2014年3月25日火曜日

大话天仙 2014 | 孙俪の狂気(躁と鬱)



大话天仙》 は、今年(2014年)2月2日に公開されました。どこででも評判は最悪です。しかし、ぼくはこの映画が見られる日を、ずっと楽しみにしていました。見たよー!

だって今のところ、孙俪の最後から2番目の作品だからです。孙俪の最後のドラマが、もちろん 《甄嬛传》 です。ほんとは、邓超と結婚、娘の出産後、孙俪は 《辣妈正传》 2013 というテレビドラマで主演しているのですが、これは失敗作なので問題外です。


刘镇伟と孙俪は、

机器侠(カンフーサイボーグ)》 2009
越光宝盒》 2010

を作ります。《机器侠》 では、刘镇伟は初めて大陸女優を使います。ほんとうは初めてではないのですが、実質的に初めてと言っていいと思います。

そんなわけなのでしょう。刘镇伟は、孙俪をあまりにもおそるおそるというか、そっとそっと使いすぎて、映画としては失敗していました。とはいえ、孙俪の出演するSF映画ということで、そこそこ客が入ったのでしょう。

引き続き、このコンビは 《越光宝盒》 を作ります。お金もわりとふんだんに使えたこの作品は、おバカさが受けてけっこうヒットします。

おかげで、二人はさらにコンビを組んで3つ目の作品を撮ります。それが 《天仙奇缘》 という映画です。しかし、この映画はいつまでたっても公開される気配がない謎の映画でした。

刘镇伟と孙俪の二人は 《天仙奇缘》 という映画をほったらかしにしたまま、孙俪は 《甄嬛传》 で超ヒットを飛ばし、刘镇伟は
 《东成西就 2011》 でとんでもない大コケ
をくらいます。



《天仙奇缘》 にどんな事情があったのか--そんな事情を、ぼくがはじめて知ったのは、今年(2014年)のはじめ、刘镇伟自身の新浪微博でした。

「スポンサーの資金不足で頓挫してしまった映画だ。しかし、どっかの誰かが、なんと別の役者を使って新たなシーンを撮影して、近々公開されるという。しかし、その映画は自分とはなんの関係もない。これは以前にも言ったことだ」--といったようなことが書いてあったと思います。

そんな事情がありながら 《大话天仙(天仙奇缘)》 という映画は、刘镇伟が監督した映画として堂々と公開され、誰もがこの映画にブーイングすることになります。

そんなこんなで、この映画に文句をつけるのはとても簡単なわけです。豆瓣では2.8という低評価で、現在(2014年3月末)15763人が投票して74.3%の人が最低の1つ星です。

とはいえ、2.5%の人は最高の5つ星(10点満点)を与えています。2.5%の中の一人が、もちろんぼくです。もちろん、この映画の出来がいいとほめたいわけではありません。孙俪が、むちゃくちゃきれいに映っているからという意味での満点です。


監督本人に、この映画を刘镇伟の映画として語ってはならないと言われてしまったら、それに従わざるを得ません。

とはいえ、本体は失われてしまったギリシアの哲学書の断片のように、この映画を刘镇伟映画の断片として語っておくことは、それはそれで大切なことのようにも思います。

《机器侠》 で孙俪の使い方に失敗した刘镇伟は、《越光宝盒》 では、これまで誰も表現したことのなかった孙俪を描くことに成功します。単純に言ってしまえば、《越光宝盒》 の孙俪はただのきちがい女です。

《机器侠》 の孙俪は、これまでの孙俪そのままのイメージというかそれ以下であったわけですが、《机器侠》 を撮影する過程で、刘镇伟は孙俪の躁な一面を発見したのでしょう。

刘镇伟は、香港の役者たちをかなり乱暴に扱ってきたわけですが、《越光宝盒》 の孙俪は、刘镇伟にもっとも過酷に扱われた女優になりました。これによって、《越光宝盒》 は 《东成西就》 1993 にも匹敵する、おバカなお笑いが大爆発する傑作になります。

では、《越光宝盒》 を撮影する過程で、刘镇伟は孙俪の何を発見したのでしょう? それは、躁に対する鬱です。《越光宝盒》 で、 あれだけおバカを演じていた孙俪は、撮影の合間に欝な顔だって、たくさんしていたと思います。

たぶん、刘镇伟はその表情がとってもきれいであることを発見したのでしょう。それが、《大话天仙》 の孙俪です。だから、この映画では孙俪の笑顔は登場しません。しかし、鬱な孙俪の極端にきれいな顔が映っています。

インタビューとかクランクインや公開にあたってのイベントなどにおける孙俪は、普通なおねえさんです。特に美女というわけでもありません。

ところが、孙俪はドラマや映画に出るやいなや、すごい美女に一変します。そんな事情もあって、孙俪はみんなから愛されているのでしょう。

そんなこんなで孙俪は、2003年 《玉观音》 でデビュー以来、孙俪神話を築いてきました。清純とか清楚とか、そういったイメージです。それはそれで彼女にふさわしいのですが、刘镇伟は 《越光宝盒》 と 《大话天仙》 で、誰も描くことのできなかった孙俪を提示しました。

だからこそ孙俪は 《甄嬛传》 で甄嬛を演じきれたのだ--などと軽々しく言ってしまうのはとんでもない錯誤です。《甄嬛传》 の孙俪は、あくまでも従来イメージの延長であって、孙俪がだんだんと鬼になっていく物語です。狂気という方向性には、一歩も踏み込んではいません。

ぼくたちは、刘镇伟だけが表現できた、神聖な孙俪神話を破壊して、突破して、さらにきれいな躁と鬱という両極端な孙俪を創造した 《越光宝盒》 と 《大话天仙》 を見る喜びを味わえたわけです。


刘镇伟は、ときにろくでもない駄作を作ります。その代表がたとえば 《情癫大圣》 です。蔡卓妍のブスが治ったとしても、ブスはブスのままです。刘镇伟という人は、こういったろくでもないファンタジーを描いてしまうと、ついつい失敗します。

《大话天仙》 とは、ブスな蔡卓妍を、冷たく欝で極端にきれいな孙俪に取り替えた 《情癫大圣》 のリメークだったのかもしれません。ならば、もしこの映画がきちんと完成されたなら、ろくでもない駄作だった可能性も否めません。

完成しなかったものについて、とやかく語るのはやめましょう。《情癫大圣》 のろくでもなさと、完成しなかった 《天仙奇缘》 を引き継いだのが 《东成西就 2011 》 という(一般的な評価は別にして)大傑作です。

そんなこんなで、今年(2014年)の3月4日、刘镇伟の新作、《完美假妻168》 が公開されました。このところ大上段に構えすぎていた刘镇伟ですが、久しぶりに普通の日常をドタバタに描いた映画かもしれません。かつての刘镇伟映画のように、普通の日常がドタバタになっているといいなー。


孙俪以外のメンバーについても、ちょっと触れておきましょう。

《越光宝盒》 に続き、郑中基も出ています。今回はモテモテのお金持ち(施文胜)として、孙俪たちをいじめる側に回ります。郑中基とぐるになっている赵夫人を演じるのが相声の超有名人、郭德纲です。

郑伊健(毛松)と林雪(毛大龙)が義兄弟で、赵夫人の意地悪で孙俪(许金凌)は醜い毛大龙に嫁ぐことになります。林雪という人が出ている映画は、このブログでは 《大魔术师》、《超时空救兵》、《八星抱喜》 とかを見ています。

方力申谭耀文の二人がB16星からやってきた殺し屋を演じているのですが、メイクがケバすぎて、いったい誰なのやらさっぱりわかりません。

方力申は刘镇伟組の一人ですが、谭耀文は刘镇伟映画に出たことあるのかなあと思ったら 《情癫大圣》 と 《越光宝盒》 に出ていました。

谭耀文といえば 《雪山飞狐》 とか 《天天有喜》 などでは、粘着質な悪人というイメージですが、この映画では方力申とコンビを組む宇宙人として、けっこう笑わせてくれます。でも、どっちがどっちなんだか、よくわかりません。

黄奕は、学校の先生を演じています。黄奕はこの映画の後も  《东成西就 2011》 で刘镇伟と付き合うことになります。

《东成西就 2011》 でカットされてしまった彼女のダンスは、とっても素敵なんだけどなあ……どうしてカットされてしまったんだろう? しかし、この学校の先生は……。

あとちょこっと出ているのが、この映画の後 《甄嬛传》 で孙俪と壮絶な闘いを繰り広げることになる蔡少芬(皇后)です。よーく見ていないと見つけられないのが胡歌です。蔡少芬はビシッとワンシーンを決めていますが、胡歌はなんなんだろう? 本来は、なんかの役割があったのかもしれません……。

胡歌って、このまま刘诗诗と心中していくつもりなのかな?

あと、忘れてはならないのが李健仁です。この人は刘镇伟組というよりは、周星驰映画において有名なわけです。この人が女装して鼻くそをほじくる姿はこの映画でも見られるので、そのシーンだけは思い切り笑ってかまわないでしょう。

鼻くそをほじくるというのは、中国語で “抠鼻” とか “抠鼻子” とか言います。QQに参加している人なら、おなじみな  “表情” かもしれません。これは気軽に話せるお友達となら、けっこう使える  “表情” です。

しかし、QQの抠鼻表情がもとで、暴力沙汰の事件が起こってしまったこともあるので、抠鼻表情の使用にはくれぐれも注意してください。

周星驰の脇役といえば吴孟达が有名なわけですが、梁朝伟と周星驰が高校の同級生で周星驰が梁朝伟を役者の道に誘ったというのも有名な話だと思います。で、周星驰のもうひとりの同級生が李健仁だったようです。


最後に、邵音音を紹介しておきましょう。刘镇伟は、これまでも強烈なおばちゃまたちを大活躍させてきました。今回のおばちゃまが邵音音おばちゃまです。わりと孙俪と郑伊健の仲を応援してくれるのですが、あまり役に立たなかったようにも思います。

1950年生まれの邵音音はセクシー女優としてデビューし、70年代のはじめから80年代のはじめにかけて売れっ子として活躍します。かつて“中国娃娃とまで言われた彼女だそうですが、あの顔のいったいどこにその面影がある
というのでしょう。

実は整形手術に失敗して、あのアゴができあがってしまったそうです。今ではそれを売り物にして、怖いおばちゃまをやっています。

このブログでは、彼女の出ている映画として 《重口味》 と 《春娇与志明》 を見ています。 《春娇与志明》 では春娇のママが邵音音だったわけですが、そういうわけだっ
たのですね。

邵音音がこの映画に出るということで、“老牌性感女神邵音音加盟 《大话天仙》 影后做绿叶”“邵音音加盟 《大话天仙》 群星力撑成标配”といったニュースネタにもなっています。

“做绿叶--葉っぱになる”って、どういう意味なんでしょ?

“绿叶衬红花”という言葉があるそうです。衬衫の衬には“他のものに添えてそれを引き立たせる”という意味があって、つまり葉っぱが赤い花を引き立てるということになります。単純な単語で言うと“衬托”です。

日本では、こういう場合“花を添える”というわけですが、中国では“葉っぱをそえる”わけです。


ほら。だんだん、この映画を見たくなってきたでしょ。

大话天仙 (Just Another Margin) 2014 预告片


大话天仙 (Just Another Margin) 2014 预告片 2

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