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2012年12月14日金曜日

铜雀台 2012 (曹操暗殺 三国志外伝) -- 刘亦菲 vs 曹操(周润发)



項羽と劉邦の物語を描く 《鸿门宴》 2011 では、項羽冯绍峰)の愛姫・虞姬(虞美人)を演じた刘亦菲ですが、三国時代を舞台にした

铜雀台》 2012

では、貂蝉を演じています--というのは嘘でもないのですが、刘亦菲は、曹操を殺すために、青梅竹马な穆顺(玉木宏)と共に铜雀台に送り込まれる灵雎という美女を演じています。

今年(2012年)、刘亦菲が出た映画は

四大名捕》 2012
《铜雀台》 2012

《倩女幽魂》 2011
の2本だと思います。《倩女幽魂(チャイニーズゴーストストーリー)》 2011 の大失敗で、中国の映画人は刘亦菲の使い方を再認識し、《神雕侠侣》 2006 に回帰したのでしょう。《四大名捕》で も  《铜雀台》でも、刘亦菲は暗くて重い美女を担当します。

映画は、曹操と結託した呉の孫権関羽を倒し、曹操は関羽の首と対面して、铜雀台に帰還するところから始まります。

このシーンでの曹操=周润发チョウ・ユンファ)は、とても暴力的です。息子の曹丕と献帝を冷たくあしらい、太医にプレゼントされた美女・灵雎を抱えて寝室に入ると、灵雎をどさっとベッドに放り出します。

孔子》  2010
わあ。帰ってきた周润发でしょうか。けっこういいです。《孔子孔子の教え)》 2010 では、孔子を演じ、第2回金扫帚奖(中国最低映画大賞)で作品賞に輝いた周润发です。李连杰ジェット・リー)と同様、最近の周润发はちょっと情けないように思いますが、そんなイメージを一新している感じです。

刘亦菲と監督・赵林山
この映画の監督は、赵林山という広告畑の人です。これが映画監督としてのデビュー作です。撮影が张艺谋監督御用達の赵小丁、美術が種田陽平--というわけで、暴力的なシーンがずいぶんとおしゃれな映像で展開されます。

仲良しの灵雎と穆顺は子供のとき誘拐され、同じく誘拐された多くの子供たちと共に、武術の訓練をさせられます。子供たちは大人になって、ついに曹操打倒計画に参加することになります。

映画は、刘亦菲演じる灵雎の語りで物語が展開していきます。灵雎は铜雀台に出発するシーンを回想しながら言います。

我们所有的努力都是为了杀一个人,杀一个全天下权利最大的人。
(私たちの訓練の目的はある人間を殺すためだった。殺すべき人間とは、この世で最も権力のある人間だ)

わあ。けっこう胸が高鳴ります。


ところで “铜雀台” とは、いったいなんなんでしょう。百度百科には、こんなふうに書かれています。

铜雀台位于河北临漳县境内,距县城18公里。这里古称邺,古邺城始建于春秋齐桓公时,三国时期,曹操击败袁绍后营建邺都,修建了铜雀、金虎、冰井三台,即史书中之“邺三台”。

(銅雀台は河北省の臨漳県に位置した、18キロ平米の都市である。ここは、かつて邺yè(鄴)と呼ばれ、春秋時代の齐桓公がここに邺城を造った。三国時代においては、袁绍を撃破した後、曹操はここに邺都という都市を造り、铜雀台、金虎台、冰井台という建設物を建てた。これは“邺三台”と呼ばれる。)

赤壁·铜雀台 
革命のたびに、なんでも壊したり燃やしてしまうのが中国の歴史であるため、もちろん“铜雀台”は残っていません。曹操政権御用達のテーマパークのようなものだったのかもしれません。

なお、《赤壁·铜雀台》 というセクシーな映画(映像? または写真集?)があるようです。銅雀台における、曹操と二桥(张馨予)の物語を描いているようですが、実体は明らかではありません。

东方美神 张馨予[赤壁铜雀台][春江花月夜] 古筝


三国志平話では、曹操と戦うことになかなか煮え切らない孫権の軍師・周瑜に、诸葛亮はこう言うそうです。

「曹操が铜雀台を立て、天下の美女を根こそぎ集めようとしていることをお考えになるべきです。いま曹操は呉を攻略して、喬公の二人の娘(上の娘の大喬は孫権の亡兄孫策の妻、下の小喬は周瑜の妻)を、わがものにしようとしております。」
--「三国志演義」井波律子著(岩波新書)

こんなセリフが 《赤壁》 であったかどうかは覚えていませんが、これに挑発されて、周瑜は曹操との戦いを決意して、赤壁の戦いが実現します。今年、ぼくたちを笑わせてくれた香港のテレビドラマ《回到三国》では、小喬(二桥)は公主病という扱いになっていました。


このブログでは三国時代ものの映画やドラマとして、こんなのを見ています。

关云长》 孙俪
超时空要爱》 1998
赤壁(レッドクリフ)》 2008-2009
越光宝盒》 2010
关云长(三国志英傑伝 関羽)》 2011
回到三国》 2012

《关云长》 2011 は、曹操(姜文)と关云长(関羽甄子丹)についての物語でしたが、せっかく孙俪が出ているのに、第3回金扫帚奖(中国最低映画大賞)作品賞を獲得しています。

三国時代の歴史状況については、

《回到三国》 2012 - 5分でわかる三国志人物伝
《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族

超时空要爱
などに書いたのですが、こんなにわか仕立ての知識では、この《铜雀台》 2012 には通用しませんでした。三国志に詳しくないぼくたちが、《铜雀台》 を楽しむための歴史背景をざっとまとめておきます。

まずは、貂蝉diāochánの物語です。漢末の混乱において、董卓が権力を握ります。董卓を補佐するのが、無茶苦茶強いけれど頭は強くない呂布です。董卓一派は、漢末混乱の大きな要因である宦官を皆殺しにします。

越光宝盒》  孙俪
しかし、あまりに横暴な董卓一派を排除しようという動きも活発です。曹操の任務が、董卓一派排除です。でも、直接に董卓を殺害する陰謀をはかるのは、董卓一派の官僚・王允です。王允は自分の歌技である貂蝉に、董卓と呂布の両方を誘惑させて、まんまと呂布に董卓を殺害させます。

回到三国 
漢末の混乱において活躍する董卓、呂布、曹操、刘备などは、黄巾の乱制圧をお題目としています。つまり、誰もが、漢政権を革命して新政権を樹立するのが目的ではなく、漢政権を継承するのを目的にするわけです。このことは、以後400年にわたる分裂時代がはじまってしまう大きな要因のようにも思えます。

伏皇后と伏完
呂布が董卓を殺したあと、曹操は呂布一派や反董卓の主力勢力である袁一族を撃破して、権力を手にします。皇帝は、董卓がかつぎだした献帝のままとします。

どんな映画やドラマでも、情けなく描かれるのが献帝です。この人の奥さんが官僚・伏完の娘である伏皇后です。献帝一派は実権を握る曹操に不満なわけで、曹操に対するクーデターも企てます。


この映画の前半では、刘亦菲も周润发もいきいきしていて、展開の切れもよく、撮影・赵小丁+美術・種田陽平による華麗なる映像もすてきです。

ただし、後半になると華麗なる映像は華麗なのですが、ちょっと飽きてきます。これは、曹操の暴力性がちょっと薄れて来るからかもしれません。

なお、この映画のシナリオは、こんなふうにつくられたのだと監督の赵林山は語っています。

曹操のお墓(曹操墓) ? ? ?
“编剧方面我请来了目前国内一线编剧团队,第一稿是《疯狂的石头》编剧周智勇写的,第二稿是张艺谋的御用编剧王斌完成的,最后一稿目前在修改当中,也是一位业内的大腕级编剧来完成。三位编剧对这个构思特别感兴趣,在取材方面绞尽脑汁。《铜雀台》是纯正意义的古装片,不神话不穿越,主要描写老年的曹操在权谋、军事、爱情以及他的诗方面的故事。“

また、赵林山がこの映画を構想するきっかけになったのは、曹操のお墓(曹操墓)にまつわるニュースだったそうです。

彼は、この物語が“不神话不穿越(おとぎ話しでもないし、タイムトリップものでもない)とも言っています。

劉亦菲 - 等雪來(电影《铜雀台》主题曲)MV


《铜雀台》终极预告片

2012年7月31日火曜日

《赤壁(レッドクリフ)》 2008-2009 -略懂略懂




赤壁 上》は、胡军扮する子龙が阿斗をかかえて、まるで《天龙八部》の萧峰みたいな勢いで敵を斬りまくるあたりから始まります。

わあ、久々に超大作映画というのを見ました。このブログでも三国志ものはいくつか見ています。

超时空要爱》 1998
越光宝盒》 2010
关云长(三国志英傑伝 関羽)》 2011
回到三国》 2012

とりわけ、《回到三国》 は、ぼくのお気に入りです。誰にも省みられることはないのかもしれませんが……。

《关云长》は孙俪が出ているので見ただけでどうでもいいのですが、問題は《超时空要爱》と《越光宝盒》です。

《超时空要爱》は、ニヒルな刑事(梁朝伟)と、下っ端ヤクザのカップル、カップルの仲間のヤクザ、自殺した女の子、三国時代から穿越してきた关羽(関羽)の魂に乗っ取られた京劇役者とそのかつての相方、なぜか事件に巻き込まれてしまったおっさんの8人が、三国時代に穿越(タイムトリップ)してしまう物語でした。

《越光宝盒》は、牛魔大王の騒ぎに巻き込まれた孙俪と郑中基が三国時代に穿越してしまう物語でした。あら? ふと気づくと、いったい二人はいつの時代から穿越したのでしょうか? 牛魔大王が月光宝盒を持っていたわけで、もとの時代は西遊記の舞台である初唐だったのかもしれません。

ぼくがお気に入りの、《回到三国》は、诸葛亮をアイドルとあおぐ香港の三国志ゲームおたくが、三国時代に穿越(タイムスリップ)してしまう物語です。

《越光宝盒》と《回到三国》をより楽しむためには、《赤壁》を見ておいたほうがよかろう--というようにも思います。

《越光宝盒》の诸葛亮はしきりに“略懂略懂”を繰り返すので、《赤壁》の诸葛亮が“略懂”というセリフを言うところも見たかったのでした。もちろん、《回到三国》の诸葛亮も“略懂”を口にします。

ぼくはいつも、刘备-关羽と刘邦-项羽が、どっちがどっちだったか、誰が誰だったかわからなくなってしまいます。なんとなく名前が似ているからです。

西晋の陈寿が書いた《三国志》をベースに、《三国志》にまつわるあれこれな物語があれこれな形で書かれたり語られたりするわけですが、その集大成がフィクション《三国演義》ということになるようです。

《三国志》を語るお話のひとつに、《新全相三国志平話》というのがあります(14世紀、元の時代)。全相というのは照相の相(4声)であって、全部のページに絵が入っているよという意味だそうです。

この物語の冒頭では、司馬仲相という書生が天界の天帝に呼び出され、ある事件の裁判官になります。被告は漢の始祖・高祖(刘邦)とその妻・吕后、原告は漢帝国成立後次々に殺された功臣である韓信、彭越、英布の3人、証人は蒯通という論客。

司馬仲相がどういう判定をしたのかというと、韓信を曹操、彭越を刘备、英布を孙权、蒯通を诸葛亮に転生させ、刘邦と吕后は献帝とその妻伏后に転生させるというものだったそうです。

--参考文献:「三国志演義」(井波律子)岩波新書

2012年7月17日火曜日

鸿门宴 2011 -- 虞美人・刘亦菲(+天龍八部)



ぼくは、孙俪スン・リー)が出ているというだけで、《关云长》という映画を見なければなりませんでした。そういうのと同じ理由で見なければならなかったのが

鸿门宴(传奇)》 2011

です。だって、刘亦菲が出ているからです。

ぼくはいつも、刘备劉備)-关羽関羽)と刘邦劉邦)-项羽項羽)が、どっちがどっちだったか、誰が誰だったかわからなくなってしまいます。だって、なんとなく名前が似ているからです。

《关云长》は刘备-关羽などにまつわる物語で、つまりはいわゆる三国志関連のお話だったのですが、《鸿门宴》は、刘邦-项羽についてのお話のほうで、つまりは、戦国時代の混乱を制した秦がはやばやと崩壊した後、漢帝国ができる過程を描く物語です。

中国の歴史には、大混乱の時代があって、その後に大帝国の時代がくるという法則があります。しかも、大混乱の時代を整理する帝国はあっさりと滅びてしまい(秦・隋・民国)、その後にさらなる大帝国ができあがり、その大帝国は300年生きながらえます。

刘亦菲は、もちろん虞姬虞美人)を担当しています。

最近(2012年7月)、刘亦菲の出演する《四大名捕》という映画が公開されたはずですが、期待はしないで、そのうち見てみようと思います。

ところで、刘亦菲がどんなお家に住んでいるかというと、上の写真のようなお家です。
なんと、5000平米の豪宅だそうです。

秦の始皇帝は、儒教を禁止して、いわゆる焚書坑儒を実行します。ぼくはつくづく思うのですが、秦の儒教禁止とローマ帝国のキリスト教禁止が成功していれば、どれほど現在が幸せであることでしょうか。

この映画の鸿门宴鴻門の会)では、金庸 《天龙八部》 の囲碁のシーンが盗用されています。天龙八部》では、足の指が何本あるかということが問題だったわけですが、こちらでは手の指の本数が問題となります。

もちろん、刘亦菲はテレビドラマ《天龙八部》 2003 に出ています。天龙八部》 は、刘亦菲のほとんどデビュー作のように思います。 

この映画について語っておかなければならないのは、项羽を演じた冯绍峰でしょう。歴史的には、無茶苦茶強くて、無茶苦茶残虐で、無茶苦茶頭の弱い项羽を、よく演じていたと思います。

《鸿门宴》发终极预告片

2012年6月25日月曜日

关云长(三国志英傑伝) - ガマガエルな甄子丹




第三届金扫帚奖(第3回中国ごみ映画大賞--中国ラジー賞)で作品賞に輝いたのが、この《关云长》と《战国》、《杨门女将之军令如山》です。

ぼくたちは甄子丹ドニー・イェン)のガマガエル顔を見るほどひまではありません。たぶん、死ぬほど退屈なことでしょう。でも、孙俪スン・リー)が出ているので見ちゃいました。

关云长(関雲長)というのは关羽(関羽)のことで、おなじみ三国志のヒーローのひとりです。ぼくはいつも、刘备劉備)-关羽関羽)と刘邦劉邦)-项羽項羽)が、どっちがどっちだったか、誰が誰だったかわからなくなってしまいます。だって、なんとなく名前が似ているからです。

もちろん、关云长を演じるのが甄子丹です。关云长は一時、曹操曹操)の捕虜になるのですが、この映画はそのときのエピソードを描いています。曹操を演じるのが姜文チアン・ウェン)です。

曹操は关云长を自陣に取り込もうとあれこれ画策するのですが、关云长は承知しません。あきらめた曹操は、关云长に刘备の元へ帰ることを許します。关云长が帰るためには5つの関所を通過しなければならないのですが、曹操はすべての関所の通過を保証します。

ところが、関所を通ろうとするたびに、关云长は襲撃されてしまいます。これが“过五关斩六将(5つの関所を通り、6人の将軍を斬る)”というエピソードなんだそうです。

じゃあ、孙俪はどうしたのよ? --と言うと、孙俪が演じるのは绮兰という、刘备のお妾さんになる予定の少女です。彼女も关云长といっしょに捕虜になっていて、关云长は绮兰を連れて、5つの関所を通過しようとするたびに、绮兰を守りつつ、敵と戦うことになるわけです。

しかし、あらま。なんだか、孙俪がいたっていなくたって、関係ないじゃありませんか。