拉拉はずっとカメラを回しています。

そんなこんなで二人は、映画の撮影現場に出くわします。監督は王晶です(ほんものの王晶です)。徐来が道のくぼみに足をとられたとき、彼は鉄兜を被っていますが、なんでそうなってしまったのかというと、この撮影現場でのドタバタが絡んでいます。

この鉄兜は最後まで映画に絡んでくるのですが、まだ落下と墜落は始まっていません。徐来と拉拉は、二人組の刑事にも絡まれます。なんで警察が絡まれてしまうのかはともかく、二人組の刑事というのは、いかにも香港らしいからでししょう。

後輩のほうの刑事を演じているのが、李璨琛という人です。この人は、日本で今でもレンタルできるのかもしれない 《齐天大圣孙悟空》 2002 で沙悟净を演じていました。李璨琛は、日本では永遠に放送されることはないであろう胡歌刘亦菲の 《仙剑奇侠传》 2005 にも出ていました。


徐来と拉拉が香港の街で、どのように走り、どのように落下し、どのように墜落するのかは、書かないでおきましょう。実際に見て笑ってください。話の発端がわかっていれば、中国語がわからなくても笑えるように思います。

あ。ちょっと書いてしまうと、香港に行くとこの分厚い鉄扉の向こうはどんな世界なんだろう? と、誰もが思うことと思います。二人の走りは、そんな鉄扉の向こう側の世界の一端を教えてくれます。


最後に “初めてのキス” について、書いておきます。映画の冒頭、徐来と杨伊がキスをしようとして、どうしてもキスができないいくつかのエピソードが語られます。

ぼくたち男はAVとかを見て、胸とか局部とか裸体とか、セックスシーンとかで興奮するわけですが、一般的に女の子とのセックスにたどり着くためには、はじめてのキスが
欠かせません。

そういう意味では、好きな女の子と最初にしたい肉体的接触は、まず手をつないで、それからキスということになります。ただし、徐来と菠菜のように、手をつなぐのは省略されることもあるでしょう。

徐铮拿到了避孕套
とにもかくにも女の子とのおつきあいにおいて、最初で最後の難関が “初めてのキス” です。

で、初めてのキスとか、初恋とかにこだわりたがるのが男です。そういうわけで、この映画はきわめて男の映画ということになります。

ぼくは中国の90后の女の子と、この映画の話をしたことがあります。彼女はこの映画がちっとも面白くなかったと言っていました。女性は、男がなんで初めてのキスとか、初恋とかにこだわるのか理解できないからです。

《港囧》首支正式预告片


清风徐来 - 王菲 - 电影《港囧》theme song


《金星时间》20150923期: 徐铮独家爆料港囧拍摄诡异传闻 揭秘《港囧》为何弃用王宝强【东方卫视官方高清版】


《港囧》发“飞机”番外篇